順天堂大2年の旗手。静学仕込みのテクニックと強烈なシュートを武器にするストライカーだ。写真:猪野史夏

写真拡大 (全2枚)

 4月15日、2017年シーズンの関東大学サッカーリーグが開幕した。
 
 毎年、多くの選手をプロへ輩出するこのカテゴリーには多くのプロ候補生がいるのだが、一際注目を集める選手がいる。それが、順天堂大の旗手怜央だ。
 
 静岡学園高出身の彼は新入生だった昨年度にレギュラーに定着。夏の全国大会である総理大臣杯では5得点を挙げ、公式ではないが大会得点王となった。旗手は“東京五輪世代”でもあり、3月末に行なわれたU-20ワールドカップに挑むための候補生を集めたドイツ遠征メンバーにも大学生から唯一、選出を果たしている。
 
 余談だがドイツに在住する知人のライターが、そのU-20日本代表の遠征で試合に出ている彼を見て「一番効果的な動きをしていた」と賛辞を送っていた。Jクラブで出場機会を得ている選手が顔を並べるなか、フラットな目線で見た識者からこういう評価が生まれるあたり、彼の能力の高さを物語っている。
 
 そのドイツ遠征後、大学に戻り初の公式戦となったのが冒頭でも触れた関東大学リーグの開幕戦だった。味の素フィールド西が丘で行なわれた明治大との一戦は、いちアマチュアカテゴリの試合にもかかわらず、TVクルーを含む多くのメディアが足を運んでいた。
 
 ほとんどのお目当ては彼だったのではないかと思われる。そんななか、11番を背負った旗手は前半こそ沈黙していたものの、後半に入りカウンターから2つのゴールを奪った。攻撃に転じてギアが上がったチームのスピードを落とすことなく、正確にネットを揺さぶったストライカーの右足を見た観衆は、彼が“別格”の存在であることを確信しただろう。
 
 タメを作り、ボールを失うこと無く前に運び、そして強烈なシュートでゴールを陥れる能力がある。172センチと上背はないものの強靭な肉体を誇り、フィジカルコンタクトで潰されることはほぼない。
 
「(自分は)ドリブルでガツガツ行ったりパスを出したりという、今までの典型的なストライカーではないのかなという思いもあるので。でもやっぱり、一番前でやっている限り得点は決めないとダメなので。ゴールは常に意識しています」と本人は言うが、その言葉通り、万能すぎるストライカーである。もちろんゴールを奪うという絶対的な武器もあるのだが、それだけの選手ではないことは、周りの証言からも垣間見える。
 U-20日本代表の中心選手であり、ドイツ遠征で共にプレーをした川崎フロンターレの三好康児は旗手についてこう語る。
「そんなに慌て過ぎないという感じがある。ゴール前でボールを持った時にもそんなにスピードを上げすぎずにスルスルかわしていく。ゴール前に入っていく形や落ち着きはすごいし、何よりも周りが見えている。FWだと“自分が、自分が“となってパスが出せない奴とかも居る。小川(航基)もそんな感じなんですけど(笑)。怜央は自分が行く時と周りを使う時を上手く使い分けられる」
 
 この日対戦した明治大の右サイドバックは大分U-18時代に二種登録でトップに帯同し、J2で10試合の出場を経験した岩武克弥だった。リーグ戦で“本気”のプロとの対戦経験がある岩武は、「持ち方や点を取る感覚というのは全然(プロでも)通用すると思います」と旗手を評す。
 
 静岡学園高からの先輩である順天堂大の10番・米田隼也に至っては全幅の信頼を寄せている。
「チートですよ(笑)。普通に技術があってオフの動きもうまいんで。止めようがないですね。粘り強く3人くらいでいくしかない」
 
 周囲から賛辞の声がやまないストライカーが目指す先はU-20ワールドカップの本大会出場だ。
「(関東大学サッカーは)プロに比べたら注目度はそんなにないですけど、結果を残せていけば、数字が出るし見てもらえている。結果を残し続けないとそういうところには選ばれないのかなと」
 
 世界の舞台に挑むため、旗手はただひたすら、ゴールを狙い続ける。
 
取材・文:竹中玲央奈(フリーライター)