手術を乗り越えコートに戻ってきた伊達公子と対戦相手を務めた日比野菜緒

 伊達公子が1年3カ月ぶりにテニスコートへ帰ってきた――。

 4月12日に「伊予銀行 CHALLENGE MATCH」が、愛媛県総合運動公園テニスコートで開催され、伊達は22歳で日本女子テニス界期待の日比野菜緒(WTAランキング77位、4月10日付け)とエキシビションマッチを行ない、2-6、(2)6-7で試合を終えた。

「とにかくコートに立てて、試合ができたことが何よりです。手術からリハビリ、そして走れるようになって、そしてテニスを始めた。アスリートにとっては長い期間を経た。これから先いろんなことが出てきますけど、このコートでプレーできたことをとても嬉しく思います」

 こう語った伊達にとって、愛媛県・松山市はゆかりのある場所だ。1988年11月に、ITF松山大会(賞金総額1万ドル)で、当時17歳、まだプロ転向(1989 年3月)前の伊達が一般大会で初優勝したのだ。また、2008 年からの現役再チャレンジ後には、伊予銀行テニス部とトレーニングをするために2度訪れている。


 振り返れば、2016 年1月中旬にオーストラリアン(全豪)オープン予選1回戦で敗れた時、すでに亀裂のあった左ひざの半月板をプレー中にさらに悪化させて断裂。伊達が現役時代に一度もしたことがなかった手術を余儀なくされた。

 まず2月16日に、数多くのテニス選手の相談を受けてきた斉藤明義医師による内視鏡手術を受け、左ひざの外側の軟骨がすり減っていることが判明し、浮遊体を除去したものの、半月板の縫合は行なわれずに閉じられた。選手としてカムバックするには、再手術が必要という、伊達にとっては厳しい診断が下された。

 そして、4月21日に神戸大学医学部附属病院で黒田良祐医師による2回目の手術をし、大腿骨、脛骨の両軟骨損傷による骨軟骨移植とマイクロフラクチャー(軟骨を再生させるために細かい切れ目を入れる手術)、半月板の縫合を行なった。

 5月からは、JISS(国立スポーツ科学センター)に移り、1年近いリハビリに努めてきた。

 伊達が全豪予選敗退から松山のコートに立つまで1年3カ月を要したが、復帰できると信じ続けるのにはあまりにも長い期間だったはずだ。正直なところ、再びコートに立てることをずっと信じ続けられたのだろうか。

「当然信じたいという気持ちは持っていましたけど……。ここまで日常生活で痛みなくこられて、テニスもちょこっとできるというレベルでいうならば、普通に考えれば問題はないです。けど、アスリートレベルで考えると、まだまだ足りない部分はあるので、その中で今日やり終えないと、実際、本当にやり切れたという思いは生まれないと思っていた。


 信じたいけど、当然(松山に)来るまで、コートに入る時も当然不安はありました。練習というのは、自分が主導権を持つプレーになってしまう。今日の菜緒ちゃんも気づかってくれている部分はあるんですけど、そういう意味で、より試合に近い緊張感だったり、どっちにボールが飛んでくるかわからないところで、ひざが耐えられるのか試したいというのがあった。『信じられない』というと、ちょっとまた言葉が違うんですけど、信じたい中で、不安は最後まであって、今日を迎えた感じではありました」

 46歳の伊達の公式戦復帰初戦は、ツアー下部のITF岐阜大会(カンガルーカップ国際女子オープンテニス、賞金総額8万ドル、5月1日〜7日)で、本戦のワイルドカード(大会推薦枠)を得てプレーする予定だ。

「公式戦になれば、当然もっと厳しいことが待ち受けていると思うので、その中で必要なことが見えた。今は(ひざの)痛みはないですけど、翌日になってひざがどうなるのか確認しながら、岐阜までのことを考えたい」

 全部のショットの精度を上げることを課題に挙げた伊達だが、特に左足を軸にして打つサーブにおいてパワーもスピードも欠けることが目についた。

「当然岐阜がゴールではないので、岐阜以降のことも考えながら時間を過ごしていきたい。
まだまだだな、ということはすごく感じました」


 現在、伊達のWTAランキングは消滅している。16年全豪予選時の187位をプロテクトランキング(公傷で戦列離脱時のランキング)として使用していくことになるが、これを使用して出場できるグランドスラム予選は2大会。岐阜のようにワイルドカードを使っての出場も限られるため、伊達の復帰への道は前途多難である。

「自分のキャリアとして、やり終えたという思いがまだないので、そのためにもコートに立てるようにするしかなかった。その思いが自分の原動力になっているのかなと思います。それでダメだったらダメだし。そこに行き着くまで、やれることをやってみようという気持ちだけです」

 まずは、伊達がコートに帰って来られたことを喜ぶべきだろう。彼女自身が納得できるテニスキャリアの行き着く先がどんなものなのか見守りたい。

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