<汚職撲滅委員会の捜査官がテロと思われる襲撃で負傷した。日ごろから身の危険を感じてたという。誰もが襲撃事件の真相解明と汚職の一掃を願っている>

4月11日午前5時過ぎ、インドネシアの首都ジャカルタ北部クラパガディンの静かな住宅街でインドネシア人男性が前から来たバイクに乗った男2人組から液体を顔にかけられた。バイクはそのまま逃走し、近くの住民に助けられ水で顔を洗った男性はそのまま病院に運ばれた。病院での手当の結果、液体は劇薬物で男性の命には別条はないものの顔と目を負傷、現在シンガポールの病院に転院して精密検査と治療を受けている。

これだけなら単なる通り魔による傷害事件として片づけられたところだが、襲撃された男性がインドネシア汚職撲滅委員会(KPK)のノフェル・パスウェダン捜査官と判明するに至り、ノフェル氏を標的にした「テロ事件」として大きく報道される結果となった。

ジョコ・ウィドド大統領も同日「(襲撃事件は)とても残忍な行為で強く非難する」との声明をだし、警察に徹底的な捜査と犯人の早期逮捕を命じた。

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国民から高い評価

KPKは国家警察や検察などから完全に独立した汚職事件を専門に捜査、摘発する機関として2002年に創設法案が制定され2003年に正式発足した。政府高官、ハイレベルの国家公務員、国会議員などが関連する汚職事件の内偵捜査、捜査、起訴、訴追のほかに反汚職の教育、キャンペーン、他の捜査機関との協力、政府の反汚職政策の監視などがその主な役割だ。2004年から2015年までに国会議員57人、閣僚や政府組織トップ23人、中央銀行の頭取1人と幹部7人、州知事18人、地方自治体の市長、副市長46人、大使4人、総領事4人、裁判官や検察官など司法関係者41人、政府機関高官120人などを反汚職法などで摘発、法の裁きを受けさせるという実績を残している。

インドネシアは1998年に崩壊したスハルト長期独裁政権時代には慢性的に汚職がはびこり、殺人事件の裁判結果すら金銭で左右されるとさえいわれた。その後誕生した歴代の民主政権はいずれも「汚職、腐敗、親族主義」からの完全脱却を掲げるが、長年の旧弊はなかなか払拭できないのが現状といえる。

2015年には当時の新任の国家警察長官に指名された人物の汚職疑惑をKPKが指摘した結果、逆に国家警察がKPKの副委員長を汚職容疑で逮捕する事態も発生。2016年2月にはKPKの権力を弱体化する法案が国会で審議されるもジョコ大統領がそれを拒否するなど、その強大なKPKの権力ゆえに国会議員や警察組織との間には深い溝が残されている。公権力からは蛇蝎のごとく嫌悪される存在でありながらもKPKの実績は国民からは高い評価を受けている。

大塚智彦(PanAsiaNews)