今季は開幕戦こそピッチに立ったものの、負傷もあり2節以降は出場なし。それでも南の経験はチームにとって大きな財産だ。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 GKという職業は割に合わない商売である。守護神はミスが許されない。どんなにビックセーブを連発しても、敗戦につながる失点を喫してしまえば活躍は水の泡。それが自身のミスに起因するものであればなおさらだ。容赦のないバッシングがサポーターから降り注ぎ、批判の矢面に立たされる。そういう意味で横浜FCの高丘陽平はGK特有の厳しさを味わうことになった。
 
 J2リーグ8節の町田戦で、ゴールマウスに立った高丘は弱冠21歳のGKだ。今季、正GKの南雄太の負傷によって2節からピッチに立ち、好調なチームを最後尾から支えてきた。この試合も前半からまずまずのプレーを披露。56分には決定的なシュートを好セーブで防ぎ、劣勢のチームを鼓舞するパフォーマンスを見せていた。
 
 しかし、0-0で迎えた74分。CB西河翔吾からの何気ないバックパスが高丘を奈落の底に突き落とす。GKにボールを下げる時はセオリーとしてゴールを外した場所に出すが、今回はたまたま枠内に配給された。ただ、周りを見渡しても相手のプレッシャーはない。難なく蹴り返せる状態ではあったが、高丘はゴールエリアで痛恨のトラップミス。自身の足裏を通過したボールはネットに吸い込まれ、結局これが決勝弾となってしまった。
 
 試合後、落ち込みを隠せないまま、サポーターに挨拶を行なった高丘。三浦知良からも頭をポンと叩かれ、気にするなと声を掛けられた。他のチームメイトも言葉を掛け、その励ましはロッカールームに戻ってからも続く。
 
 代わる代わるに仲間たちは愛を持った「イジり」で彼の気を紛らわせようとした。当然、この行動によって高丘の気は多少晴れたかもしれない。しかし、そう簡単にメンタルが回復するわけもなく、身支度を済ませた若き守護神は素早くバスに乗り込んだ。彼が何を想い、何を感じたのか。この経験値が彼の肥やしにならなければ意味はない。つまり、高丘がここからどのように挽回するかが重要なのだ。
 
 そんななか、その光景をベンチから見ていたGKがいる。37歳の南雄太だ。
 南は99年のワールドユース(現・U-20ワールドカップ)で日本の準優勝に貢献し、柏から熊本、そして横浜FCへと籍を移してプロ20年目となる今もなお、第一線で活躍を続ける経験豊富な守護神だ。今季は開幕戦こそピッチに立ったが、その後は負傷の影響でベンチ外。前節の京都戦からようやくベンチ入りし、徐々にコンディションを上げている最中だった。
 
 そんな自身が戦線を離脱していた間にゴールを預かっていた後輩GKに対し、「自分が言えるような立場じゃない」と前置きをした上で、南はこう語った。
 
「これも経験。ミスをするのも良いプレーをするのも。その積み重ねがあって、自分で判断してできるようになっていく。ミスをしない人はいない。僕らは人間だし、機械ではない。でも、(このミスは)自分で乗り越えていくしかない。周りは良い言葉を掛けたりするけど、最後は自分に矢印を向けてどうやって乗り越えていくか。(GKコーチの)田北さんもそれはよく言っているけど、ミスは誰にでもあるから次にどうするか。みんな甘い言葉を掛けたりするから、それで帳消しにするのではなくて、今後どうやって取り組むかが大事」
 
 なぜ、南がそう思うのか。その理由のひとつに、過去に自らが犯した失敗がある。2004年の第1ステージ11節・広島戦で、自身のミスが生んだ衝撃的なオウンゴール。その試合後、様々な葛藤と戦った。
「(ミスをした時は)切り替えるしかなかった。プレーはプレーでしか返せない。何を言われても慰めにしかならない。だからこそ、本当に自分がプレーで返すしかない。そのミスひとつでポジションを失ってしまうこともある。とにかく、GKはやり続けていくしかない」(南)
 
 南はレギュラーを争うライバルでもある高丘に次節が大切であると説く。GKは1つしかない特殊なポジションだ。途中からピッチに立つ機会もフィールドプレーヤーとは異なり、負傷か退場処分を受けない限りはそうそうない。ひとつの大きなミスが自分の出番に直結する厳しさを南は誰よりも分かっている。だからこそ、下部組織出身の生え抜き守護神にひとつのミスの重要性を伝えたいのだ。
 
 高丘にとってこの試合のミスは高い授業料だったかもしれないが、払う価値のある学びの場だった。今後、失敗を挽回する活躍を見せ、仲間たちからの信頼を再び勝ち取れば、雨降って地固まる――となるはずだ。ミスを取り返すためには、プレーで示すしかない。今が伸び盛りの21歳。高丘陽平の真価が問われるのは次節の千葉戦だ。
 
取材・文:松尾祐希(サッカーライター)