その疲労、実は脳が疲れているのかも

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【ゲンキの時間】(TBS系)2017年4月16日放送
脳疲労の3つのサイン&疲れをためないコツ

過ごしやすい春の陽気。しっかりと寝たはずなのに疲れがとれない、出かけるのが億劫...など心当たりのある方は少なくないだろう。

単純に睡眠が足りないだけと甘く考えている人が多いかもしれないが、もしかするとその背景には「脳疲労」という恐ろしい原因が隠れているかもしれない。体の疲労と違って脳の疲れは自覚症状がないから厄介だ。

「疲れ」とは脳の神経組織の炎症

MCの三宅裕司「疲れ、とれていますか?」
MCの渡辺満里奈「とれていません。『今日はよく寝た〜』と言って起きることはほとんどありません」
アシスタントアナの春香クリスティーン「まだ25歳ですが、ここ1〜2年、疲れがとりづらくなりました」

ここぞとばかりに、番組リポーターのお笑い芸人・レッド吉田が言った。

「皆さんお疲れ気味ですが、実は、自分は疲れていない、疲れがとれていると思っている人ほどアブナイそうですよ。疲れてくると、脳から3つのサインが出るのですが、見落としてしまうのです。疲れがたまらない人と、疲れが全然とれない人とどこが違うのか、専門家に聞いてきました」

レッド吉田が訪れたのは「疲労研究」の第一人者、理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センターの片岡洋祐医師だ。レッド吉田が聞いた。

――疲れは、そもそもどこから来るのですか?

片岡医師「体のある部分が傷ついたり、炎症を起こしたりすると、それが『疲労がたまっている』ということになるのです」

――『ある部分』とはどこのことですか?

片岡医師「脳です。疲れの原因は脳が炎症を起こすことなのです」

――『炎症』とはどういうことですか?

片岡医師は図を出して説明した。

片岡医師「仕事のしすぎなどの生活ストレスがたまると、脳の神経組織の一部が傷つきます。それを炎症といいます。すると、脳の神経伝達機能が低下します。自律神経の働きが悪くなり、ストレスがますますたまる悪循環に陥ります。そして、さらに神経組織が傷つき、炎症が大きくなります。それを脳は『疲労』と受け取ります。その段階で、『疲れた〜』と感じるのです。どこかで、そうなる前に癒してあげないと脳の疲労が慢性的症状になってしまいます」
三宅裕司「すごい。わかりやすい!」
片岡医師「慢性的な疲労状態になる前に、脳は3つのサインを出し、『休みなさい』という指令を出すのです」

「俺は疲れない」と豪語する人が一番疲れている

その3つのサインとは何か。それを探るために、レッド吉田は東京都新宿区にあるパルシステム生活協同組合のオフィスを訪れた。パルシステムの協力を得て、オフィスで働く次の4人の仕事ぶりに丸1日密着した。職場にカメラを据え付け、1人ずつ様子を撮影した。全員パソコンを使うデスクワークだ。

Aさん(男性・47歳)=「疲れはたまりません」と自信たっぷりに発言。

Bさん(男性・51歳)=「どちらかというと疲れにくい」と発言。

Cさん(男性・42歳)=「どちらかというと疲れにくい」と発言。

Dさん(女性・32歳)=「どちらかというと疲れにくい」と発言。

そして、1日の仕事の終わりに4人の「疲労度」を測定した。機器は日立システムが自律神経の状態から測る「疲労・ストレス測定システム」を使った。両手の人差し指を穴に入れて測り、0.8〜2.0までなら正常、それ以上数値が上がるにつれ「疲労」の度合いが高まる。検査の結果、何と自信たっぷりだったAさんが7.9で断トツの「お疲れ人間」だった。続いて、Bさん2.2、Cさん2.1、Dさん0.8だ。女性のDさんが一番疲れていなかった。

AさんとDさんの違いはどこからくるのか。ここで、レッド吉田と片岡医師はAさんとDさんの仕事ぶりをカメラ映像でチェックした。まず、Aさん。正午ごろ、疲れが見え、椅子の背もたれにのびをして天井を仰ぐ。

片岡医師「自分では気づいていませんが、脳がこの作業に関して『飽きてきた』というサインを出しています。1つの作業に集中すると、脳の1か所ばかり酷使するので、その部分に活性酸素が発生し、神経組織を傷つけます。筋肉疲労なら痛みを伴いますが、脳疲労は自覚症状がないので、脳はそうなる前に『飽きた』というサインを出します。飽きてくるのは『疲労』の入り口です」
レッド吉田「Aさん、昼ご飯も机で食べています。仕事が好きなんですね」

午後3時ごろ、Aさんは大きなあくびをし、目を何度もこすった。

片岡医師「少し眠気が出てきていますね。『眠くなる』は脳からの2つ目のサインです。パフォーマンスが落ちているから休めという指令です。気分転換をして他の作業をするといいのですが...。ちなみに3つ目のサインは『ミスが増える』です」

一方、女性のDさんの仕事ぶりは――。仕事を始める前、左隣の女性とおしゃべり。右隣の男性が席に戻ると、またおしゃべり。前の席の人から声をかけられると、椅子から立ちあがって話し始めた。

レッド吉田「Dさんは、あまり仕事を一生懸命やってないように見えます」
片岡医師「ハハハハ、これがいいのです。立ったり、座ったり、おしゃべりをしたり。たえず体を動かしメリハリをつけています。うまく気分転換をしながらやっています」

「達成感」の喜びが脳のサインを隠してしまう

自信たっぷりだったAさんは、なぜ疲労度が一番高いのだろうか。番組スタッフは仕事終了後もAさんに密着した。Aさんは寄り道せずに夜8時に帰宅。夜10時過ぎ、トレーニングウエア姿で玄関から出てきた。

Aさん「これから走ってきます。毎日夜に40分ランニングをするのが日課です。一度決めたことはやり続ける性分なので...。毎日の習慣ですから、走らないと気分が悪い」

実はAさんのこの性格が脳疲労の原因だった。仕事中もやり続ける性分を発揮する。昼休みも仕事を続ける、夜もランニングを続ける。そして、決めたことをやり遂げた時に「達成感」の喜びを味わう。この「達成感」こそが危険だと片岡医師は指摘する。

片岡医師「『達成感』の喜びが、実際は疲労がたまっているのに、感じにくい体質を作ってしまいます。物事を達成すると、脳の前頭葉から快感の報酬が出ます。このため、脳の別の部分が出していた疲労の前兆のサインがかき消されてしまいます。これを『マスキング』(マスクで覆い隠す)と呼びます」
三宅裕司「疲れても、もう少し頑張れば乗り越えられるよ、という日本人が大好きな考え方ですね。私の演劇活動なんか全部それですよ」
片岡医師「やりがい、達成感、大きな喜び...。それが良くないのです。『何かを達成した後は、疲れなんか吹き飛んじゃう』といいますが、それはウソです。疲労がある状態なのに、『マスキング』によって感じなくなっているだけ。そのまま放置すると、重篤な慢性疲労になってしまいます。3つのサインを早めにキャッチし、休んだり、気分転換をしたりすることが大切です」