日本では考えにくい裁判だが(画像は高等法院ウェブサイト)

写真拡大

難病の「ミトコンドリア病」を発症し脳や筋肉に損傷があるため、生命維持装置なしでは生存できないと診断されている8か月の英国の乳児に対し、尊厳死を迎えさせるべきだと治療を担当する医師らが求めていた裁判で、2017年4月11日に英国の上級裁判所である高等法院が「尊厳死を認める」とする判決を下した。AFPやガーディアン紙など海外メディアが伝えた。

両親は米国での治療を希望しており、上訴する予定だという。

治療に意味がなければ尊厳死を認めるべきか

4月11日付のデイリーメールによると、乳児はロンドンにあるグレート・オーモンド・ストリート病院で治療を受けていたチャーリー・ガードちゃん。治療を担当していた医師たちは現在検討できる治療法でチャーリーちゃんの脳の損傷を元に戻すことはできず、生命維持装置につながれたまま意識のない状態で延命を続けることになるため、装置を停止させ延命治療を終了させることを両親に提案していた。

しかし、両親は米国で研究中の治療法を試したいと主張し意見が対立。尊厳死を求める医師側が裁判所に訴え出たという。高等法院は複数の専門家に聞き取りを行い、米国での研究者にも確認を行ったが脳の損傷を元に戻すことはできないとの結論に達し、「医学的な実験には有益かもしれないが、ひとりの人間には何の恩恵もなく死に至る時間を延ばすだけ」と判断。尊厳死を認めるとの判決を下したという。

両親ではなく裁判所がチャーリーちゃんの尊厳死の判断を下すことについては英国内でも議論となっており、判決を下したフランシス・ジャスティス裁判官は「両親は子どもの支配者ではなく常に最善と思える客観的な判断を下すべきだが、それが難しい場合は裁判所が判断する例もある」とコメント。

両親の代理人である弁護士は「少なくとも治療を試したうえで尊厳死の判断をすべきではないのか」と疑問を呈している。

英国では尊厳死を求める医師や医療機関が患者の家族から同意を得られない場合、高等法院に訴え出る例がある。