視聴率も好調のようで、何かと話題となっている倉本聰・脚本のシルバータイムドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日・月〜金曜12:30〜)。

ネットニュースなどで取り上げられる機会も多く、名前は知っているけれど「お年寄り向けのドラマね」くらいの認識しか持っていない人、そんな考えでいると大火傷をするぞ!

『やすらぎの郷』は、倉本聰がやりたい放題やりまくっており、明らかに今期一番アナーキーなドラマなのだ。


芸能界への未練バリバリの老女優たちが石坂浩二に迫る!


第1週は元・テレビ業界人しか入れない老人ホームの説明だけで終わってしまった『やすらぎの郷』。

第2週は幽霊騒動からスタートし、石坂浩二ハーレム。さらには超高額遺品騒動と色々ありつつも、ストーリー的には相変わらず全然進んでいない。

中でも見どころだったのは、やはり石坂浩二演じる脚本家・菊村栄をめぐっての老女優たちのバチバチのバトルだろう。

発端は、三井路子(五月みどり)の持ち込んだ、女が一生のうちで経験する3つのターニングポイントを描いた舞台の企画。これがいきなりエグイ。

・誰かに処女を捧げるとき
・男にお金で買われるとき
・もう誰からも振り返られなくなって、自分がお金を出して男を買うとき

真っ昼間からなんちゅうことを言わせてるんだとは思うが、確かに面白そうな企画。菊村も心惹かれるものの、もう引退したのだからと、台本を書くのは固辞する。

しかし、この企画を聞きつけた老女優たちが「夢をもう一度」とばかりに、「私のために(台本を)書いてぇ〜」と迫ってくるのだ。

「お嬢」こと白川冴子(浅丘ルリ子)は、三井には色香も演技力もないから主演はムリだと、自分主演で台本を書くように要求。

そして水谷マヤ(加賀まりこ)は、

「お嬢あれ、お化粧でごまかしてるけど、二十歳台の役なんて、悲惨なことになるわよ」

「今はハイビジョンや4Kの画面でテレビの解像度すごく進んだから、シワなんか細かいのまで全部映るじゃない?」

と、自分の方が役にふさわしいと主張する。

週のはじめに、菊村が「やすらぎの郷」のコンシェルジュ・松岡伸子(常盤貴子)に、

「(過去の栄光を)捨てきれずに、まだ花を咲かせたいと思っている人もいるんでしょうか?」

と問うていたが、もう枯れ枯れで老後モードに入っている男性陣に対して、女性陣はいまだ芸能界への未練バリバリの様子だ。

老人ホーム・島耕作


老女優たちが菊村に対し「女優として」だけではなく、「女として」もアプローチしてくるのが、このドラマのエグイところ。

特に、お嬢を演じる浅丘ルリ子と、マヤを演じる加賀まりこは石坂浩二のリアル元嫁&元カノだもんな……。

お嬢には、

「あなた昔、私と仲良くなりかけたことあったわよね」

「(菊村)栄ちゃん、私にラブレター(台本)書こ! 書いたらあの頃の感情が蘇る。そしたら水が湧いてくる」

なんて意味深な事を言わせ、マヤには、

「脱げって言われりゃ今だって脱ぐわよ」

「見てみる?」

と、服を脱ぐジェスチャーをやらせる。

ふたりとも齢70を超え、セリフ回しや滑舌は若干おぼつかないのだが、全身から放たれる妙な色気はバリバリの現役感。

こんな元妻&元カノ+五月みどりからグイグイ迫られる石坂浩二の気持ちよ……。

かつてテレビ業界で活躍した男女の役者たちがひとつの老人ホームで共同生活を送る……という設定から、当初はマロ(ミッキー・カーチス)や大納言(山本圭)も入り乱れての老人ホーム版『テラスハウス』が展開されるのかと思っていたのだが、実際にはミッキー・カーチスや山本圭はほぼモブキャラ扱い。

ネットなどで「老人のギャルゲー」と称されているように、女性陣のベクトルはすべて石坂浩二に向いており、今のところ石坂浩二総受けのハーレム系ギャルゲー的展開を見せているのだ。

───『老人ホーム・島耕作』と言ってもいいか。

今後、石坂浩二が本命を選んでラブストーリー展開に進むのか、亡き妻に操を立てて、とにかく逃げ回り続けるのか。どちらにしても面白くなりそうだ。

今週の倉本聰ぶっ込み


やたらと脚本家の倉本聰や、役者たち自身を投影したと思われる設定が出てくる『やすらぎの郷』。

登場人物も多いので、メインターゲットに設定しているシニア層からすると、完全なフィクションよりも、昔から親しんで来た役者たちのパーソナリティが反映されたキャラクターの方が覚えられるし感情移入しやすい……という意図もあるのかも知れない。

しかし、それにしても、役者自身が絶対に言われたくなさそうな黒歴史をズバズバぶっ込んでくるのが倉本聰の恐ろしいところだ。

4度の結婚を経験し、3度目と4度目の夫は20歳年下という五月みどりに対しては、

大納言「アレ、買ったってこと? お買い物だったのアレ!?」

お嬢「そっち(金で若い男を買った経験)は多分、三井路子さんが言い出したことね」

という恐ろしいセリフをぶつけた。

石坂浩二を含め、私生活での奔放な男性関係から「小悪魔」なんて呼ばれ、シングルマザーとして子どもを出産した加賀まりこには、

菊村「だから男が長続きしなかった……」

そして浅丘ルリ子には、

マヤ「シワなんか細かいのまで全部映るじゃない?」

だ……。確かに浅丘ルリ子、明らかに化粧が濃すぎるんだよね。

もちろん、石坂浩二に対してもキツイぶっ込みがあった。

九条摂子(八千草薫)「テレビの何とか鑑定教室に、先生ゲストで出てらっしゃったじゃない」

……わーっ!

20年以上も出演し続けてきたのに、番組チーフプロデューサーとの確執から、石坂浩二が収録でいくらしゃべっても編集で全カットされてしまい、結果的に降板した『開運!なんでも鑑定団』ネタをぶっ込んでくるとは……。

倉本聰はん、アンタ鬼か!?

ストーリーとしては、いまだどこに向かって行くのかよく分からない『やすらぎの郷』だが、とにかくレジェンド級の役者陣が、本人の人生そのものまでもネタにして、元妻や元カノまで入り乱れ、本気で演技しているのを見ているだけで、ホントに心を掴まれてしまうし、何かスゴイものを見せられている気分になってしまう。

「シルバータイムドラマ」という新しいカテゴリーを生み出したことも含め、色んな意味でドラマの歴史に残りそうな『やすらぎの郷』。

TVerで1週間分は振り返れるし、振り返らなくてもストーリー展開がゆっくりだから、ほとんど問題なく話についていけるので、ドラマ好きだったら今からでも追いついて見るべき!
(イラストと文/北村ヂン)