ニューヨークの電子たばこスタンドの様子(写真:ロイター/アフロ)

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 政府が進める受動喫煙防止対策で、推進役の厚生労働省が飲食店を含めて原則的に「屋内の全面禁煙」を主張し、それに対して財務省や自民党のたばこ議員連盟が抵抗するなど「喫煙の是非」が大きくクローズアップされている。

 しかし、その一方で議論から置き去りにされているのが、「電子たばこ」の扱いだ。電子たばこは手軽に吸えて健康への影響も少ないとされていることから、愛煙家を中心に急速に普及しつつあり、街角で吸っている人を見かけることも増えた。

 ところが、非喫煙者にとっては、あれが「たばこ」なのか、それとも「たばこを模した何か」なのかが判別できないため、トラブルになるケースも増えている。

 法整備が追いつかない状況のなかで、カフェや公共施設、路上など、関係各所の電子たばこへの対応はどうなっているのだろうか。

●大人気の電子たばこ、電車内で吸引する人も

 ひと口に電子たばこといっても、さまざまな商品がある。まず、その種類を整理しておこう。

 日本における電子たばこ人気の火付け役となったのは、フィリップ モリス ジャパンが2015年から販売している「iQOS(アイコス)」で、いまだに入手が困難なほどの人気商品となっている。

 続いて登場した日本たばこ産業(JT)の「プルーム・テック」、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)の「glo(グロー)」も人気を集め、この3銘柄が三つ巴の戦いを繰り広げているというのが現状だ。これらの電子たばこは、いずれもたばこの葉や成分が入ったスティックを電気で熱し、発生した蒸気を吸引する「加熱式たばこ」と呼ばれる方式を採用している。

 しかし、ややこしいのは、この3銘柄とは別に、「リキッド」と呼ばれる液体を熱して発生した蒸気を吸引する「VAPE(ベイプ)」という電子たばこも各メーカーから発売されていて、こちらは法的に「たばこ」と見なされていないことだ。そのため、専門店だけではなく、一般的な雑貨店などで誰でも入手することができる。

「VAPE」のリキッドには、オーソドックスなたばこ味から、フルーツやコーヒー、ケーキなど多様なフレーバーが存在するが、ニコチンを含有している商品は国内では販売禁止となっている。ただし、個人輸入ならニコチンの入った海外のリキッドを購入可能で、通販サイトなどで簡単に手に入れることができるという。

 もっとも、加熱式の電子たばこにせよVAPEにせよ、基本的には従来の紙巻き式たばこと同じマナーが求められており、禁煙を掲げる場所では使用を控えることが推奨されている。

 ところが、愛好者のなかには、電子たばこは副流煙による害が少ないとされていることや、そもそも「たばこ」という認識を持っていない人も多いため、喫煙禁止の路上や飲食店で吸引するケースが後を絶たないのだ。「電車内で吸引している人を見かけた」という声も少なくない。

●すしざんまいは全店NG、スタバは吸引OKの店舗も

 では、実際のところ、電子たばこの吸引はどこまでOKなのか。ここでは便宜的に、従来のたばこを「紙巻きたばこ」、たばこ成分の入っている大手3社の電子たばこを「加熱式たばこ」、その他の電子たばこを「VAPE」と定義し、各所に問い合わせた。

 まず「加熱式、VAPEともに電子たばこは紙巻きたばこと同じ扱いにしています」と話すのはJR東日本だ。

しかし、「お客様から『紙巻きたばこを吸っている人を注意してほしい』というご意見はよくいただきますが、電子たばこに関しては、今のところあまり届いておりません」(JR東日本)という。

 この話ひとつを聞いても、現在の電子たばこをめぐる混乱がうかがえる。非喫煙者には、電子たばこを吸っている人を見かけても注意していいのかいけないのか、判断がつかない人が多いのだ。

 一方、「ほかのお客様がご不快になるようなことは控えていただいています」と、加熱式たばこ、VAPEともに店内での吸引は禁止していると話すのはコンビニエンスストア大手のセブン-イレブンだ。

 また、ホテル業界の“御三家”のひとつであるホテルニューオータニは「喫煙所以外での電子たばこは全面的に禁止」で客室内も禁止。東宝が運営するシネマコンプレックスのTOHOシネマズも館内の電子たばこの吸引は全面禁止で、寿司チェーンのすしざんまいも全店で禁止しているという。

 意外だったのは、カフェチェーンとして初めて全面禁煙に踏み切り、愛煙家から目の敵にされてきたスターバックス コーヒーの対応である。同社によれば、「電子たばこに関しては店舗ごとに対応が違っていて、なかには吸引可能な店舗もあります。各店舗の判断に任せています」という。ほかの客さえ問題なければ、店内で電子たばこを吸ってもいいというのだ。

●東京23区に聞く、電子たばこなら路上喫煙OK?

 しかし、もっとも意外かつ不可解だったのは、各自治体の「路上喫煙」に関する対応だ。

 基本的に、道路など公共の場所での喫煙については各自治体が条例で定めており、東京都の場合も区市町村ごとに禁煙地域や罰則などの対応が異なっている。そこで、東京23区に電子たばこに関する対応について問い合わせ、一覧にまとめたのが下の表だ。

 ご覧の通り、加熱式たばこ、VAPEともに全面的に禁止にしているのは、渋谷区、品川区、大田区の3区のみ。注意されるかもしれないにしろ、VAPEなら許可される可能性が高いのが、杉並区、荒川区、千代田区、北区の4区。残りの16区に関しては、加熱式たばこですら「規定がない」として禁止されていない。つまり、この16区なら加熱式たばこでもVAPEでも、路上喫煙禁止区域で「歩きたばこ」をしてもOKということだ。

 たとえば、新宿区では区内全域で路上喫煙が禁止されているが、ニコチンを含む水蒸気をまき散らすにもかかわらず、電子たばこならいくら吸っても問題ないことになる。もちろん、今後は条例などが整備されていくと思われるが、これが現在の電子たばこを取り巻く状況なのである。

●電子たばこは危険?粗悪品や爆発事故も

 そして、VAPEに関してはマナーとは別の問題も存在する。VAPEには業界団体はあるものの、製造や販売には関して特に規制がないため、粗悪な製品や改造品も市場に出回っている。実際、VAPE本体の異常な発熱によってやけどを負ったり爆発事故が起きたりする例が報告されているのだ。

 今年の1月には、アメリカ・アイダホ州在住の男性が口にくわえていた電子たばこが爆発し、歯を7本失って大やけどを負う事故も起きている。爆発事故の原因は、バッテリーに使用していたリチウム電池が過充電などによって破裂してしまったものとみられている。

 VAPEの愛好家には、大量の水蒸気が出るようにバッテリーやコイルなどを改造する人も多く、こうした「爆煙タイプ」のVAPEほど、爆発などの危険が増すといわれている。

 急速に市場形成がなされている電子たばこ。政府が受動喫煙防止対策に躍起になる一方で、各自治体の法整備などの対応は遅れる可能性もあるだけに、喫煙者も非喫煙者も知識を身につけて自衛するしかないのが現状のようだ。
(文=ソマリキヨシロウ、鉾木雄哉/清談社)