生徒の学習を効率よくするために学校の教師は自分で教材を作ることもありますが、そのような教材をオンラインで販売するサイトが存在しています。そこではオリジナルの教材を販売することで大金を手にしている教師が何人もいるのですが、「よいアイデアの共有につながる」という意見がある一方で「教材は売るべきものなのか」という議論が起こっています。

Millionaire teachers: Rising standards have led to a lucrative online marketplace for lesson plans (w/video) | Tampa Bay Times

http://www.tampabay.com/news/education/k12/millionaire-teachers-rising-standards-have-led-to-a-lucrative-online/2320189

登録すれば自分で作った教材をオンラインで販売できるサイト・Teachers Pay Teachersでは、200万個を超える教材がアップロードされており、8万人を超える教師が「商品」を販売しています。実際の売上からは、無料会員の場合は40%の、そして年額59.95ドル(約6500円)を払うプレミアムメンバーの場合は15%の手数料が差し引かれて教師の手元にお金が振り込まれます。

一部の専門家から異論も上がっている教材販売サイトですが、オンラインでの取引は盛況を呈しています。小規模な売上をあげるケースが多いようですが、中にはアカウント名「Miss Kindergarten」のように過去6年間で100万ドル(約1億円)もの売上を手にした人が何人も存在しているとのこと。本名をヘイダー・ハートスタインさんという32歳の女性、Miss Kindergartenは、「私の人生にTeachers Pay Teachersが訪れたこと、そして私の情熱とキャリアがここで1つになったことをとても感謝しています」と語っています。ハーストタインさんは、まもなく生まれてくる赤ん坊のために仕事を数年間にわたって休職するだけの金銭的余裕を手にしています。



Miss Kindergartenが販売している教材は、無料で提供されている「アルファベットカード」から、年額120ドル(約1万3000円)の算数や文字の読み書き教材などで、自身のブログやSNSを通じて広く拡散されているそうです。規模の大きさに比例して作業も増えているようで、「これは本来の仕事とは完全に別のフルタイムの仕事として捉えるべきです。非常に多くの労力をつぎ込む必要があります」と語っています。

2006年に設立されたTeachers Pay Teachersは2016年、出品者に支払われた売上が初めて1億ドル(約110億円)を突破する節目を通過しました。この分野には多くの注目が集まっており、「Teachwise」や「Teacher's Notebook」、そして「Houghton Mifflin Harcourt」や「Amazon」などの大企業もこの業種に参入する状況になっているとのこと。

その一方で、「教材は販売されるべきものか」という疑問の声が挙がっています。これまでは各教師が工夫を凝らし、わかりやすさを追い求めてきた教育材料が「マネタイズ」されることに対する抵抗が根強く存在していることや、そもそも販売されている教材がその教師の所有物であるかどうかの確認ができないことで、著作権が侵害されていると指摘する見方もあるとのこと。



しかし、現場の教師の目線から見れば数多くのメリットも存在しています。多くの場合、教師が自分で教材を開発するのは仕事を終えてからのプライベートな時間であり、そこには少なくない負担が存在しています。ある教師は教材の開発に一月あたり20〜30時間を費やすこともあったそうですが、Teachers Pay Teachersのようなサイトで目的の教材を見つけることができれば、わずか数ドル(数百円)で自分の時間をお金で買うことができ、場合によっては自分で考えていたものよりも優れた教材を手にできる可能性もあります。また別の教師は、自分で教材を作っている時に同僚の教師から、「なぜ車輪の再発明をしてるの?」と尋ねられたことから、オンラインの教材シェアサービスを使うようになったそうです。

教師がさまざまな情報を共有するサイト・WeAreTeachersの管理者の一人であるハンナ・ハドソンさんは、教師はお互いを信頼してサポートを行っていること、そしてウェブを経由してそれぞれが開発した教材資源にアクセスすることが容易になり、従来よりもコストが抑えられているメリットを挙げ、「教師が自分のクラスで使う教材に私財を投じることは、お金以上の意味があります」と語っています。

しかし、ウェブの発展による弊害はこの分野でも付きものといえる模様。校長のクラスの人々が属する団体であるNational Association of Secondary School Principalsのボブ・ファラース広報担当者は、アイデアや教育内容に所有権という概念を持ち込むことで、これまでの学校教育で培われてきた共同の精神が失われると指摘しています。事実、州によっては教材をオンラインで販売することを教員契約する際に禁じているケースもあるとのこと。



また、それらの教材がどのようにして生みだされたのかを指摘する見方もあがっています。教員としての勤務時間中に開発したものであるとすれば、それはひいては学校の所有物ということになり、個人がそこから利益を得ることは認められません。2004年の判例では、停職扱いをうけた教師が学校に残されたままのテスト問題などの資財の所有権が自分にあることを求めたのに対し、ニューヨーク連邦裁判所は所有権を認めなかった州の判断を支持する立場に回っています。また、連邦高等裁判所は、教師が業務中に作成した教材の所有権は学校にあるとする判断を示しています。

しかしこの見方に対しても異論が示されています。先述のMiss Kindergartenことハートスタインさんは、「私が作った教材は全て自分の時間の中で作ったものです。幼稚園の教員である私にとって、日中は座ってひと息つく暇もないほど忙しいものです」と語っています。ハートスタインさんは、自分は金持ちになろうと思って教材を売ったことは1度もなく、自身の経験を他の人に共有するために販売を行っているとし、「教師が自分の生徒のために非常に優れた教材を持っていたとして、なぜそれを他の人と共有しないのでしょう?そしてそこから幾ばくかのお金を得ることができたら、素晴らしいじゃないですか?」と語っています。