「Thinkstock」より

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 私はファイナンシャルプランナーとして年間約300件の個人相談を受けている。最も多い相談内容は住宅購入だが、尋ねられることが多い質問のひとつに、「購入するのと賃貸では、どちらが有利ですか?」がある。

 この質問に対する回答は、それぞれに40〜50年間ほどに掛かるコストをシミュレーションして比較し、少ないほうが有利と答えるのが一般的だろう。雑誌やウェブサイトでも、多くのファイナンシャルプランナーや専門家が、シミュレーション結果から購入が有利と結論づけているのを目にする。私も何度もこのシミュレーションをしているが、購入した場合の大きなコストのひとつである住宅ローン金利が非常に低い現在の状況であれば、購入したほうがコスト面で有利になる可能性はかなり高いように思える。

●住宅購入の最大のリスク要因は人口減少

 しかし、コストの比較だけで購入が有利と結論づけることはできない。購入する場合の最大のリスク要因に、人口減少がある。日本の総人口がすでに減少に転じている事実は、多くの人が知っていると思われるが、都市部に住んでいる人にとって人口減少はまだ実感できることではないかもしれない。

 だが、2014年に「日本創成会議」が発表した「全国市区町村別『20〜39歳女性』の将来推計人口」は、都市部でも深刻な人口減少に見舞われる地域が少なくないことを浮き彫りにした。20〜39 歳女性が40 年までに2010年比で50%以上減少する市区町村が896(全体の 49.8%)にのぼると推計し、これらの市区町村は将来的には消滅するおそれが高いとしたのだ。

 こうした市区町村は「消滅可能性都市」として、当時はかなり報道されていたので記憶している人もいるだろう。たとえば、東京23区と横浜市でそれぞれ、20〜39歳女性の40年推計人口(10年比)が最も減少する区としない区を挙げてみよう。

<最も減少する区>

・東京都豊島区 -50.8%
・横浜市金沢区 -40.8%

<最も減少しない区>

・東京都荒川区 -10.2%
・横浜市都筑区 +13.4%
出所:日本創成会議「全国市区町村別『20〜39歳女性』の将来推計人口」(14年)

 人口減少時には、当然、日本全体が均一に減っていくのではなく、二極化が進展する。減少が進む地域ではその減少が加速していき、一方、都心部など減少する地域からの流入がある地域は人口が大きく減らず、その差はますます開いていく。この「日本創成会議」の資料を見ても、地域による格差は鮮明だ。

 しかし、東京都豊島区に住宅を買った人もこれだけで悲観するべきではないし、横浜市都筑区だから安心というわけでもない。区のなかでも、たとえば最寄り駅ごとの違いや最寄り駅からの距離の違いなどでも大きな差が生じるからで、さらに細分化したエリアの違いでも二極化は進行していくと考えるべきだろう。

●住宅を購入した場合の人口減少によるデメリット

 あるエリアの人口が大きく減少すれば、そのエリアの不動産価格も大幅に下落するのが自然である。住宅を購入した場合、人口減少による大きなデメリットは、さまざまな理由で転居をする必要が生じても売却価格が安くなってしまうことで、転居が困難になるリスクがあることだ。

 一生涯、購入した住宅に住み続けるのであれば、不動産価格が下落しても関係ないと考える人もいるだろう。しかし、人口減少によるデメリットとして、そのエリアの利便性が大きく低下する、あるいは住むことが困難な状況になることも考えられる。人口が減少すれば、日常生活に必要な店舗や病院などが撤退していく、最寄り駅からバスを利用するエリアではバスの本数が減る、あるいはバスがなくなってしまうということが起こり得るのだ。東京・横浜でもエリアにより充分起こり得る状況であり、50年100年単位の未来ではなく私たちが老後を迎える数十年先の推計である。

 それでは、リスクを考えると住宅は購入しないほうがよいのだろうか。所有すること自体に情緒的な価値を見いだす人も少なくないのは事実。住宅ローン金利が低く住宅ローン減税が手厚い現在は、購入するのであれば好機と見ることもできる。

 住宅購入を考える人には、こうした情報を提供した上で、人口動向も含めて資産性を維持しやすい物件選びをするアドバイスを行っている。
(文=平野雅章/横浜FP事務所代表、CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士)