どうも背後が手薄な印象があった。J1リーグ第7節、相性のいい味の素スタジアムでFC東京と対戦した浦和レッズには、立ち上がりからやられてしまいそうな危うさが漂っていた。


ペトロヴィッチ監督は1点リードの後半、戦い方を変えてきた 開始早々にFC東京のFW阿部拓馬にエリア内への侵入を許し、決定的なシュートを見舞われると、その直後にも阿部に右サイドを崩され、FW永井謙佑にシュートを打たれてしまう。14分にFW興梠慎三が先制ゴールを奪ってからは徐々に浦和らしいボール回しも見られたが、攻撃のギアは一向に上がらない。FW大久保嘉人とFWピーター・ウタカという攻撃の2枚看板を欠いたFC東京の拙攻にも助けられ、そのまま1-0で逃げ切ったものの、浦和らしい攻撃サッカーを期待していたサポーターは消化不良のまま帰路についたに違いない。

 試合後のミックスゾーンに現れたMF柏木陽介の表情は、決して勝者のそれではなかった。「今日はいい内容ではなかったし、満足していない。これで勝てるのは強いチームになった証拠だけど、内容はワーストかもしれない。あんまり気持ちよくない勝利だった」

 この日、前節まで首位に立っていたヴィッセル神戸が柏レイソルに敗れたことで、浦和は首位に浮上。本来ならば希望に満ちた勝利となるところだったが、この試合を見るかぎりは今後に不安を残す首位奪取となった。

 前節にベガルタ仙台相手に7ゴールを奪うなど、今季の浦和は第6節を終えてリーグ断トツの20ゴールを記録していた。「今季はキャンプから攻撃的に行こうということで取り組んできた」とDF槙野智章が言うように、ここまでは狙いどおりのサッカーができていたと言えるだろう。

 一方、6試合で7失点の守備は決して安定感があるわけではない。とはいえ攻撃的に行けば、当然後ろが手薄になるわけで、カウンターから失点を浴びる機会が増えるのは、ある意味で致し方ないものだった。

 この日も浦和には、攻撃の意識自体は高かった。3-4-2-1の基本布陣はあってないようなもので、ボールを持てば槙野とDF森脇良太の左右のセンターバック(CB)がリスクを冒して高い位置に顔を出す。後方でビルドアップを担うのは、中央のCBであるDF遠藤航と、柏木、MF阿部勇樹の2ボランチを含めた3枚回し。一見、リスキーではあるものの、キープ力とパスセンスに優れた3人だからこそ成り立つ戦術だ。

 もっとも奪われた際には、槙野と森脇が長い距離を走って戻らねばならず、一発のフィードでピンチを招くリスクも小さくない。危うさを漂わせていたのはそのためだが、ある意味でその状況は想定内。問題だったのは、リスクを冒したにもかかわらず、背後を固めるFC東京の守備を崩し切れなかった攻撃面にあったと言える。

 その状況を回避するために、後半の浦和は安全策を選んだ。相手のサイドバックに対し、興梠とFW武藤雄樹の2シャドーをあてがい、槙野と森脇も攻撃参加を自重。安定感は高まったものの、ボールの奪いどころが後方に傾き、いわば受けてしまう状況に陥った。また、ボールを奪っても前の人数が不足し、浦和らしいパス回しを仕掛けられなかった。

「シャドーがついていくと、やっぱり全体が引いてしまう。そこが守備に回ってしまった原因かなと思います」

 興梠は苦戦の要因をこう語ったが、指揮官の消極采配が自らの首を絞めてしまったという見方もできる。もっとも、ペトロヴィッチ監督にも言い分はある。火曜日にACLで中国の強豪・上海上港とハードな戦いをこなしたことに加え、突如暑くなった気候にも言及し、「プロフェッショナルに3ポイントを奪いにいく戦いのなかで、しっかり勝利できた。我々が今日出せるベストを出せたゲームだったと言えるだろう」と試合を振り返っている。

 つまりは、ペトロヴィッチ監督はチーム状態を考えたうえで、現実路線を選んだということだ。これには、もうひとつ理由がある。かつての経験を踏まえ、指揮官は語る。

「日本ではほとんどの時間帯で試合を支配しても、一発のカウンターでやられてしまえば、まるで評価されない。今日のように美しくないサッカーでも勝利していく。そういう部分を考えながら、今季は戦っている」

 ペトロヴィッチ監督にとっては苦渋の選択だったのだろう。勝たなければ、評価されない。年間勝ち点1位ながらチャンピオンシップで鹿島アントラーズに敗れた昨季の経験も含め、これまでに数々の悔しさを味わってきた浦和にとって、時に理想を捨て、結果にこだわることも重要である。それは、本来ロマン主義者であるペトロヴィッチ監督の「覚悟の采配」だった。

 守備的に対応することでピンチは減ったが、攻撃の迫力は消えた。攻撃性を保っていれば、より楽な展開に持ち込めたかもしれない。つまりは、結果論である。どちらにバランスを傾けるのかという選択を迫られたなか、ペトロヴィッチ監督は賭けに勝ったのだ。

 内容がよくても結果を出さなければ批判され、結果を出しても内容が悪ければ否定的な意見が飛び交う――。それは、常勝と娯楽性を求められた浦和というチームの宿命なのだろう。内容と結果、その両立を実現するのはひと筋縄ではいかないだろうが、両者がイコールで結ばれたとき、浦和は誰もが認める王者となれるはずだ。

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