2016年に発生した熊本地震の際、フィンランドから寄付されたことによって脚光を浴びた赤ちゃん用の「液体ミルク」。2017年4月4日現在、国内では一般販売されていませんが、厚生労働省は先日、流通に向けた具体的な検討を始めました。

子育ての負担軽減につながると期待の声が挙がる一方、その実態について、まだまだ理解が少ないのが現状。そもそも、液体ミルクとはどんなものなのでしょうか? 日本乳業協会の難波和美さんに聞きました。

●開封後、すぐに赤ちゃんに授乳できる

「液体ミルクとは、調乳がいらない乳児用人工乳の事を指します。母乳とほぼ同様の成分に調整されており、粉ミルクと違い、開封後すぐ、赤ちゃんに授乳できる点が特徴です。今のところ、日本では販売はされていませんが、海外の例を紹介すると、乳首を付けて与えるタイプと、哺乳瓶に注いで授乳するタイプがあります」(難波さん、以下同)

親として気になるのは安全性ですが、粉ミルクよりもむしろ衛生面での信頼性は高いといえます。

「液体ミルクは無菌なので、じつは粉ミルクよりもかなり衛生的なんです。粉ミルクは調乳の作業があるので、どうしても菌混入のリスクは液体ミルクよりも高くなってしまいます。さらに、無菌なので常温ですぐ授乳できて、長期保存も可能です」

●液体ミルクのメリットって?

こうした特長から、とくに災害時には液体ミルクが大いに役立つのだとか。

「粉ミルクは細菌感染を防ぐために、70度のお湯で溶かす必要があるのですが、災害時には高温のお湯が手に入りにくくなります。それによって、使用後の哺乳瓶を煮沸消毒できないことが問題になってきます。しかし、液体ミルクの場合、『水』『燃料』『哺乳瓶』が不要で、かつ使い捨てなので、災害時にはとても役立ちます」

また、非常時に限らず、液体ミルクを日常使いすることは次のようなメリットがあるそうです。

「最大のメリットは何と言っても、すぐ授乳できること。粉ミルクに比べ、一度に5分程度も節約できます。調乳時に量り間違える心配もないですし、粉ミルク作りに慣れていないお父さんやおじいちゃんも育児に参加しやすくなるでしょうね。さらに、水や哺乳瓶が不要なのでお出かけ時の荷物も減るのではないでしょうか」

●気になる欠点 液体ミルクのデメリットとは?

聞けば聞くほどいいことづくしのように感じられますが、逆に液体ミルクならではのデメリットはないのでしょうか?

「一番のネックは、値段が割高になってしまうことです。これはアメリカの場合ですが、粉ミルクと比較して液体ミルクは2倍弱高くなります。また、赤ちゃんによっては、温度や味の好みによって、飲みたがらない場合もありますね」

また、変色や沈殿物が発生する可能性があるため、品質に異常がなくても購入を躊躇してしまうケースが考えられるそう。

「海外の液体ミルクの場合、賞味期限は1年ほどですが、徐々に茶色く変色してしまうんです。成分的には変質はしていませんし保証もされていますが、見た目の悪さは否めません。また、液体が分離してしまって沈殿物が発生してしまいます。それが乳首に詰まることは滅多に無いと思いますが、使用前によく振らなくてはいけません。そのため、日本で売れる液体ミルクを製造するためには、まだまだ品質改良を進める必要があると考えています」

目下、日本の乳業メーカーも開発に力を入れているとのこと。「日本製の液体ミルク」が手ごろな価格で流通するようになれば、より快適な育児が叶いそうです。

(取材・文=吉岡 成味/やじろべえ)