知っている人はケアしてる。 美容も健康も左右する「腸内フローラ」

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執筆:山本 ともよ(管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー)
医療監修:株式会社とらうべ


近年、腸に関する研究が進む中、「第二の脳」と言われるほど、腸が全身に影響を与える器官であることがわかってきました。


健康や美容のためには、腸のケアは欠かすことができません。

今回はそんな腸の状態をあらわす「腸内フローラ」についてご説明したいと思います。

腸内フローラとは

腸の中には無数の腸内細菌が存在していて、その数は100兆以上とも言われています。
 

そして、その総重量は1〜1.5kgにもなります。

これらが腸壁にびっしりと広がっている様子が花畑=フローラに似ていることから、その腸内の様子を「腸内フローラ」と呼んでいるのです。

腸内細菌は種類も多種多様ですが、主に次の3つのグループに分けられます。

その1.ビフィズス菌や乳酸菌などの「善玉菌」

食物繊維や糖質をエサに増殖し、消化を助けたり、健康や美容の維持に不可欠な栄養素(ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンKなどのビタミン類や短鎖脂肪酸など)や脳内神経ホルモンのひとつであるセロトニンの原料を作り出したり、免疫力を維持するのに働きます。

その2.大腸菌などの「悪玉菌」

健康に悪影響を及ぼす有害物質や悪臭のもととなる腐敗物質を産生します。

その3.バクテロイデスや大腸菌(日和見型)などの「日和見菌」

日和見菌には特定の働きがありません。

善玉菌優位のときには善玉菌の働き、悪玉菌優位のときには悪玉菌の働きをする、というように、腸内環境の状態によって機能が変わります。


理想的な腸内細菌の割合は、「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」。

このバランスが変わり悪玉菌が増えると、状態が悪い腸内フローラとなり、身体に悪影響を及ぼします。

全身に影響する腸内フローラ

善玉菌が優位な理想の状態であれば健康的なカラダやココロが維持されます。

具体的にどのような働きをするのか、紹介します。

便秘を予防する

善玉菌は大腸で「短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)」という物質を作り出します。

短鎖脂肪酸は、粘膜を刺激し、蠕動(ぜんどう)運動を活発にして排便を促します。

また、便秘や下痢を防ぐことで腸内環境が整い、肌の状態や代謝機能を高めることにもつながります。

免疫力を高める


ヒトの免疫細胞の約70%は腸内に集中しています。善玉菌は免疫細胞を活性化し、免疫力を働かせます。

免疫力が低下すると、感染症にかかりやすくなる、アレルギーを発症しやすくなるなどの影響があります。


最近では、ガンの進行にも関連があるのではないかという見方もあり、研究が進められています。

ココロの健康を維持する

幸せを感じたり、意欲的でいられるのは脳内物質のセロトニンやドーパミンが大きく関わっています。

何らかの影響でこれらの分泌が低下すると、うつ病などの精神疾患につながることもあります。

セロトニンは脳内で2%、腸内で90%作られています。腸でできたセロトニンが脳内に入ることはありませんが、腸でできるセロトニンが脳でできるセロトニンの量をコントロールしていることがわかっています。

また、セロトニンを分泌させるには善玉菌が作り出すビタミンB6が必須です。

体臭の予防

悪玉菌が多くなると、腐敗物質により口臭やおなら、便などの臭いが強くなります。

自分の腸内フローラをチェックしてみよう

腸内フローラを自分で簡単にチェックできるものは「便」です。

なぜなら、腸内細菌は便を作り、排出を促すのに関わっているからです。

また、便の約80%は水分ですが、残りの固形分の約3割は腸内細菌の死骸です。多くの腸内細菌は、便として体外に排出されているのです。

便秘や下痢をしている、もしくは便は出るがにおいが強い、色が黒っぽい、コロコロ状態、おならが臭いなどの変化があれば、悪玉菌が増え、腸内フローラのバランスが崩れているサインといえます。

腸内フローラを良い状態にするポイントは?

腸内フローラを良い状態にするということは、善玉菌を増やし悪玉菌を増やさないようにするということです。

そのためには、次のことに気をつけましょう。

ストレスを溜めない

腸の働きは、自律神経がコントロールをしています。強いストレスを受けると自律神経が乱れ、腸の蠕動運動が鈍くなるなど、悪玉菌が増殖しやすい環境になります。

睡眠時間を十分にとる、ゆっくりお風呂に入る、好きな音楽を聴くなど、1日の中でリラックスできる時間をつくりましょう。

善玉菌そのものを積極的に摂る

発酵食品(ヨーグルト、チーズ、納豆、ぬか漬・粕漬・麴漬、キムチ、味噌など)には善玉菌が多く含まれます。

腸内で善玉菌を増やす働きをする食品を摂る

善玉菌のエサとなる食物繊維、オリゴ糖を含む食品(ゴボウ、玉ねぎ、キャベツ、バナナ、はちみつ、海藻類など)を摂ると、善玉菌が増殖し、腸内環境を整えます。

悪玉菌を増やす食品を控える

悪玉菌はたんぱく質や脂質が大好物。肉料理や揚げ物などに偏らず、豆腐や魚などのたんぱく質が多い食品を組み合わせ、主食・主菜・副菜をそろえたバランスの良い食事にしましょう。

朝ごはんを食べる

朝ごはんを食べないと腸の蠕動運動が活性化されないばかりか、自律神経のバランスを乱す原因にもなります。


腸内フローラは日々変化しています。


毎日自分の状態をチェックしながら、良い状態を維持する生活を取り入れて継続することが、ココロとカラダの健康につながります。


<執筆者プロフィール>
山本 ともよ(やまもと・ともよ)
管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー。
株式会社 とらうべ 社員。企業で働く人の食と健康指導。糖尿病など疾病をもった人の食生活指導など活動中

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供