働き女子はいつだって優しい癒しを求めている。だから、甘めでゆるめなラブストーリーをCandy BoyとSuits WOMANがプレゼンツ。今回の主人公は仕事に恋に疲れたアラサー、香澄。

厄年真っただ中と言える不運が重なっていたアラサーOLの私、湯本香澄が再就職したのは、女の子なら大好きな甘いお菓子のようなコスメを扱うECショップ「ガトーシュクレ」。「ガトーシュクレ」のブログに名前が登場していた“ちはるさん”と呼ばれている社長を、女性だと思っていたら、なんと若干22歳の大学生の社長、奥村千晴(ちはる)君だった!<エピソード1はこちら> 

千晴社長との出会いは満員電車の中。

地を這っていた仕事運は「ガトーシュクレ」で働くようになってからは、プロジェクトリーダーに選ばれたり、奈落の底だった恋愛運はカリスマシューフィッターの川上さんから素敵なヒールの靴をプレゼントされたり、これまでの不幸のスパイラルが嘘のように、恋に?仕事に絶好調。これってもしかしてアラサーの私にやってきたモテキ?<エピソード2はこちら>

一緒にいると癒されまくりの川上さん。

スーツ姿が素敵な千晴社長が、プレゼン資料をもって私の元にやってきた。「この商品は、香澄さんの女性ならではの感性が光っていますよね。美容効果に日本酒って、インバウンド時代の今こそ良いと思います」

えっ!みんなの前で誉められているの?より一層、仕事も頑張らなくちゃ。千晴社長から、高級酒蔵だけが集まっている日本酒フェアの案内状を渡された。「きっと香澄さんなら、その違いが判ると思うからぜひ行ってみて来て下さい」

会場は都心にある5つ星ホテルのバンケットルーム!煌びやかで高級な場所……こんなところに行けるなんて、それまでのOL生活が嘘みたい。重厚そうな扉を開けようとすると、すらっとした美形の着物姿の男性が扉を開けてくれた。

「どうぞ、お姫様」

着物姿の男性って、一瞬目を奪われる!

少しはだけた着物の胸元から見えるきれいな肌。日本酒って本当に美肌効果があるみたい!この大人の色気がある男性はいったい誰??

「良かったら、こちらを飲んでみませんか?」

「えっ」

優しくエスコートしてくれる姿は、まるで紳士のよう。彼が連れて行ってくれたのは、「パ・ド・ドゥ」という名前がついた酒蔵のブース。彼から渡された名刺には、「パ・ド・ドゥ 14代目酒蔵 社長 杉本南」の文字。この着物姿の男性、社長だったの!

「香澄さんって、名前に香りという文字が入っている。素敵な名前ですね」

「ありがとうございます。この酒蔵は日本酒なのに、フランス語なのですか?」

「もっと女性にも日本酒を飲んでもらいたくて、僕がプロデュースしているブランドはすべてフランス語で名付けているんです」

日本酒なのに、フランス語!もしかしたら、「ガトーシュクレ」の商品のコンセプトにもあうかもしれない。私は、お酒が強いわけではなかったけれど、杉本さんの持っている一升瓶にひかれて、一口頂くことにした。

杉本さんは、お猪口に一升瓶の日本酒を注いでくれた。男性らしい大きな手だけれど、繊細な指の長い手。思わず見とれてしまった。

「地下水から汲み上げた清水を使っているので、飲みやすいですよ」

「本当、フルーティー。これが日本酒なんて!」

「うちは日本酒だけではなくて、ヨーロッパに買い付けに行って、ワインも輸入しているんです。ワインみたいな飲み口の、女性にも飲みやすい日本酒を目指しているんですよ」

「それで、パ・ド・ドゥってフランス語の社名なのですね」

「ええ。パ・ド・ドゥ。男女2人が奏でるダンス。どちらが欠けても味が足りない、っていう意味もあるんですよ」

千晴社長と違って、大人っぽい落ち着いた雰囲気の杉本さん。真剣に日本酒について説明してくれる姿に、うっとりしてしまった。これって、お酒のせい?それとも……?

「私、コスメ関連の会社に勤めていて、今度日本酒の美肌効果を狙った商品を展開しようと思っているんです」

「それならぜひ、うちの店に飲みに来てください。もっと詳しくご説明しますよ」

「お店?」

「昼は、僕がプロデュースをしている日本酒を使った料理や蕎麦が食べられる店で、夜は日本酒専門のバーになるんです」

「えっ!いいですか?」

「ぜひ、香澄さんのような味の違いが判る女性の意見をお聞きしたいです」

大人の色気が漂う社長に誘われて、人生初のおひとり様でバーへ!

次の日、出社すると千晴社長が日本酒フェアの感想を聞いてきた。

「どうでした?参考になるようなものは見つかりましたか?」

「ええ。千晴社長が勧めてくださって良かったです。今度、日本酒バーに研究に行こうと思っています」

「大丈夫?香澄さん、お酒が弱そうだけれど」千晴さんが、耳元で囁いた。

そっと囁いた千晴社長、距離の近さにドキっとしてしまった……!!

「えっ!」

「香澄さんのような白くて繊細な手の持ち主は、アルコールに弱いんですよ」

肌を見ただけで、そんなことまでわかるなんて! 

「心配なので、気を付けてくださいね」

これってどういう意味なのだろう?大切な会社の部下だからだよね?

私は川上さんが選んでくれたヒールを履いて、杉本さんの店へ向かった。看板が外に出ていないような高級な店が立ち並ぶ一角に、ひっそりと和風の小さな店が目に入った。ここが杉本さんのお店!?

扉を開けると、あの日のように着物姿の杉本さんが立っていた。「すいません、失礼します」慌ててしまった私は、ヒールが入り口の引き戸の溝に引っかかり転びそうになった。

「危ない」

慌てて、杉本さんが受け止めてくれた。

「そこは段差があるので気を付けてくださいね、お姫様」

杉本さんだって、社長としたらまだ若いのに、この大人の落ち着きはどうして?

「さあ、コートを預かりますよ」

こんなにエスコートして貰ったのって初めて。本当にお姫様扱いされてるみたい。

私が着ていた上着を脱がせてくれて、椅子を引いて座らせてくれた杉本さん。まるで、映画に出てくる紳士みたい。エスコート慣れしている。

「本当にお姫様になった気分」

「素敵な女性に対して紳士的に振る舞うのは、ワールドスタンダードですよ」

和風な造りの店内はメニューも、何もない。いったい、いくらぐらいする店なのだろう?

「ここって一杯いくらからなんですか?」

「今日は、貴重な意見を僕の方が聞く立場なので、お代は必要ないですよ」

「そんな!」

「いいですよ。香澄さんの感想を教えてください」

元の値段もわからないし、そもそも、ひとりでバーに飲みに来たこと自体初めてなのに大丈夫?イケメン社長の杉本さんに騙されてない?ってか、飲みすぎちゃったらどうしよう…後編につづく。