WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 18年――なんと長い年月だろう。セルヒオ・ガルシア(37歳/スペイン)がメジャー初挑戦からタイトルをつかむまでに要した時間である。

 今季メジャー初戦のマスターズは、ジャスティン・ローズ(36歳/イングランド)とのプレーオフを制して、ガルシアが初めて頂点に立った。



マスターズを制し、ついにメジャータイトルを手にしたガルシア
 過ぎ去ってしまえば、あっという間の時間かもしれない。だが、例えば日本中が最も期待している松山英樹(25歳)が、初のメジャー勝利に18年という時間を要するとしたら……あと15年後。そう考えると、18年は本当に気が遠くなるような時間だ。

 今回のマスターズは、メジャーを勝つことがどれほど大変なことか、改めて考えさせられる一戦となった。

――もうメジャーは勝てない、そう思ったことはあるか?

 勝利を飾ったあと、そう聞かれたガルシアはしばしうつむいて、ある一点を見つめていた。そして、「正直言って……ある」と吐露すると、こう語り出した。

「どういうわけだか、メジャーになると僕が自滅するか、誰かが想定外の好プレーをして勝利をさらっていった。そのつど、僕はいいプレーヤーだけど、でもメジャーを勝つには十分なプレーヤーではないんだと思った。

 だけど……、ここ数年はもうメジャーに勝っても勝たなくても、僕は僕で変わらない。相変わらず間抜けな性格だけど、僕の人生はすごくハッピーだ、と思えるようになったんだ」

 肩の力が抜けて、ようやく勝利をつかんだ。彼にとっては、やはりメンタル面の変化こそがメジャー勝利に必要だった、ということなのだろう。

 プロデビューしたガルシアは、すぐに強烈なインパクトを世界中に与えた。1999年、19歳でマスターズのローアマチュアを獲ったあと、プロに転向。8月の全米プロ選手権(2位)では、いきなりタイガー・ウッズと優勝争いを演じたのだ。

 最終日、ゴルフファンにとっては印象深い一打がある。16番でティーショットを曲げると、ボールは木の根元に止まった。打つのは不可能ではないかと思われたが、ガルシアはその難しいライからのショットに果敢にトライ。目をつぶって見事ヒットさせると、ボールの行方を追いかけてフェアウェーを走り出したのだ。

 そのアグレッシブなプレーに多くのファンが魅了された。当時23歳だったウッズの「ライバル誕生」と騒がれ、メジャー勝利に最も近い存在と、誰もが思った。

 しかしながら、ガルシアのゴルフ人生は何かが少しずつ狂い始めていく。

 生来、気が短く、感情を抑えられない性格のため、コース内外でトラブルを引き起こした。ルール裁定が気に入らなかったりして、競技委員と揉めることも頻繁にあった。

 2002年、ニューヨーク郊外のベスページ・ブラックで開催された全米オープンでは、悪天候のもとでのプレーに嫌気がさして、「タイガーがプレーしていたら、中断になったはずだ」と大会主催者を批判。騒々しいニューヨークのファンから、大きな野次を飛ばされたこともあった。

 以来、ツアーの行く先々でブーイングにあって、アメリカでは完全に”ヒール”扱いになってしまった。少年のように輝いていた笑みが消え、苛立ちの表情が目立ったのもこの頃だ。

 そうした中、メジャータイトルを何度も逃した。

 2007年全英オープンでは、3日目まで首位を走りながら、パドレイグ・ハリントン(45歳/アイルランド)とのプレーオフで敗れて2位。2008年の全米プロも、再びハリントンに優勝を奪われ、2位に終わった。

 こうなると、いつしか”メジャー無冠のベストプレーヤー”とまで呼ばれるようになった。しかしそんな皮肉(?)も、今のガルシアには関係なかった。

「無冠でもいい。少なくとも”ベストプレーヤー”と呼ばれているんだからね(笑)。そう、今や(自分は)すべてを受け入れるようになったんだ」

 このメンタリティーこそが、今大会のサンデーバックナインの粘りにつながった。前半では一時3打リードしていたが、ローズの追い上げにあって、11番を終えた時点では、逆に2打差を追いかける立場になっていた。それでも、ガルシアの気持ちは最後まで切れることがなかった。

「今日は、本当に一日中、落ち着いていたんだ」とガルシア。実際、13番パー5ではティーショットを大きく左に曲げてしまったが、以前のように怒りを爆発させることはなかった。ボールはブッシュの中に飛び込んだが、冷静にアンプレアブルの処置をしてパーをセーブした。ガルシアが言う。

「あのパーがなかったら、勝てなかった」

 決着がついたのは、プレーオフ1ホール目だった。18番グリーンで、ガルシアが4mのバーディーパットを決めて勝利を飾った。その瞬間、パトロンからは”セルヒオ!”コールが沸き起こった。

 この声は、ガルシアの苦悩の日々を知っているからこそ、起こったものだ。大人になったガルシアの勝利を、誰もが心から祝福していた。

「少しはアメリカでファンができただろうか(笑)。もう37歳だけど、まだまだ僕の人生にはいいことが起こりそうだ。今まで支えてきてくれた人、ファンに感謝したい」

 最後にそう語ったガルシア。今の彼なら、これからもいいことはいっぱい起こるさ――多くの人々がそう思っているに違いない。

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