日本航空(JAL)は2017年4月18日、フランスのダッソー・ファルコン・サービスと提携する新サービス「JAL FALCONビジネスジェットサービス」を2017年5月1日から日本で販売開始することを発表しました。このサービスは、JALが提供する東京-パリ便を利用後に、パリからヨーロッパ各地への乗り継ぎを豪華なビジネスジェット機で提供するというもので、ヨーロッパで広く使われているビジネスジェット機・プライベートジェット機のサービスを国内からワンストップで予約して利用できるというもの。羽田空港で実際に使用される機体のお披露目と併せて発表会が開催されたので、普段なら見るチャンスがなさそうなビジネスジェットの中を見てくることにしました。

JAL企業サイト - プレスリリース - 「JAL FALCONビジネスジェットサービス」の販売を開始

http://press.jal.co.jp/ja/release/201704/004252.html

取材当日、羽田空港を訪れると格納庫の中にはフランスの航空機メーカー、ダッソー・アビエーションの最新ビジネスジェット「Falcon 8X」が報道陣をお出迎え。その向こうには、東京-パリ間を実際に飛んでいるボーイング・777型機が置かれています。



このFalcon 8Xは、実際に「JAL FALCONビジネスジェットサービス」でも用いられる機体で、この日のためにフランスから飛んできたそうです。



Falcon 8Xは全長約25メートル・全幅約26メートルの大型・長距離型ビジネスジェット機で、最大で19人の搭乗が可能。プラット・アンド・ホイットニー・カナダ社製のジェットエンジン「PW300」を機体後部に3基搭載しています。

Falcon 8X - Overview



発表会にはダッソー・アビエーションのシニア・バイス・プレジデントであるオリヴィエ・ヴィラ氏(中央左)と、日本航空の植木社長(中央右)が登場。ヴィラSVPからは「ダッソーの実績ある機体で従来の路線よりも柔軟な対応が可能な価値をJALと共同で提供できることをうれしく思っている。日本のマーケットに、ビジネスジェットのサービスを浸透させることができる機会だと考えている」というコメント、そして植木社長からは「JALの最高のサービスと、ダッソー・ファルコン・サービスが提供する利用客の意向に併せてカスタマイズすることが可能なサービスを組み合わせ、ヨーロッパやアフリカなどの複数拠点への移動を可能にできるサービス。時間を最大限有効活用するビジネス客に対して利用価値が高いと考えている」という旨の説明がありました。



このサービスは、フランスの航空機メーカー「ダッソー・アビエーション」の100%子会社で、ビジネスジェットサービスを50年来にわたって提供してきた「ダッソー・ファルコン・サービス (DFS)」とJALが提携することで日本に投入される新サービス。利用者はまず、東京-パリ間をJALのファーストクラスなどのサービスで移動し、フランスのシャルル・ド・ゴール空港に到着後はDFSがオペレートするリムジンサービスを利用して近接するル・ブルジェ空港に向かいます。ル・ブルジェ空港では世界のVIPのみが利用できるラウンジでくつろいだ後に、ラウンジに横付けされたビジネスジェットに乗り込み、目的地までのチャーターフライトを利用するというもの。既存の定期路線のように時間に縛られることなく、さらにセキュリティ面でも万全の体制が約束されたチャーター便を日本に居ながらにして予約できるという新しい価値を提供するサービスというわけです。



このサービスでは用途や規模などに応じて、DFSが保有する複数のダッソー製機体からチョイスすることが可能。以下のリストには含まれていませんが、今回お披露目された「Falcon 8X」はダッソーの最新鋭の機体となっています。



格納庫にはレッドカーペットが敷かれ、取材陣を内部にお出迎えの様相。



ビジネスジェットとはいえ、近くで見るとかなりの迫力。機体の最大高は約8メートルとなっています。



主翼の翼端には、空気抵抗となる「翼端渦」を軽減するための「ウイングレット」を装着して高効率化を実現。これにより約1万2000kmの長距離飛行を可能にしており、東京-ニューヨーク間をノンストップで飛べるほか、その気にさえなれば東京-パリ間をノンストップ・無給油で飛ぶことも可能となっています。



ビジネスジェットらしく、乗降用のタラップは扉に内蔵されるタイプ。



実際に機内の様子を見学することもできました。「今日以降、自分のお金でこうやってビジネスジェットのタラップを登る機会は訪れるんだろうか……」と、心は躍りつつもなんだか現実を感じつつ機内に乗り込んでみます。



登るときにふと壁に目をやると、ピカピカに磨き上げられたウッド仕上げの内装が目に飛び込んできます。もうこれだけで気分はセレブといったところ。



機内は、まさに映画に登場するような「ビジネスジェット」の世界。ファーストクラスを思わせるような豪華なシートがゆったりと配置されており、「窮屈さ」とは無縁のエグゼクティブな世界が広がります。



着席時でも会話が楽しめそうなシートレイアウト。もちろんいうまでもなく、各シートには個人用のプライベートディスプレイが用意されています。





4人がけで、会議や食事を行えるテーブルレイアウトになっているエリアも。



もちろん各シートはファーストクラス並みの豪華なもの。



いったいどれほどの人が、このシートに座って料理とお酒に舌鼓を打つことができるのでしょうか……



機内は大きく3つのエリアに分かれており、一番後ろのエリアにはロングソファーが壁際に置かれています。



機体最後部にはトイレ。トイレといえども抜かりない、豪華で落ち着いた内装に仕立てられていました。



この機体は制御システムが大幅にデジタル化されており、コックピットは複数の液晶ディスプレイが並ぶ「グラスコックピット」となっています。機長席に座るパイロットによると、やはりパリから東京まで無給油のノンストップで飛んできたとのこと。



入り口を入ったすぐ目の前には、簡易な流し台が置かれています。



流し台の横の扉を開けると、中には電子レンジとエスプレッソマシンが置かれていました。



電子レンジの横の扉を引き出すと、ワイングラスになっていました。



入り口横には、簡易シートが置かれていました。「簡易」とは言うものの十分にゆったりとしたシートで、レイアウトを変更してフルフラットベッドにすることもできるそうです。



実際の利用時の流れは以下のようなイメージ。JALの運行便を利用してパリ・シャルル・ド・ゴール空港に到着後は専任のスタッフが利用者をお出迎え。その後の入国審査はもちろん優先レーン(プライオリティレーン)で待ち時間なしにゲートを通過し、同時に別のスタッフがピックアップしていた荷物と一緒に空港に横付けされたリムジンに乗り込んでル・ブルジェ空港に向かいます。十数分のリムジンライドの後にル・ブルジェ空港に到着すると、ここでもDFSの専任スタッフがお出迎え。



ル・ブルジェ空港ではVIPが利用する「サロン200」でくつろぐことが可能。とはいえ、予定に合わせてカスタムメイドされたスケジュールのため、飛行機を待つ時間はそもそも存在していません。目の前に駐機されたチャーター機に荷物が搭載されるのを見つつ、ひと息ついたら、スタッフにパスポートを預けて出国審査を進めてもらいます。そしてVIP向けのセキュリティチェックを通過したら、扉を開けたすぐそこに留められているビジネスジェットに乗って目的地を目指す、という至れり尽くせりのサービスとなっています。



気になる利用価格ですが、JALの担当者によると「率直にいって料金は高い」とのこと。このサービスは、主に国内企業のトップなど時間をぬうように海外を飛び回るエグゼクティブ層に価値を提案するところから訴求を開始し、その後は富裕層などの旅行に対するニーズを掘り起こすことを目指しているそうです。

また、ファーストクラス利用と併せて料金を割り引くといったサービスも設定されておらず、「料金面での面白みはない」とのこと。つまり、お金に糸目をつけない人に対するサービスという狙いが徹底されているということであり、それに見合うだけのサービス内容になるようさまざまな趣向が凝らされています。

実際の利用イメージのモデルプランが示されています。「ケース1」では、ヨーロッパの金融の中心であるパリ・マドリード・チューリッヒ・ロンドンの4都市を忙しく駆け抜けるビジネスマンをイメージしたもので、朝の9時にパリを発って4都市を周遊し、その日の19時30分にパリに戻ってくるという、総フライト時間が6時間のコースで利用料は約451万円。



「ケース2」ではアフリカ各国を4日間にわたって周遊するというオリジナルの旅行プランで、7人分の料金は2480万円というもの。ただし、同一料金で複数人の利用が可能なので、人数によっては十分に納得できる、ということになるかもしれません。



現在、日本発・欧州/中東/アフリカ向けのファーストクラス・ビジネスクラス需要は年間80万人にのぼるとのこと。このうち、30万人は到着地からさらに別の目的地、つまり直行便が就航していない「オフライン地点」が目的地であることから、JALではビジネスジェットサービスの需要があると見込んでいます。



JALがこのサービスを提供する強みの1つが、従来からサービス提供を行ってきた「JAL PAK(ジャルパック)」のノウハウを活かしたきめ細かなサービス対応とのこと。利用者の要望に応じて専任のスタッフが全ての手配を行うワンストップサービスを、ビジネスジェットのサービスと併せて提供することで、ビジネスマンや富裕層のニーズを全てかなえることが目指されています。



利用時にはまず、利用者の要望を受けたJALのセールス担当者がDFSと打ち合わせのうえ見積もりを作成。細かい調整の後にGoサインが出たら利用料を振り込み、実際の旅程がスタート。パリ以降の現地ではDFSのスタッフが基本的に対応しますが、JAL側も随時フォローする体制を取っているとのこと。JALはDFSの売上に対するコミッション(10%未満)を受け取るビジネスモデルとなっているそうです。

JALとしても、まだこのサービスにどれほどのポテンシャルが潜んでいるのかは「様子見」の段階とのこと。まずは企業や官公庁、スポーツ団体などのビジネス需要をターゲットにニーズの掘り起こしを進めて、将来的には日本各地に存在する地方の優良企業にもアプローチし、さらには富裕層の旅行ニーズに対応する体制を作って行くことを視野に入れているとのこと。ビジネスジェットには、既存の路線にはない秘匿性の高さや時間面での自由度、さらに、誰が搭乗しているのかが全て自分で把握できることによる安心・安全感の高さなどがメリットとしてあげられます。

はたして、ヨーロッパや北米で広く利用されているビジネスジェットサービスのニーズが日本人の間にも存在するのか、さらには日本でもこの手のサービスが提供される日が訪れるのか、興味深いところです。