今年7月に行なわれる世界水泳選手権(ハンガリー・ブダペスト)の選考大会でもあった日本選手権で、16歳の池江璃花子(ルネサンス亀戸)が女子では史上初の5冠を獲得した。ほかにも女子では、大学4年の大橋悠依(東洋大)が400m個人メドレーで、昨年のリオデジャネイロ五輪3位に相当する4分31秒42の日本記録を出し、200m個人メドレーでも世界選手権の派遣標準記録を突破する2分09秒96で2冠を達成した。


急成長してきた渡辺一平と握手を交わす、3連覇を達成した小関也朱篤(右) また、平泳ぎでも東洋大を卒業したばかりの青木玲緒樹(れおな/ミキハウス)が100mと200mで派遣標準を突破して優勝と、昨年から力を伸ばし始めていた遅咲きの新星が結果を出して世界選手権へと駒を進めるうれしい成果が出た。 

 だが最終日で最も会場が沸いたのは、男子200m平泳ぎ決勝だった。主役のひとりは1月の東京都選手権200mで、2分07秒01の世界記録を塗り替える2分06秒67を出した渡辺一平(早大)だった。リオ五輪の準決勝では2分07秒22の五輪新記録を叩き出し、決勝はセンターレーンで泳いだ実績からすれば、出るべくして出た世界記録だった。その渡辺は世界記録保持者の力を証明するために、この日本選手権でも記録更新を狙っていたのだ。

 一方、この種目を北島康介から受け継ぎ、15年から日本選手権連覇を果たしてリオ五輪をともに戦った5歳上の小関也朱篤(やすひろ/ミキハウス)も負けるわけにはいかない。その前哨戦だった大会初日の100m平泳ぎでは、「200mのためのスピード強化を意識していたので100m中心の練習をしてきた」という渡辺が、前半を目標にしていた27秒台で入る27秒98で折り返して、先行する小関を追いかける展開になった。

 渡辺は、「最初の50mをガムシャラに行きすぎたというか、27秒台で入りたいと思って少し硬くなっていたのかなと思う」というように、持ち味である後半の伸びを発揮できなかった。結果、自己ベストより0秒12遅い1分00秒11で、代表内定を逃した。それに対し、小関は後半もきっちりと本番のベスト16以内を想定した泳ぎで優勝、代表内定を決めた。

 その100mの雪辱を果たすとともに、初の日本選手権タイトルを獲得したいと臨んだ200m。渡辺はいつも前半から飛ばす小関に対し、自身が持つ世界記録のラップタイムを上回る速さで先行する展開に持ち込んだ。

「僕の計算では100mは1分0秒台でターンできると思った」という渡辺は、再び2分6秒台を出すための条件だと考えていた1分0秒台には届かず、1分01秒22だったが、小関との差は0秒58まで広げた。

 一方の小関は、これまでのレースとは違い渡辺に先行される形になって「正直焦った」という。それでも、「自分を信じて自分のレースをするだけと思い、100mから150mまでを若干上げたら一平くんに追いついてきたので……」と、150mのターンでは0秒38差に詰めた。

「今回は勝負にこだわるレースをしようと思っていた。確かに一平くんの方が前半は速かったけれど、僕も前半を抑えたつもりはなかった。ただ、泳ぎの部分で少し技術を変えて効率性が上がっていたことで、後半に力を温存できたというのが今回のレースでわかりました。レースとして、いいペース配分ができたと思います」(小関)

 150mをターンして浮き上がった時には、少しだけ小関が前に出た。そこから激しい競り合いを展開し、最後は渡辺を0秒42突き放してタッチ。自己記録を0秒59更新する2分07秒18で大会3連覇を決めた。渡辺も2分07秒60と、ハイレベルな戦いとなった。

「小関さんが後ろについているのは見えていたし、来るのも予測していたので、そんなに焦りはなかったけど、『来た!』と思った時にはもう身体が動かなかった。そこは泳ぎの技術も含めた持久力のアップが必要だと思います。負けたというのは僕の実力不足だけど、小関さんも自己記録を大幅に更新しているから、僕もいいレースはできたと思う。これから200mの練習をもっと積み上げて世界選手権では小関さんとワンツーを取れるように頑張りたい」と渡辺は言う。

 小関も今回のハイレベルなレースを振り返り、「久しぶりに力を出し切れたかなという感じですね。元気な若手がいるから負けられないと常に思っているし、本当に彼とはいつもいいレースができているので、お互いに切磋琢磨しながらいい結果を出していきたい。自分がもっと速くなれば自ずと世界記録ということにもなると思いますが、200mは日本人が世界記録を出すみたいになっているから、世界選手権では日本の平泳ぎはすごいんだぞというのと、日本の平泳ぎの技術の高さを世界に見せつけたいと思います」と語った。

 小関が出した2分07秒18は、渡辺と、山口観弘(イトマン)、ジョジュ・プレノー(アメリカ)の2分07秒17に次ぐ世界歴代3位の記録。また、リオ五輪と比較しても小関の記録は1位、渡辺の記録は3位に相当する。それを考えれば、7月の世界選手権での1、2位独占も十分に可能だ。そして、それ以上に収穫となったのは、世界のトップを狙えるライバルが身近にいることで、お互いに刺激となって高め合えることを確認できたことだ。

 世界記録を出した渡辺が日本選手権でも自分の力を出して戦い、それを抑えて先輩の小関が制したという結果は、今夏の世界水泳、そして東京五輪への期待を大きく膨らませるものでもあった。

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