「前職での給料は?」 面接での質問禁じたNY市条例が重要な理由

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「前職での給与は?」――ニューヨークで働く人たちは今後、転職先を探す際の面接でそう質問されることがなくなる。同市では「イコール・ペイ・デイ(同一賃金の日)」翌日の4月5日、その質問を禁じる条例案が可決された。

前職までの給与について尋ねることが問題視されてきたのは、女性の平均賃金が男性に比べて平均20%低いからだ。特に、ヒスパニック系、黒人、アジア系の女性の場合、同じ仕事をする白人男性に比べて大幅に低い賃金しか得られていない。

雇う側はこれまで面接の際、女性のそれまでの給与をベースに採用後の賃金を提示することが多かった。つまり、それまでの「低水準の」給与に基づいて、新たな賃金が決められる可能性があるということだ。そうなれば、女性が男性より少ない賃金で働かなければならない現状は今後も続くことになる。

公平な採用の在り方においては、給与は仕事の内容に応じて決定されるべきだ。それまでどれだけの収入を得ていたかが基準にされるべきではない。新条例は、交渉が苦手、または不慣れな人が新たな職を得る上で、より平等な環境を創出することに役立つだろう。

現在、就職希望者はオンラインの応募フォームに記入する段階で、以前の給与や希望する賃金などを記載するよう求められることが多い。だが、応募者はそれによって、面接を受ける前に自分で既に(無意識ながら)、給与水準をある程度決めてしまっている。過去に得ていた収入を明らかにすることは応募者にとって、特にその特定の職務の一般的な給与水準に満たない賃金で働いている人にとって、不利だといえる。

交渉で最初に提示される数字は「アンカー(いかり)」と呼ばれる基準点だ。交渉において、アンカーは心理的に非常に大きな影響力を持つ。船が海底に下ろすいかりを想像してみてほしい。船はブレーキをかけたように減速し、最終的には停止する。交渉でもアンカーは同じように働き、議論は最初に示された数字に近い方向へと引き戻される。

つまり、賃金を引き上げるためにはアンカーとして高い数字を示す必要があるということだ。転職先を探している人たちからは、過去の給料を伝えなければ選考過程の次の段階に進めないという話を聞く。採用担当者の側からも、同じ話を聞いたことがある。そこで、採用までのプロセスにおいて応募者にとって最も得策だと考えられるのは、賃金については最後に話し合うということだ。

賃金については、応募者がその会社のその仕事に就きたいのだと確信し、企業側もその人を採用する意思を固めたときに協議を行うべきだ。新条例は、こうした状況の実現を容易にするだろう。

ただ、賃金についてこうした話し合いができるのは、募集が行われている仕事の賃金を会社側もあらかじめ提示せず、応募する側に交渉が認められる場合に限られる。社内の全従業員が、全員の給料を知っているという賃金の透明性の確保に関する議論もなされているが、新条例は、募集要項に給与を明記することを求めるものではない。

それでも、新条例は女性の就職希望者にとって、プラスになるといえるだろう。女性は社会的に認められていることであれば、男性よりも交渉に積極的になる傾向があるからだ。