かつて無職で車中泊をしていたエイプリル・サットンさん(29歳)は、その生活から6年で売れっ子のスタントウーマンへと転身。お小遣い稼ぎにドラマのエキストラに応募したところ、それまでの経験が功を奏し、なんとスタント担当のキャストとして大抜擢されたのだとか! どん底からのキャリアの確立、そしてスタントという仕事を選んだ彼女のパワフルなエピソードを、コスモポリタン アメリカ版からご紹介します。

まるで忍者になるための訓練のようで、常に「どうかこの道が間違っていませんように」と願っていました。

「高校3年生の頃、ある日自分の写真を見て、5キロほど体重が増えていたことに気づきました。その時"このままではまずい"と思ったのですが、どうすればいいのかわからなかったんです。そこで陸上選手の友達に誘われて、一緒にジムに行くようになりました。はじめは全然ついていけませんでしたが、必死に通っているうちに、数カ月経った頃から劇的な変化が見えてきました。私の筋肉を見た周りの友達にも『すごい、ムキムキじゃん!』と言われるように。

その後大学の体育学科に進み、2010年に卒業してからは、それまでアルバイトしていた<Bally Total Fitness(以下、Bally's)>というフィットネスジムで、正規のトレーナーとして働き始めました。仕事は本当に楽しくて、男性ばかりの職場で唯一の女性スタッフだったこともあり、毎日兄弟たちとワイワイやっているような気分でした。8カ月後にはフィットネス・ディレクターに昇格。その後キックボクシング等の資格も取得し、ボディビルのコンペにも出場するようになりました。

まるで夢のような毎日でした。新店舗が2011年にオープンすると、そこの担当も任され、そのジムも経営は絶好調。しかし、わずか1カ月後にBally'sは別のフィットネス会社に買収され、私たちは突如1人残らずリストラされました」

「トレーナーとしての仕事を失うことは、それまで培ったクライアントもすべて失うことを意味し、一からやり直さなければならなくなります。わずかな貯金を頼りに、なんとか別のジムで働き始めることはできましたが、それでもクライアントをそこそこ獲得するまで5カ月はかかりました。その頃には、貯金もすべて使い果たしていました。家賃も払えなくなり、ルームメイトにはアパートを追い出され、他に行く宛てもなく数週間は車中で生活しました。そのうち諦めて、シカゴから1時間ほどの距離にある実家に帰ることに。家族や友達からお金を借りなければならなかった時期などもあり、当時は本当にみじめな思いをしました。

そんな中、私はシカゴ美術館附属美術大学で映像プロダクションを学びたくて、奨学金や学生ローンについて調べ始めました。昔から、いつか映画や映像の世界に関わってみたいと思っていたのですが、キャリアとして成功させる自信がなかったので、ハナから諦めてしまっていました。でももうここまで来たら、何か目標や希望を感じられる新しいことに挑戦しなければと思い、奨学金やローンを利用して学校へ通い始めました。そして1年目には、<シネスペース・シカゴ・フィルム・スタジオ>でのインターンシップの機会を得ました。

スタジオでインターンをしていたある日、当時シカゴで撮影をしていた映画『ダイバージェント』(2014)の撮影スタッフの方とばったり出会いました。もうすぐキャスティング選考に入るという話を彼から聞き、お小遣い稼ぎにエキストラの仕事でももらえないかと考えていたところ、ちょうど私にボクシングの経験があることに気づいたスタントキャスティング担当の方が、声をかけてくれました。結果的に、主演の俳優さんたちと同じくらいの割合でセットに入る、ギャラの高いフル出演のエキストラ として採用してもらえることになったんです。

撮影は6カ月間かかりました。終盤で、1人のスタントコーディネーターから突然、『君もスタントに挑戦できるシーンがある』と言われました。銃で打たれる警備員役で、打たれたリアクションとして空中で一回転し、背面から地面に倒れるというものでした。彼からその場で『やってみせてくれ』と言われたので、やってみると、なんと即採用。エキストラとして残業代も含め、1日140ドル(約1万6,000円)だったところから、一気にスタントシーンの2日間で1800ドル(約20万円)の小切手を貰うことができました。現場はとにかく楽しかったのですが、映画のためにその他の仕事を辞めてスケジュールをすべて空けなければならなかったので、撮影終了と同時に私は再び無職の身となりました」

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「私はこのキャリアに賭けてみようと決心しました。『ダイバージェント』の撮影で知り合ったスタントコーディネーターの方々に頼み込み、1セッション10ドルでトレーニングをさせてもらえることになりました。その値段でやらせてもらえるなんて、本当にありがたい限りでした。しかし、週によってはその10ドルしか生活費が稼げない時もあり、弟のアパートの床に寝かせてもらったりもしました。

そうこうしながら、スタントコーディネーターの方たちとは8カ月間トレーニングを重ねました。決められた動きをしながら、実際はケガをしていないのに痛みだけを表現するという手法は、これまでやってきたトレーニングの中でも最もハードなものでした。それまでボディビル向けだった自分の肉体を、細身のアスリート風に改造しなければなりませんでした。筋肉痛は日常茶飯事で、車に跳ねられたような体の痛みで目覚める朝もありました。まるで忍者になるための訓練のようで、常に『どうかこの道が間違っていませんように』と願っていました。

2014年の9月に、新しく始まるドラマ『Empire 成功の代償』の出演者に雰囲気がぴったりだからと、1人の知り合いのスタントコーディネーターが連絡をくれました。まだその番組のことは誰も知らない時期でした。初めて撮影したスタントシーンは、キャストの2人がレストランで食事をしている際に、通り魔が乱入し銃撃戦を繰り広げる場面でした。私は割れたガラスの上に転倒し、かなりの衝撃で地面に打ちつけられるというスタントをすることに。ガラスは1枚しか用意されていなかったので、チャンスは1度きりでした。でも一発でそのスタントを決めることができ、私はそのままシリーズのスタント用キャストの仕事をゲットしました。

シーズン1のフィナーレの撮影で、女性同士がいがみ合いのケンカをするシーンがあり、それが後々私のキャリアの中でも大きなチャンスへと繋がるきっかけになりました。そのエピソードが放送された後、スタントの仕事を視聴者にも見てもらいたくて、私は現場の舞台裏写真を自分のSNSにアップしたんです。すると、そのうちの何枚かがネットで拡散され、電話やメールがひっきりなしに来るようになり、SNSのフォロー数も急上昇。さらに、ドラマのスタントウーマンから直々にトレーニングを受けたい!と、個別トレーニングの仕事も舞い込むようになりました。また、その他のドラマ『シカゴ P.D.』や『シカゴ・ファイア』でもスタントウーマンとして仕事のオファーをいただきました」

「この業界では、新しい仕事がいつ舞い込むかわからないため、常にコンディションを整えていなければなりません。私は1年中トレーニングをし、3度の食事をしっかり食べています。毎食すべて自炊で、お酒は一滴も飲まず、週5〜6日(基本的に1日2回)ワークアウトをしています。過酷ですが、まぁ、スタントの仕事自体がそもそも過酷なものですからね。

まだまだこれからたくさんの作品に出演したいし、もっといろんな俳優さんや女優さんと関われるように、自身の個人トレーニングビジネスを拡大するのが楽しみでなりません。私の夢は、自分のプライベートスタジオをシカゴの街にオープンすることです。体が使いものにならなくなるまで、まだ10年はありますから。私は常に"次はどんなことをしてみようか"と考えていますし、今この映像業界で活躍できるようになって思うのは、これまで不可能だろうと思えていた可能性やチャンスは、実はまだまだ無限に広がっている、ということです」

※この翻訳は、抄訳です。

Translation: 名和友梨香

COSMOPOLITAN US