中村俊輔(写真:Getty Images)
テレビ朝日「Get Sports」(16日深夜放送)では、「番組20年目突入 特別企画」として「中村俊輔 フリーキックバイブル」を放送。後編となった今回は、過去に中村が決めたフリーキック4ゴールをピックアップし、サッカー解説者・中西哲生氏とともに振り返った。

細かい駆け引きや、フォームの変化、状況に応じた判断など、その技術を惜しげもなく披露した中村は、今も進化を続ける理由や、後に日本を代表するキッカーへと成長する、きっかけとなったゴールについても語った。

・2012年10月27日、横浜F・マリノス 対 名古屋グランパス
後半アディショナルタイム、1点を追いかける横浜FMは、フリーキックを獲得。中村は、一度フェイントを入れ、名古屋の壁を揺さぶった後、ゴール左隅に蹴り込み同点にした。

「壁が日本のクラブにしては高い。190cmくらいが4人くらい並んでいるので海外っぽくてこの時は面白かった」という中村。中西氏が「何が(面白いの)?」と尋ねると、「日本でこういう感覚になるのはなかなかない。しかも楢さん(楢崎正剛)だし」と答えた。

この時、壁にいたのは、田中マルクス闘莉王、増川隆洋、ダニエル、ダニエルソンら長身の選手たち。「ボンバー(中澤佑二)とかが壁に入ってくれてるんで、押されてるじゃないですか。押してる分、(相手選手たちの)ジャンプもそんな高くない。壁のジャンプがバラバラだとこうなる。壁の前に立つ、押すという駆け引きは、キッカーからするとベストな弾道じゃなくても入る。『せーの』でちゃんと跳んでたら(壁に)当たってました。(チーム)全員のゴール」と振り返った。

また、この時のフリーキックは、ポストに跳ね返ったボールが、横っ飛びをした楢崎の肩に当たってゴールに入っている。楢崎の反応が良かったために生まれたゴールでもあり、中村は「どっちかって言ったら負け」と表現した。

・2015年8月29日、横浜F・マリノス 対 浦和レッズ
前半28分、ペナルティエリア手前、25mの位置から決めたフリーキックは、速い弾道でネットに突き刺さった。「斜め回転?」という中西氏に、「そうっす」と答えた中村は、「一番ベスト(な弾道)は、上から降ってくるのもあるんですけど、壁の上ギリギリを超えて、なるべくゴールになるまでの到達時間を早くしたい」と続けた。

また、「最近のゴールキーパーは、西川(周作)君を筆頭に足もとがうまい選手で、(身長は)190cmとかはない。すごいステップが早い。サイドステップでボールまでの到達を考えた時に、こっちはもっと早くしなきゃ」と語ると、中村は「西川君は蹴ってから動くタイプなので、だったらスピードで上回ればアリかな」と、この弾道を狙った意図を明かした。

その他にも、蹴る直前、中村は、蹴った時にボールが当たるスパイクの部分を、何度も自分のソックスで拭いている。この点を中西氏から指摘されると、「マニアックだなー」と笑みを浮かべつつ、「(スパイクが)濡れてるんですよ、夏で。汗だったり水撒いたりするんで。できるだけインパクトでグリップをバシッといきたい。ほんのちょっとのこと。それが普通のことになってくれば、より正確性が増す」と語った。

・2015年7月19日、横浜F・マリノス 対 ガンバ大阪
1-2とリードを許した後半アディショナルタイム。中村はゴールに吸い込まれるようなフリーキックを決め、同点に追いついた。

中西氏から「神コースじゃないですか?」と言われると、中村は「乗っかりましたね」と独特な言い回し。「ボランチで(起用されて)いっぱいボールを触っててロングパスとかしてるじゃないですか。そうすると今日の足の感じとかが。ボールに乗っかる感じが何回も(あった)」と補足すると、「これは時間帯も暑い中での90分過ぎた感じ。100点に近いと思います」と自画自賛した。

また、「今のフォームとかボールだったら、カマボコ(ペナルティエリアの外にある半円)まではいけるかな、壁が」とした中村は、ボールに応じて蹴り方を変えることで、フリーキックの距離も伸ばしているという。

「自分の筋力的な問題とか、身体の足の振りかぶり方。しならせる。ムチじゃないですけど。前の蹴り方で、どうしてもこすり上げるような感覚で蹴ると、今(のボール)は縫い目が浅いですし回転しないし失速する。(今のボールでは)できるだけボールのちょっと下を強く押し出す」

中村は進化を続ける現在のフォームをこう説明。以前は、身体の回転を使って足を振り抜くようなフォームがお馴染みだったが、現在はボールの斜め45度あたりから助走し、ボールを蹴った後、足を振り抜くというよりは、止めることで威力のあるフリーキックを蹴っているという。

・2016年4月2日、横浜F・マリノス 対 ガンバ大阪
2016年2月からガンバのホームスタジアムとなった吹田スタジアムでの試合。この時の中村は、前半10分に獲得したフリーキックを蹴る際に転んでいる。その後、1点リードされた前半40分、28mのフリーキックでは、珍しくストレートに近い弾道でゴールを決めた。

「これまた別ですよ」と切り出した中村は、「できたばかりのグランウンドなんで芝がすごい。土の部分がまだ仕上がってない感じ。叩いている固さ。練習でも一回すっ転んだ」と苦笑い。約30分前のフリーキックで、軸足を滑らせて転倒していることから、「(インパクトの後に軸足を)外してます」と明かし、蹴り方を修正して決めたゴールであるとした。

「これも練習してないですけど。新しい発見」という中村。「今後使えるかな。センタリングっぽい感じ(の蹴り方)。遠い距離だったり、雨の時かな。蹴り抜けるっていうか・・・」と、新たな自分の武器になり得る手応えを掴んだようだった。

そんな中村が選ぶ自身のベストフリーキックは、セルティック時代にマンチェスター・ユナイテッドFC戦(ホーム&アウェー)で決めた、2発のゴールのほか、「あれがなかったら今もない」などと、1997年5月3日のJ初ゴールをあげた。

「あれでキッカーとして、『お前いいよ』って。そういう可能性を引き出してもらったし、チームメイトの方にも、先輩方ですけど感謝しなきゃいけない」という中村は、当時の練習を回想した。

「壁には井原(正巳)さんと城(彰二)さんと小村(徳男)さんと三浦文丈さん、野田(知)さん。絶対当てちゃダメでしょ。練習の時。で、奥には(川口)能活さん守ってる。絶対入らないでしょ。そういう状況で1年目からやらせてもらった。そこで『壁当てないようにして、落ちるようなボールを蹴らなきゃ』って、それでも捕られるの、能活さんにっていう経験が1年目でできた」

当時の練習仲間や環境が、キッカーとしての自分を育てたという中村。18歳でチームのキッカーに選ばれた責任感もあり、「皆帰った後に一人残ってバシバシやらないとっていう。そういう環境が本当に良かった。それあってのこと」と振り返っている。