氷床からドリル掘削機でくり抜いた「氷床コア」には太古の地球の気候に関する情報が詰まっています。カナダ領の北極圏から採取した「2万2000年前の気候情報が秘められた氷床コア」が、保管に利用していた冷凍庫の故障によって溶けて、消え去ったことが明らかになりました。

22,000 years of history evaporates after freezer failure melts Arctic ice cores | Environment | The Guardian

https://www.theguardian.com/environment/2017/apr/16/arctic-ice-cores-melt-university-alberta-canada

北極圏の氷床は、下に行くほど古い時代に降った雪の結晶や気体、粒子などを保存しているため、氷床を調べれば、古代に地球がどのような気候だったのかを推測することができます。そのため、氷床を下向きに掘削機で抜き出した「氷床コア」を分析すれば、太古の地球の気候を知ることが可能。太古から現代に至る、地球の気候変動を調査するために不可欠な情報を与えてくれる氷床コアは、切り出されて運搬されると、研究施設に併設された冷凍庫で保管され、じっくりと分析されることになります。



カナダ・エドモントンのアルバータ大学では、北極圏から掘削した氷床コアが保管されていましたが、冷凍庫の故障によって一部が完全に融解してしまい、貴重な研究資料が失われたとThe Guardianが報じました。

アルバータ大学は、カナダ領の北極圏から全長1400メートル分の氷床コアを採掘し、5カ所の施設に分けて保管していました。この貴重な氷床コアのサンプルは、2017年4月に完成したばかりの建築費400万カナダドル(約3億3000万円)の研究施設に保管されていましたが、保管開始から数日後に1台の冷凍庫から温度警告が出されたとのこと。冷凍庫は急速に温度上昇をはじめ、あっという間に40度に達し、駆けつけた研究員は氷ではなく床にたまった水たまりを発見したそうです。氷河を研究するマーティン・シャープ博士は、「地球上にある、あらゆる氷床コア保管施設において、No.1の悪夢です」と事故について感想を述べています。

しかし、不幸中の幸いは、影響を受けたのは全体の13%にあたる180メートル分の氷床コアだったこと。先日行われたテレビ撮影にあたって「ライティングが悪い」という苦情を受けたため、貯蔵していた氷床コアのうち約90%を別の冷凍庫に移していたことが効を奏して、氷床コア全体を消失することは免れたそうです。

とはいえ、失われた氷床コアの中には、バッフィン島にある「Penny Ice Cap」から採取した2万2000年前のものやローガン山脈から採取した1万6000万年前の氷床コアなどが含まれているため、失ったものは大きいとのこと。シャープ博士は今回の事件によって、予定していた一部の研究がダメになるなど影響が出るとし「興味深い情報を持つ氷を失ったことに失望している」と述べています。アルバート大学では失われたり損傷を受けた氷床コアを取り替えるために再び北極圏に採掘に行くことは費用面で困難なため、残された氷床コアを監視し続け厳重に保護していく予定です。