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<ニューヨーク・メトロポリタン美術館のファッションイベント「メットガラ」の舞台裏を描く『メットガラ ドレスをまとった美術館』のアンドリュー・ロッシ監督に聞く>

毎年5月の第1月曜日に、ニューヨークのメトロポリタン美術館(MET)で開催される「メットガラ」。美術館の服飾部門のための資金集めパーティーで(席料は1人あたり2万5000ドル!)、世界的なデザイナーやモデル、人気俳優など大勢のセレブが集うことで注目を集める。ガラの直後に服飾部門の企画展が始まるのが恒例で、15年は「鏡の中の中国(China: Through the Looking Glass)」展が開催された。

この華やかなガラと「鏡の中の中国」展の舞台裏に迫ったドキュメンタリー映画『メットガラ ドレスをまとった美術館』が4月15日に日本公開された。カメラが追うのは、ガラを主催する米ヴォーグ誌編集長アナ・ウィンターと、展覧会を担当する服飾部門キュレーターのアンドリュー・ボルトンだ。

監督のアンドリュー・ロッシはさまざまなドキュメンタリー作品を手掛けてきた人物。数々の問題を乗り越えながら2人が準備を進めていく姿をとらえ、「ファッションは芸術たり得るか?」という問いへの答えを探っていく。ロッシに話を聞いた。

◇ ◇ ◇


――『メットガラ ドレスをまとった美術館』の製作のきっかけは。

14年にアナ・ウィンターの事務所から連絡があった。僕が作ったニューヨーク・タイムズ紙についてのドキュメンタリー映画『ページ・ワン』をアナが気に入ってくれたようだ。

彼女は何年も前から、メトロポリタン美術館衣装研究所についての映画を作りたいと思っていたという。アナに密着したドキュメンタリー『ファッションが教えてくれること』(09年)は当初、この衣装研究所を描く予定だった。でも美術館の中で撮影することなどが難しく、R・J・カトラー監督は違う方向に転換した。

僕自身はこの話をもらったとき、世界的な宝物であり、素晴らしい文化的機関であるMETの裏側をのぞけることがうれしかった。同時に、「アートとは何か」「ファッションはアートの1つなのか」といった問題をきちんと掘り下げるものを作りたいと思った。

僕はこうした大きな文化機関や、大きなアイデアの裏側に入り込み、それを解き明かしていく作業が好き。服飾部門はMETの中でも既成概念を壊すような存在であることも面白かった。文化機関といえば、アナ自身もそう。『ファッションが教えてくれること』や『プラダを着た悪魔』では、典型的な押しの強い女性エグゼクティブ/編集者として描かれているが、そうした神話を自分なりに説明してみたいとも思った。

【参考記事】『アドバンスト・スタイル』が教えてくれるもの

米ヴォーグ誌編集長アナ・ウィンター(左)とMET服飾部門キュレーターのアンドリュー・ボルトン ©2016 MB Productions, LLC

――アナはニューヨークでいちばん好きな場所はMETと言っている。

アナはMETの理事で、服飾部門には自分の名前を冠したギャラリー(アナ・ウィンター・コスチューム・センター)もあるから、庇護者としての強い思いがあるはず。

ファッションを芸術ととらえ、ファッションが表現できることを追求していきたい、そんな自分と同じ思いを持つ人々が集まれる場所にしたいのだろう。そうしたコミュニティのためにも、自分の役割が大切だと考えている。特に今は、「METで衣装を着たマネキンを見ること」と競合する娯楽がたくさんある時代。だからこそ、自分の役割を真剣に受け止めている。

大橋 希(本誌記者)