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●キーワードは主体性、意識の変化が店舗にも
前回の記事でお伝えした通り、ウェンディーズというブランドを手に入れたファーストキッチン(FK)は、今まさに反転攻勢の途上にある。コラボ店舗「ファーストキッチン・ウェンディーズ」の業績は、話題性も手伝い好調に推移。ファーストキッチンの紫関社長は、ウェンディーズとの合併で社内が変わりつつあるのを感じている。

○まずはトップ集団を作る

紫関氏に話を聞いた中で、印象的だったのは「店舗や人材を強くしていきたい」(以下、かっこ内は紫関氏の発言)というフレーズだった。キーワードは主体性だ。

一人一人の社員をきちんと見て、評価していきたいと考える経営者は多くいるが、実際どのように実践されているのだろうか。現実問題として、各社員に社長の言葉や想いは伝わっているのだろうか。店長会議などの機会を活用したり、成績の良かった店舗を表彰するなどして、評価を伝達しているという風に、伝えたつもりになっている場合も多いような気がする。

紫関氏が実践したのはシンプルなことだ。月1回の頻度で発行する社内レターにおいて、優秀店舗を評価することと、成功した事例を共有することである。

チェーン店の事業を建て直す上で選択しがちなのは、業績の悪い店舗をハイライトし、不振の理由を洗い出したうえで、それをつぶしていくという、いわばボトム部分を引き上げる手法だ。しかし、FKの舵取りを任された紫関氏は違う考え方をする。

「まずは、トップ集団を作ろうよ」。FKを運営する上で紫関氏が目指すのは、自ら成功事例を積み重ねて走り続ける店舗、つまりトップ集団を創り上げることだ。そうすれば、成功事例をもとに追いかける店舗、つまりはフォロアーが自然と生まれてくる。

店舗で成功体験を積み重ねた人材には自信がつく。FKで成功体験を積んだスタッフは、ファーストキッチン・ウェンディーズを出店する際にリーダーを任せられるような人材に育つ。日本に乗り込んでくる外資系ファーストフードチェーンや新興勢力など、しっかりと市場に根を張っていない企業には、なかなかまねのできない仕組みだ。

●売れるか売れないかではなく、売るか売らないかが重要
本社にも店舗にも「主体性」を発揮することを求める紫関氏。店舗では自主的にミーティングを開き、どのように新商品をアピールしていくか、知恵を絞るスタッフも現れ始めている。では、本社の意識改革はどのように進んでいるのだろうか。

○価格帯の拡大に挑戦

FKの主体性が見てとれるのは商品戦略、とりわけ高価格帯に挑戦しようとする姿勢だ。

高価格帯商品の販売は、実はハンバーガーチェーン各社が何度もトライしている施策だ。他社の例だが、以前は1,000円のハンバーガー3種を毎週日曜日に限定販売するという試みが登場したこともある。高価格バーガーは話題を呼んだが、その会社のブランドに高価格帯バーガーはマッチしなかった。

300円台のハンバーガーを主体とするFKも、過去には高価格帯の商品を販売したことがあった。しかし、現在のメニューに単品で500円を超えるバーガーの用意がないことからも分かる通り、FKの高価格バーガーは定着していない。

実際のところ、300円台のバーガーで勝負し続けたのでは日本マクドナルドと正面からぶつかることになってしまうので、価格帯を広げることは、FKの規模のバーガーチェーンではトライする価値のある施策だ。しかし、これは一般論だが、商品開発のセクションが高価格バーガーを提案したとしても、営業から「うちでは売れない」という声が挙がり、企画が立ち消えになるというケースは珍しくない。

「売れるか売れないかではなく、売るか売らないかだ」。FKの価格帯を広げたいと語る紫関氏は、既存商品に比べ価格の高い商品を投入する際の心構えをこのように語る。売れない、つまり客が買ってくれないという考え方が受動的であるのに対し、売るか売らないかは、あくまで売る側の考え方ひとつに掛かってくる。「売る」という姿勢の基盤となるのは主体性だ。

「FKにはブランドがあり、居心地のいい店舗もあるので、(高価格のバーガーが)売れないわけはない」と考える紫関氏は、それまでバーガーメニューが300円台のみだったFKに400円台の商品を追加した。結果としては、こういった商品も売れているという。今後は同社初となる500円台のバーガーにも挑戦する意向だ。

●コラボ店は軒並み好調、FKはV字回復?
○改装効果は顕著、既存店も健闘

本社と現場の意識改革も功を奏したのか、現在はFKもファーストキッチン・ウェンディーズも業績は好調だという。

コラボ店に改装した店舗については、話題性もあるので業績が伸びているのも頷ける。実際のところ、池袋と渋谷センター街の店舗では、コラボ店への改装後に対前年で50%の伸びを示したこともあるという。改装からしばらく経った上野浅草口店では、オープン景気の終息後も着実に業績を伸ばし続けているそうだ。

紫関氏は社長就任時、コラボ店は黙っていてもある程度は伸びていくと見て、まずはFKの意識改革を急ごうと考えた。その効果か、2017年1月の業績では、FKでも対前年比プラスの店舗が目立ってきたという。FKはピーク時に比べて売上が10%程度落ちているそうだが、「地力があれば」下がった分は取り戻せると断言する紫関氏。FKの復活ぶりを説明する際には「V字回復」という言葉も飛び出した。

コラボ店の業績は好調で、FKも徐々に上向いてきたというのが現状だが、今後はどうか。次回はコラボ店の出店計画など、コラボビジネスの将来について見ていきたい。

(重盛高雄)