殺害された記者数を報じる「Debate」紙

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 メキシコでジャーナリストの職業を選ぶことは死と直面して職務に取り組むことを覚悟せねばならない。特に、それが犯罪に関係したことを取材し報道して行く場合にその危険が一番多く伴う。

 3月に入って既に3人のジャーナリストが殺害された。昨年は<メキシコで11人のジャーナリストが殺害された>。これは<イラクの15人、アフガニスタンの13人に次ぐ3番目>に犠牲者の多い国となっている。この3か国以外に、<イエメン8人、グアテマラ6人、シリア6人、インド5人、パキスタン5人>が続く。

 国際ジャーナリスト連盟(IPJ)によると、これまで世界で殺害されたジャーナリストは<2015年が112人、2016年は93人>となっている。(参照:「Proceso」)

 しかし、メキシコにおける事態はいっそう深刻で、<2000年から2016年までに122人のジャーナリストが殺害された>というのである。特に、フェリペ・カルデロン前大統領が2006年に就任して、麻薬組織カルテルとの全面戦争を開始した同年からジャーナリストが殺害される事件が急増したのである。その中でも、ベラクルス州での殺害が一番多く、2000年から昨年まで<22人のジャーナリストが犠牲者>になっている。同州のカルテルと議員の癒着は顕著で、カルテルと関係していたことが明らかされているハビエル・ドゥアルテ州知事は現在も逃亡中である。(参照:「Debate」)

◆犯罪が減少しない理由

 犯罪が減少しない要因の一つとして挙げられているのが、暴力行為に対する訴えを元に裁判が行われ判決が下される場合が非常に少ないということだ。

 2010年7月から2016年12月までにジャーナリストが被った暴力行為への訴えが798件ほど記録されているが、これまで判決が下されたのは僅かに3件だという。2012年に1件と、2016年に2件だけである。即ち、99.7%の訴えに対して如何なる判決も下されていないということなのである。その798件の訴えの中には47人のジャーナリストの殺害事件も含まれている。

 今年1月に殺害されたジャーナリストのモイセス・サンチェスの犯行容疑者4人が殺人容疑で収監されたが、現在まで公判が行われていないのである。その上、首謀者とされているメデジン市のオマル・クルス前市長に対しては<証拠不十分として保釈される可能性が強い>というのである。

 上述798件の訴えの中で、今の処、<107件の容疑者が裁判を受ける>ことになっているだけである。それは僅かに13%という比率を意味し、<10人の容疑者の中で僅かに一人だけ>が裁判にかけられるという割合となっている。(参照:「Plumas Libres」、「Animal Politico」)

 これまで暴力行為の被害を受けたジャーナリストは全員、地方のメディアで働いていた者であった。冒頭の3人のジャーナリストも同様である。それは犯罪組織にとって地方の方が首都があるメキシコシティー連邦区よりも活動し易いからである。

 3月2日に殺害されたセシリオ・ピネダは郊外の洗車場で待っていた時にオートバイに乗って近づいて来たグループが発砲した銃弾に打たれた。ピネダはゲレロ州の州知事を含め官僚と同州に根を張る犯罪組織ロス・テキレロスの間で密約が交わされていることを暴き批難していた。また、フェースブックのビデオを使って、彼は<州予備警察がロス・テキレロスとそのリーダーハコボ・デ・アルモンテを庇っている>ことを語り、市民がこの犯罪組織の前に立ち上がっていることを伝えていた。彼には<32000人のフォロワー>がいた。紙面はこれを切っ掛けにして州知事の治政を問題視するようになった。同様に、彼は<市民が立ち上がって麻薬組織の家族を人質にしてロス・テキレロスが誘拐している人達を救出するために人的交換をしていること>にも追跡報道していた。