【柔道】20歳の朝比奈沙羅、悲願の初V 全日本女子柔道選手権

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 8月28日に開幕する世界柔道選手権(ハンガリー・ブダペスト)最終選考会を兼ねた皇后盃全日本女子柔道選手権大会が16日、横浜文化体育館で行われた。

 朝比奈沙羅(東海大学)が田知本愛(ALSOK)との決勝で優勢勝ちして初優勝。田知本は2年ぶり2度目の優勝を狙ったが、あと一歩届かなかった。

 3位は高山莉加(三井住友海上)と緒方亜香里(了徳寺学園職)。リオ五輪78キロ超級銅メダルで、2年連続4度目の優勝を狙った山部佳苗(ミキハウス)は3回戦で高山に指導2で敗れた。

■3度の延長戦を制して初優勝

 決して平たんな道ではなかった。初戦(2回戦)の井上愛美(JR九州)戦からゴールデンスコア(GS)にもつれ込み、6分30秒払腰で一本勝ち。3回戦の前田奈恵子(JR東日本)戦もGSに入り、6分37秒内股で一本勝ちして準々決勝に進出した。

 準々決勝の相手は選抜体重別初戦で対戦して敗れた山本沙羅(ミキハウス)。序盤は両者慎重になり、中盤までに両者指導2を取られた。そこからはお互い積極的に攻め合うもポイントを奪うまでには至らず、3戦連続でGSとなった。

 「視界がかすむくらいつらい試合だった」と振り返る通りの大接戦。しかし、「守りに入らず、攻め抜く」と奮い立たせ、最後は山本が放った大内刈にうまく合わせて「有効」を奪い決着。GS6分45秒、本戦の5分も合計すると11分45秒の熱戦を制した。

 準決勝は3回戦で山部に勝って準決勝まで勝ち進んだ高山。高山は78キロ級で、朝比奈は126キロ。体重差は48キロある。高山も朝比奈の圧力をしのぎながら何とか技を出して攻めたものの、体格差はいかんともしがたく、4分47秒払腰で宙を舞った。

 決勝の田知本戦は東海大学の先輩後輩対決。序盤から積極的に攻め合うものの、中盤からは朝比奈が組み勝つようになる。終盤まではポイントがなく、延長戦になると思われた残り20秒。払巻込で有効を奪って初優勝を果たした。

 これには、全日本女子増地克之監督も「2週間前とは違って、積極的に攻めていた。評価に値する内容だった」とのコメントを残した。

 4戦合計34分39秒戦い抜いた20歳の新女王は、「15歳の初出場時に3位に入った思い出深い大会で優勝できて嬉しい。その後は怪我などもあって連続出場が止まるなど苦しい時期もあったが、これを機に東京五輪で金メダルを取れるように頑張りたい」と力強く語った。

■「これが今の実力」淡々と語る

 昨年準優勝に終わってリオ五輪代表を逃した田知本。15年以来2度目の優勝を目指して出場したが、決勝で後輩の朝比奈に敗れて準優勝に終わった。試合を振り返り、「最後は相手の技をこらえきれなかった。これが今の実力」と語った。

 昨年の大会で左膝に大怪我を負って以降、雌伏の時を過ごした。2月にはグランプリ・デュッセルドルフで復帰して2位。復活を印象づけたものの、選抜は再び左膝を傷めて欠場。

 全日本はあまり調整できないまま迎えた。負傷箇所は万全ではなかったものの、準々決勝までは全て一本勝ち。13年に決勝で戦った緒方戦は、やや浅かったものの大内刈で有効を奪って勝利した。

 ベテランと呼ばれる年齢に差し掛かってきているが、まだ老け込む年齢ではない。これを機に、再びトップ争いに食い込んでもらいたい。

■「重圧に負けた」と語り、下をうつむく

 連覇を狙った昨年優勝の山部は、3回戦で高山と対戦。2回戦の鈴木伊織(環太平洋大学)戦で勝ったものの、試合途中左手人差し指を負傷。負傷の影響で十分に組むことができず、攻めも遅れてしまいGSの末指導を取られて敗戦した。

 それでも負傷を言い訳にせず、「勝ちたいという思いが重圧になり、気持ちが空回りしていた」と語り、「もう一度やり直していきたい」と懸命に前を向いていた。

■「故郷熊本のために」4年ぶりに3位入賞

 緒方は78キロ級ながら、13年には全日本で優勝経験がある。昨年は5位で久々の上位入賞。12年ロンドン五輪の78キロ級代表になったものの2回戦で敗退。昨年のリオ五輪でも代表を目指したものの、決勝で佐藤瑠香(コマツ)に敗れて2位。代表の座を逃した。

 選抜後は一時引退を考えたものの、「被災地となった故郷熊本に明るいニュースを届けたい」と思い直して現役続行を決意。

 この日は全盛期を彷彿とさせる果敢に相手の奥襟をつかむ力強い柔道で、準々決勝までの3試合とも一本勝ち。惜しくも準決勝で田知本に敗れ4年ぶりの優勝はならなかったものの、試合後は「今できることは全部出せた」とうなずき号泣した。

 現在は柔道整復師の資格取得を目標に勉強しているが、今後については「現在のところ未定」として明言しなかった。