バッグには「服以上に」美意識が現れる?

写真拡大 (全2枚)

持ち物にはその人の品格が出る。良いものには理由があるのだー。

ファッションディレクターの森岡 弘とベテラン編集者の小暮昌弘が「紳士淑女が持つべきアイテム」を語る新連載。初回はボッテガ・ヴェネタの”思わせぶりなバッグ”について。

小暮昌弘(以下、小暮):昨今、ビジネススタイルでバッグの存在がいままで以上に重要になっていますが、スーツスタイルに精通する森岡さんはどうお考えですか。

森岡 弘(以下、森岡):バッグって、服を買うように毎シーズン、たくさん買い替えるわけじゃない。だから何を持つかでその人の感度、思い入れ、時には着る人の気分が見て取れますね。

小暮:日本のビジネスマンも昔に比べるとずっとお洒落になった感じがします。

森岡:センスがある男性が増えましたね。スーツに加えて、靴や時計までは整っている人が多い。しかし残念なことにバッグだけがテイストが違うとか、あるいは少し物足らないと感じることも実はよくありますね。

小暮:女性はその日のスタイルに合わせて持つバッグを替えるのですが、男性はまだそこまでやっていない人が多い。

森岡:そうなんですよ。今回選んだのは、イタリアのボッテガ・ヴェネタのダッフルバッグで、パッチワークの素材。ひねりがあって、面白みがある。こういうバッグをさりげなく持てる人って、やはり相当上級者じゃないですか。

小暮:素敵なデザインですね。存在感がある。でも一般的なビジネスマンが持つバッグは、同じレザーでももっとシンプルなデザインを選びますね。ブリーフケースを筆頭にしたデザイン。若いビジネスマンにはトートバッグやリュックタイプも人気ですね。

森岡:ビジネスタイプのバッグはスーツがあるから気にしているけれど、休日のスタイルはどうしても後回し。そんなシーンまで意識が届いているか、それはバッグの選択にとても表れます。男性が着る休日着はシンプルなものを選ぶ人が圧倒的に多い。そんなときにこのバッグを手にすると、着こなしのポイントになると思います。

小暮:休日に若者たちが持つようなバッグを選ぶよりも、グレード感は上がりますね。生き方が出るというか、美意識を感じます。

森岡:カジュアルって、その人の意識があからさまに出るから、こういうバッグをひとつ加えるだけで、洒落て見えます。そういう意味ではバッグはファッション小物ではなく、服と同じ、あるいはそれ以上の価値や存在感があるもの。いまは服と同じ目線で選ぶべきものです。どんな人がこんなバッグを持つのだろうって、想像されたら成功なのでは。このバッグは、人を惹きつけてしまうちょっと”思わせぶり”なバッグですね。

小暮:ボッテガ・ヴェネタのボッテガは「工房」という意味。ヴェネト州の工房が名前の由来です。「イントレチャート」と呼ばれる短冊切りのレザーであるフェットゥーチェを丹念に編み込んだ職人の熟練技を間近で拝見したことがありますが、まさに匠の技。職人やモノづくりに敬意を払うブランドです。だから職人を育てる学校までつくった。

このパッチワークも職人が丁寧につくり、柄も複雑です。”思わせぶり”効果も大きいですが、男性自身がこの技に魅せられることも多いのでは。

森岡:ファッション感度が高いブランドですが、職人技がスタイリッシュに香るブランドでもあります。

小暮:クリエイティブ・ディレクター、トーマス・マイヤーは「ラグジュアリーの概念は何を見せるかではなく、何を隠すかにある」と言っています。さらには「自分のイニシャルだけで十分」と言い、ロゴなど一切入れていない。その潔い哲学にも惹かれますね、男性は。