兵士としての体験を無駄にせず、違った形で社会に貢献しようとする行動力に感動したと語るモーリー氏

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『週刊プレイボーイ』本誌で「モーリー・ロバートソンの挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンがアメリカ・ワシントンD.C滞在中に出逢った、元米陸軍女性兵士の社会貢献について語る。

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アメリカの首都・ワシントンD.C.エリアに6店舗を構える、「Busboys and Poets(バスボーイズ・アンド・ポエッツ)」という人気カフェがあります。イラク系アメリカ人が2005年に始めたこの店は、書店とラウンジとレストランがミックスしたようなつくりで、客同士が政治や社会問題、アートについて語り合う場にもなっています(昨年3月には在任中のバラク・オバマ前大統領が訪れ、元受刑者らと食事や会話を楽しんだことが話題となりました)。

先日、所用で1週間ほどワシントンに滞在した際、僕はこの店が気に入って2度遊びに行きました。いずれも隣に座った人と深く話し込み、いろいろと刺激を受けたのですが、特に印象的だったのはあるアジア系女性との会話でした。

彼女は幼い頃に両親とともに台湾からアメリカに移住し、サンフランシスコで育ち、公立高校を卒業。当時はジョージ・W・ブッシュ政権がイラク戦争で増派政策を取っていた時期で、彼女も何もわからないまま米陸軍に入隊し、20歳でバグダッド郊外の前線に配置され、ブルカを着たイラク人女性の“身体検査”を任せられることになります。チェックポイントは、体を覆う黒い布の下に自爆テロ用の爆弾を隠し持っていないかどうか―。

男性兵士がイラク人女性をボディチェックすることは、イスラム教の厳しい戒律に反するとして住民感情を逆なでしてしまうため、彼女のような女性兵士がミッションを任されたのです。「毎日、誰かの手足が吹っ飛んでいた」と、極限の恐怖のなかで過ごした3年間を彼女はふり返ります。

帰国した彼女は、「自分のいた場所はなんだったのか」を知るため、大学に入って中東の政治や歴史を学びつつ、一民間人としてイスラム諸国に赴き、ひとつの結論に達します。中東問題を本当の意味で解決するための方法は、イスラム過激派を軍事的に壊滅することではなく、「水」と「女性の教育」というテーマに取り組むことである、と

彼女は今、ヨルダンのシリア国境に近い集落に頻繁に足を運び、水不足に悩む地域で活動をしています。この地域にはシリア内戦の影響で巨大な難民キャンプが形成され、もともと貴重だった水の不足が深刻化。支援のため持ち込まれた水も闇市場に横流しされるなどの問題もあり、ヨルダン人の間ではシリア難民への感情が悪化しているといいます。そんな“難民排斥”の流れを止めるため、彼女は現地の人々自身が水を自給自足できるような仕組みづくりに挑戦しているそうです。

兵士として現場で体験したことを無駄にせず、まったく違った形で社会に貢献しようとする行動力。そこに僕はただ感動しました。

彼女はトランプ大統領のことが嫌いだと言っていましたが、考えてみると、これが社会のリアルなんです。論客たちは大ざっぱに「女性はトランプが嫌い、軍関係者はトランプが好き」などと分類しますが、彼女はその両方の“属性”を持っている。世の中はゼロかイチかではなく、グラデーションになっている

SNSやテレビなどの情報源に頼るばかりでは、そのことは見えてきません。僕としても、あらためて人と直接、深く会話をすることの意義深さに気づかされました。

●Morley Robertson(モーリー・ロバートソン)

1963年生まれ、米ニューヨーク出身。国際ジャーナリスト、ミュージシャン、ラジオDJなど多方面で活躍。フジテレビ系報道番組『ユアタイム〜あなたの時間〜』(月〜金曜深夜)にニュースコンシェルジュとしてレギュラー出演中!! ほかにレギュラーは『NEWSザップ!』(BSスカパー!)、『モーリー・ロバートソン チャンネル』(ニコ生)、『MorleyRobertson Show』(block.fm)など