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 厚生年金や国民年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2016年10〜12月期における運用結果が10兆4973億円と過去最高の黒字になったことが3月に発表された。(参照:GPIF)

 年金積立金の管理及び運用は、“年金積立金が被保険者から徴収された保険料の一部であり、かつ、将来の年金給付の貴重な財源となるものであることに特に留意し、専ら被保険者の利益のために長期的な観点から安全かつ効率的に行うことにより、将来にわたって年金事業の運営の安定に資することを目的として行う。”ことが前提であり、アクティブな投資先が入ることで市場動向に左右され、2014年度に含み損を抱えるようになるといったリスクを抱えることについては議論のわかれるところだ。
 
 また、運用を一任した専門機関が判断して決めているものの、投資先にクラスター爆弾製造の米企業が入るなどの倫理的な問題なども浮上している。(参照:朝日新聞)

 しかし、それらの問題をひとまず横に置いた上で、純粋に運用実績に目を向けてみよう。すると、2001年度から2016年度第3四半期までの16年程度の期間において、GPIFの累積収益額は53兆617億円であることがわかる。収益率は、2.93%(年率)と比較的良好なパフォーマンスを維持してきたといえる。

 国家が国民から集めた年金積立金の運用先として適当かどうかはさておき、このパフォーマンスを見る限り、GPIFの基本ポートフォリオは、個人がNISAなどでの投資対象を考察する際に参考になるのではないだろうか?

◆長期投資では株式投資は低リスク高リターン!?

 ペンシルベニア大学ウォートン・スクール教授で、CNN、CNBCなどでコメンテーター、ウォール・ストリート・ジャーナル、バロンズ、フィナンシャル・タイムズ(FT)のコラムニストとして知られたジェレミー・シーゲル氏は、「株式投資の未来〜永続する会社が本当の利益をもたらす」、「株式投資 長期投資で成功するための完全ガイド」、「株式投資 第4版」などの書籍を著している。

 ジェレミー・シーゲル氏は、自身の著書で、株式、長期債、短期債などのアセットの中で、インフレヘッジが効くのは株式のみであり、長期的に見ると株式が最もリスクが小さくリターンが大きいと主張している。20〜30年の長期で見るならば、株式の投資タイミングは大した問題ではないと言っている。相場のピーク時に株式を購入したとしても、債券よりも高いリターンが得られることを示している。

 GPIFの基本ポートフォリオは、国内債券35%:国内株式25%:外国債券15%:外国株式25%であるので、債券50%:株式50%、国内60%:外国40%となり、ジェレミー・シーゲル氏の主張よりもやや保守的な基本ポートフォリオになっている印象を受けるが、それでも、GPIFは、外国を含む株式の構成比率を上げており、高い運用リターンを狙ったものになっていると考えられる。

◆GPIFの基本ポートフォリオ

 GPIFの基本ポートフォリオを決定するにあたっての考察については、”基本ポートフォリオの考え方”(http://www.gpif.go.jp/operation/foundation/portfolio.html)に詳しく記されている。

 厚生労働大臣から任命された金融・経済の専門家からなる運用委員会で審議を行い、検証を行った結果、基本ポートフォリオが決定される。国内株式、外国債券などの各アセットクラスの期待リターン、リスク、アセットクラス間の相関係数などから効率的な資産構成割合の組み合わせが決定されているのだ。

 そうして決められたGPIFの基本ポートフォリオは前述したように、 資産構成割合が、国内債券35%:国内株式25%:外国債券15%:外国株式25%となっている。乖離許容幅を加味すると、国内債券35%±10%:国内株式25%±9%:外国債券15%±4%:外国株式25%±8%である。

“運用体制の整備に伴い管理・運用されるオルタナティブ資産(インフラス トラクチャー、プライベートエクイティ、不動産その他運用委員会の議を経て決定するもの)は、リスク・リターン特性に応じて国内債券、国内株式、外国債券及び外国株式に区分し、資産全体の5%を上限とする。“としている。

 GPIFは、“長期的な運用においては、短期的な市場の動向により資産構成割合を変更するよりも、基本となる資産構成割合を決めて、これを維持する方が効率的で良い結果をもたらすことが知られています。”としていることにも注目したい。一般の投資家にとっても、自身の基本ポートフォリオを決定し、資産構成割合がそこからズレた場合にリバランスすることこそが資産運用であるというやり方もありかもしれない。

<文/丹羽唯一朗 photo Pictures of Money via flickr(CC BY 2.0)>