【ライターコラムfrom清水】新たなブラジル人トリオの生かし方は?

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 1年間のJ2経験を経て今季J1に戻ってきた清水エスパルスは、チームに足りないピースを補うために3人のブラジル人選手を新たに獲得した。DFのカヌとフレイレ、FWのチアゴ・アウベスだ。

 守備のピースとして求めたのは、個としての強さがあってビルドアップもできるセンターバックと、高さと強さのあるボランチだ。小林伸二監督は「DFラインの前でロングボールを跳ね返せるボランチが欲しい」と以前から語っていた。186センチのカヌと187センチのフレイレは、2人ともボランチとセンターバックの両方ができる選手で、空中戦の強さも足下の技術もあり、ニーズに合致している。

 攻撃のピースとしては、個の力で打開でき、決定力もあるストライカー。すなわち大宮アルディージャに移籍した大前元紀の穴を埋めつつ、プラスアルファの力を見せてくれる存在だ。チアゴはスピード、ドリブル、左足の強烈なシュートなどが持ち味で、韓国では44試合で17ゴールを決めた実績もあり、ポテンシャルは十分に備えている。

 ただ、カヌはケガで出遅れ、チアゴは3月中旬に合流したばかりで、2人ともコンディションが整っていない。そのため4月12日のルヴァンカップ第2節・北海道コンサドーレ札幌戦が清水でのデビュー戦となり、公式戦でどれだけやれるのかが試された。

 フレイレは、開幕戦からボランチして先発出場したが、ボールを奪うという面でも攻撃の組み立てという面でも物足りず、野津田岳人にポジションを奪われて出番が遠ざかっている。現時点ではまだ3人とも、期待通りの働きを見せてはいないが、今後に向けて彼らがどう生かされていくのか、どれだけ期待できるのかを、今回は考えてみたい。

 まず札幌戦でフル出場したチアゴとカヌのプレーを振り返ってみよう。

 チアゴに関しては、「スピードや(シュートの)パンチ力は見せたけど、ドリブルは抜けていなかった。周りを生かすこと、周りを使うフリをして自分が生きるといった部分がなくて、自分が自分がになってしまっていた」と小林監督は厳しい評価。個人での突破力が期待されているとはいえ、周りとの連携もできなければ清水のサッカーでは生きないし、「あれだとロングフィールドな国(リーグ)なら良いかもしれないけど、コンパクトな日本のサッカーでは通用しない」と指揮官は指摘する。

 ただ、久しぶりの実戦でチアゴ自身に余裕がなかった面もあり、自分の力をアピールしたいという意識が強すぎた面もある。まだ24歳で「日本でいろいろ学んで、まだまだ成長していける選手」(小林監督)という見方をすれば、楽しみな存在であることは間違いない。あとは本人次第だが、若い選手を育てるのがうまい小林監督の下で、どう変わっていくかというのも楽しみな部分だ。

 先発として使うには守備面に不安もあり、当面リーグ戦では交代出場で流れを変える、試合を決めるといった使われ方になるだろう。そんな中で、チアゴがコンディションを上げて日本のサッカーにも慣れ、徐々に結果を出しながら成長していくという流れができれば、ひとつのサクセスストーリーが生まれるかもしれない。

 ボランチとして出場したカヌに関しては、「ヘディングの強さは見せたし、アンカー的な後ろめの位置で丁寧にボールを散らしながら、自分ができることを確実にやっていた」と小林監督は堅実さを評価する。その一方で「もう少し前に行ったり、ボールを前に入れたり、もう1人のボランチやセンターバックとの関係を構築したりできれば」といった課題を指摘する。

 ただ、ボールを奪いにいくスピードがあり、空中戦の強さはやはり大きな魅力。それはチームとして最大の課題であるセットプレーの守備にも生きるからだ。竹内涼が4月末あたりから復帰予定でボランチのライバルは多いが、カヌは他の選手にない特徴を持っている。コンディションを上げて試合勘や連携を養っていけば、清水に新しい一面を加えられる可能性は十分にある。

 フレイレに関しては、練習ではセンターバックとしてプレーする状況が増えてきた。ポルトガルリーグではセンターバックとして十分な実績を残しており、センターバック陣の中で身長がもっとも高い。あとは日本のサッカーに慣れて本来の力を発揮し、自力でポジションをつかみ取るだけだ。

 3人の獲得が成功なのか失敗なのか、まだ答えは出ていないし、悲観的になる必要もない。現時点でも清水は高い組織力を発揮して、J1でも十分に戦える力を見せている。そこにプラスアルファの力を加えうる存在として彼らを見れば、楽しみな要素のほうが多いと言えるのではないだろうか。

文=前島芳雄