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エマーソン・フィッティパルディがスーパーカー・メーカーを作るまで

エマーソン・フィッティパルディはスーパーカーを作りたいと熱望していた。そんな彼に協力する人が集結し、このたび実現することとなった。

F1では2度の勝利、またインディの世界でも活躍したエマーソン・フィッティパルディは、あらたな野望に燃えていた。

物腰やわらかな70歳の彼が最初に作ることとなったスーパーカー。22年間レースの世界の最前線で活躍したのち、それを退いてからのことだった。

わたしはずっとスーパーカーを作ることを夢に見ていたし、また人生において、適切な時期、適切な人脈が揃ったと感じて行動に移しました。目標達成できましたね」と彼は穏やかに笑う。

ジュネーブ・モーターショーにてフィッティパルディの夢は着実に現実のものとなっていた。ヴェールを脱いだ「ピニンファリーナ・フィッティパルディEF7」は、2シーターで、4.8ℓ自然吸気V8は600psを発生。

製作はピニンファリーナで、フィッティパルディ・モータースより発売される。名前には自動車業界での旅立ちを願ったブラジリアン・ドリームが込められているそうだ。

フィッティパルディ・モータースは、25台のレース専用EF7を製作する。ただ、彼の周囲の人は未来的な技術や、より可能性を秘めたものを重要視しているのも事実。

プロジェクトはマイアミ(アメリカ)に本社を置く「ダキア・グローバル」という投資を行う会社が、バイオ燃料に興味を持ち始めたことから企画されたものである。

デザインと機関的な面はそれぞれピニンファリーナとドイツのレーシング・チーム、HWAがサポートしている。

「1年ほど前にこのプロジェクトを開始した際、ピニンファリーナへHWAを紹介しに行きました。彼らはお互いを気に入ってくれ、『イタリアのデザインでドイツの技術力をもって作るクルマだなんて最高だ』と言ってくれましたよ」

EF7のデザイン、3つのキー

「EF7のデザインでは、チーフのルカ・ボージョグノとほか2名が3つのポイントに絞ってデザインを進めました」

「まずは『攻撃的なフロントノーズで目を惹く』ということ。そして『低く構えた全体に磨き抜かれたスポイラーやダクトを配置する』ということ。最後に『低マウント化されたV8が載る低くフラットなテール』ですね」

「エマーソンはシャーク・ノーズを望んでいました。そこにわれわれの提案した広めのキャビンを配置することで、すべて満足のいくものとなりました」とボージョグノ。

機関開発にはすごい人も携わった

ハンズ・ワーナー・アウフレヒトという技術者がEF7のエンジン開発などを請け負っていた。といっても、HWAは良く知られたチームではないだろう。

ただ、聞いて驚くことなかれ。

彼はかつてのAMGの創始者でもありメルセデス-AMGのチームを率いてDTMにも参戦していた経歴もある。

そんなHWAの開発責任者はヒューバート・フーグル。全開走行も可能なプロトタイプを今年の8月までには製作するとのことだ。

彼が最初に企画提案を受けたのは2015年の11月。イチから製作し、たった27ヶ月でカーボンファイバーのキャビン、V8、ヒューランド製ギアボックスを採用することなどの条件をクリアするという難しい提案だった。

もちろんスケジュール的に他の仕事もこなさなければならないのでタイトだったが、彼は受けることにした。不可能ではないという自信から。

フーグルが最終的に目標としたのは「車重1000kgでタフ、もちろん実現可能な範囲で」という1点。

フィッティパルディはドライバーの操る楽しさも重視しており、完全なひとり乗りのレースカーというよりもフェラーリ、ポルシェ、ランボルギーニといったGTレースカーをイメージしていたので、それを具現化するかたちだ。

フーグルはまた、「可能な限り軽量化したかった。軽量なのがサーキットではものをいうということを実践で学んできたからね」とも語る。

軽量化に取り組むうえで、フロント、それからリアのサスペンションはフレームにダイレクトに取り付けることとなった。

そうすることで重量がかさむサブ・フレームを排除することができるからだ。

EF7、意外な最大のウリとは?

EF7のポイントとなるのは、日常的にも使える楽しいクルマであるということ。ただ、日常的なクルマではなく、もちろんサーキットに持ち込めば最高に楽しめるクルマでもあるということだ。それだけ浮世離れしている面もある。

EF7は約250km/hで400〜500kgものダウンフォースを生み出すようなデザインがなされている。まぎれもないエアロダイナミクスのおかげで、コーナリングもオン・ザ・レール感覚だ。

フィッティパルディの長年のキャリアのなかで、そういったエアロダイナミクスが、つまりは安全にも繋がるということも開発の軸を成している。

ドライバーを包むキャビンは、当初よりも少しオーバーサイズ。ただしロールオーバーしたときでもクリアランスを稼ぐためにそうしてある。

どのドライバーにも対応できるようにシートはオーダー・メイド。シート・ポジションを任意で最適化する目的もある。

そしてフィッティパルディは目を輝かせながら搭載されるエンジンについて語った。

ドライサンプ化されたV8は、ピーク・パワーを9000rpmにて発生させる。フーグルの描いた図を見ると、それは往年のコスワースDFVスタイルだった。

このエンジンは1972年と74年にフィッティパルディを勝利へ導いたエンジンでもある。フーグルはエンジンを実用的な位置にマウントし、かつギアボックスの空間も確保、20インチのホイールをも収めることだって可能としているそうだ。

このクルマには、開発者それぞれの経験と思いが乗っている。フィッティパルディのショップがなくなってから20年が経過しようとしているが、新たなスタートを切るための役者は既に出揃っていた。