【V系】快進撃、挫折…そして武道館へ! “ライブバンド・BugLug”の軌跡を映像作品で振り返る

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2016年5月7日、BugLugのヴォーカルの一聖が頭部負傷で緊急手術を受けたことは、大きくニュースで取り上げられた。奇跡的に一命を取り留めた彼の復帰ライブが、事故から一年後の2017年の5月7日(日)に日本武道館で行われるとアナウンスされたことは、記憶に新しいだろう。

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今回は、BugLugの日本武道館公演に向けて、過去のBugLugのライブを映像作品で振り返ってみたいと思う。ライブバンドという名にふさわしい活動を見せてきた彼らの、今までの軌跡を追ってみよう。

初めてのO-EASTワンマン『GOOD BYE』

BugLugの初めてのライブDVDのタイトルは『BugLug LIVE DVD「GOOD BYE」』。2012年12月のO-EASTワンマンを収録したものだ。私も当時会場にいた一人だが、当日会場にいた誰もが「BugLugはこれからすごいことになるぞ」と思っただろう。少なくとも私はそう思った。

2012年8月、BugLugは1stフルアルバム『G.A.G』を発売した。その年の年末にあったワンマンライブがBugLug ONEMAN LIVE『GOOD BYE』だ。『G.A.G』は現在のBugLugの原点といってもいい曲がたくさん詰まった一枚で、かつて一聖(Vo)がターニングポイントだったと語っていた「絶好悦楽論」も収録されている。

そんな『G.A.G』の曲をメインに、シングルカップリング曲などを多数散りばめ、客席の熱を高めながらライブは進んでいく。開演時から「KAIBUTSU」への流れの期待感、「Mr.アリゲイター」から「Ms.アリゲイター」での客席の振り付け、そしてなんと言っても見どころはラストの「ASOVIVA」の会場とステージの一体感だ。ライブ=遊び場。BugLugとそのファンたちは、彼らの居場所を常にライブの場に求めてきた。

『G.A.G』の世界観をしっかりと表現でき、なおかつ動員的にもクオリティ的にもメンバーが満足したワンマンだったのだろう。このライブの成功を皮切りに、BugLugの攻勢が加速していったように思う。

プレッシャー、挫折、そしてまた立ち上がる

個人的にもすごく印象に残っているライブがある。2014年11月にTOKYO DOME CITY HALLで行われた『寿限夢〜音楽のすゝめ〜』だ(アルバム『HAPPY BIRTHDAY KILL YOU』【初回限定豪華盤】の特典DVDとして収録)。

このライブがなぜ印象に残っているかというと、BugLugというバンドが初めて感じた大きな挫折だっただろうから。

BugLugは、それまで完全な攻勢が続いていた。『文明開化』『HICCHAKA×MECCHAKA』『骨』『JUGEMU』と、作品をリリースするたびに世界観を強める楽曲を次々と発表。ワンマンライブではキャパを順調に上げていき、赤坂BLITZやZepp DiverCityなどの大きな会場も経験した。誰もが「BugLugは上り調子だ」と感じていたことだろう。

しかしTDCHでのワンマン当日、ライブを終えたメンバーたちは問題意識を感じたようだった。

メンバーたちが目指した「会場の隅々まで“希望”というテーマを届けるライブをする」ということ。目指すところを達成できなかったという思いがメンバーの気持ちに引っかかる。実際、当日のライブはプロジェクションマッピングを使った演出や攻めたセットリスト、いつもとは違う会場の雰囲気作りなど、素晴らしいものだったにもかかわらず。

活動5年目を目前にして、周囲からの期待がプレッシャーになっていた部分もあっただろう。ライブを終えた彼らは、ライブバンドとしての方向性を悩んでいるように見えた。

しかし、BugLugというバンドは、決して悩んだままでいることはない。彼らの曲にも歌われているように「何度だって何度だって立ち上がる」のだ。

再び世の中へと立ち向かう決意を固めたBugLugの、2015年からの攻勢が一番表れているのが2ndフルアルバム『HAPPY BIRTHDAY KILL YOU』だ。

5周年イヤーのホールワンマン そして47都道府県ツアー

多様なテーマとシングル曲を網羅した収録曲、初めてチャレンジする曲調、挑戦的なタイトル……。BugLugは5周年イヤーに2ndアルバムとしてリリースしたこの作品を引っ提げて、ツアー『BugLug TOUR 2015「HAPPY BIRTHDAY KILL YOU〜STRAWBERRY 5HOUT CAKE〜」』で全国を回った。

そして、初めての東名阪ホールツアーで全席指定会場のワンマンライブを敢行し、ツアーファイナルでは渋谷公会堂ワンマンを行った。その2015年7月25日のツアーファイナルを収録したのがDVD『BugLug TOUR 2015「HAPPY BIRTHDAY KILL YOU〜STRAWBERRY HALL CAKE〜」』だ。

アルバムの1曲目「Cameraman」をスタートに「TIME MACHINE」で締めくくる、アルバムの世界観をしっかり踏襲したセットリスト。ライブ後半に向かうにつれて盛り上がる会場……そしてアンコールラストの「HICCHAKA×MECCHAKA」の多幸感たるや。会場にいる観客全員がタオルを振り回し、初めてのホールワンマンツアーの成功に対する喜びを共有していた。

そもそも『HAPPY BIRTHDAY KILL YOU』はコンセプチュアルなアルバムで、そのアルバムのテーマをホール会場の全てへ伝えきったBugLugは、前述のワンマン『寿限夢〜音楽のすゝめ〜』での雪辱を果たしてみせた。

さらにBugLugはそこから、イベントライブや対バン、大きなところではさいたまスーパーアリーナでのライブ出演なども経験しつつ、5周年イヤーを駆け抜けていく。

さらに、いくつものライブを重ねて成長してきたBugLugらしく、武者修行とばかりに47都道府県ツアーに挑戦。それが『47都道府県TOUR「GAMBLING JAPAN」ドキュメントムービー「MASTER OF JAPAN」』としてDVDも発売されているツアー『BugLug 5th Anniversary 47都道府県TOUR「GAMBLING JAPAN」』だ。

個人的には、このドキュメントDVDはただのライブを収めた作品ではなく、BugLugのライブへの取り組みが見られる気がしてとても好きだ。47都道府県ツアーを通してBugLugメンバー恒例となった「ラジオ体操」の映像も入っているので、そちらも必見。

最高の野外ライブ『GO TO SICKS』

2015〜2016年にかけて47都道府県ツアーを行ったBugLugは、レーベルのアジアツアーなどで経験値を積みつつ、新たなチャレンジをライブで重ねて次なる高見を目指す。それが、2016年4月9日に行われた日比谷野外大音楽堂のワンマンライブ『GOT TO SICKS』だ。

「5to6」とも読めるタイトルは、5周年から6周年へと移り変わり、次なるBugLugへと移り変わっていくというメッセージが込められていたのだろう。

2014年の『太陽と月が在る限り』以来、BugLugにとっては2度目の日比谷野外大音楽堂ワンマンだったが、正直に言って過去最高のライブだったと思う。これまでの葛藤も、47都道府県で得た自信も、過去のBugLugが培った実力も、ファンへの愛情も、全てがこのワンマンのセットリストに詰まっていたように思う。

このライブは『BugLug LIVE DVD「GO TO SICKS」』としてDVDでも発売されているが、BugLugのファンならずとも必見の一枚だろう。筆者はもちろん、会場で号泣した。

しかし、このライブの約1ヶ月後の2016年5月7日、ヴォーカルの一聖が転落事故によって頭部に負傷を負い、意識不明になったのだ。

ヴォーカル一聖の負傷、そして再起〜武道館へ

頭部負傷で意識不明、そして緊急手術、集中治療室に2週間。誰もがBugLugはこれからどうなるのか不安に思ったに違いない。日比谷野音でのワンマンも大成功に終わり、これから全国ツアーに出ようと思っていた矢先の活動休止……。何よりもメンバーの不安はいかばかりだったか。

しかし、一聖は約2週間の治療の末、2016年5月20日、奇跡的に意識を回復した。もちろん頭部への負傷の影響は拭いきれないまでも、生きていただけでも奇跡的な重傷だったのだ。

事故直前に発売されたシングル『V.S』の中で、一聖が書いていた歌詞にこんなものがある。「生きたいというよりかは まだ死ねないという方が 潔く踏ん張れるんだ」。一聖の意識が回復するまでの間、筆者はずっとその歌詞を思い返していた。

一聖ならきっと帰ってくる。そう一番信じていたのはきっとメンバーで、実際に帰ってきた一聖の“BugLugという居場所”を守るために、BugLugは一聖以外のメンバー4人で活動を再開した。

レーベルのイベント「治外法権VOL.6」を一樹、優、燕、将海の4人で周り、毎年恒例8月9日の「89の日」フリーライブも4人でヴォーカルワークを回しながらやり切った。その代々木公園野外ステージでのフリーライブ「自由〜ASOVIVA〜区域」の様子は、『BugLug LIVE DVD「GO TO SICKS」』にも収録されている。

そんな4人の精力的な活動と並行して、一聖もリハビリを開始したという報がファンのもとにももたらされる。「もしかしたらステージに復帰できるんじゃないか?」そんなファンの期待が高まる中、2017年1月7日のレーベルイベント『治外法権-新春だょ全員集合!!2017-』で一聖は1曲だけステージに復帰し、その場で一聖の復帰ライブとなる日本武道館ワンマン公演が発表されると、会場は大歓声に包まれた。

その際の音源「TIME MACHINE (2017.1.7 TOKYO DOME CITY HALL)」は、4月5日に発売されたBugLug初のベストアルバム『絶唱〜Best of BugLug〜』にも収録されている。

ここまで見てきても、BugLugというバンドの歩む道がいかに波瀾万丈だったかがわかるだろう。

だが、彼らは常にライブの中で生きてきた。ライブで泣き、ライブで笑い、ライブで挫折し、ライブで栄光を掴んできた。彼らの最新の音楽は、常にライブの中に在った。

2017年5月7日、武道館で“今のBugLug”をしっかり見せつけてくれることだろうと信じている。間近に迫ったその日を、映像作品を観ながら楽しみに待つことにしよう。