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E350d、疲れにくいのは◯ ただ飛ばすと……?

コンフォート・モード推奨かと思えるメルセデス・ベンツE350dのステア・フィールに対して、直進中のXFのステアリングには、中立の曖昧さなどというものは存在しない。

馬の手綱のように絶えずダイレクトで、冷ややかなまでにバランスの取れたジャガーのシャシーにふさわしいチューニングだ。

いっぽう530dは、Mスポーツ仕様のロー・ダウン・サスペンションと20インチ・ホイールの組み合わせにもかかわらず、ほかより外界からの刺激を遮断し、長距離走行でも高級感や洗練性で見劣りすることはない。

おそらくは、積極的な荷重移動とレーン・チェンジの安心感、上下動の小ささが織りなすハーモニーは、ドライバーの疲労を最低限に抑えてくれる。このクルマの最大の美点だ。

疲れにくいことは、クルマには非常に重要だ。たとえば、無責任な同乗者に「もっと飛ばして!」とせがまれたとき、はたまた、あてもなく遠くへ行きたくなったとき、われわれの場合なら、後先考えずに無謀な長距離試乗へ出発してしまったとき、その恩恵をありがたく知ることになる。

今回もそうしてオフィスを飛び出してきたわけだが、ロケ地はいうなれば「スポーツ+モードのための地」だ。日頃の苦役から逃れられる楽園だといってもいい。

ロッチデールからはダースフィールドに至るこのルートは、気まぐれに曲がりくねった道が丘陵とダムの間を縫う。

ただし、ときとして悪天候に行く手を遮られる。どうせなら、3週間ほど後に来たかった。その頃なら、谷間を10kmも先まで見晴らせただろうに。

E350dは飛ばさないほうがいい いっぽうXFは?

E350dは、水に浸かったカバのようにのんびりとして、下手をすればBMWより500kg近く重いクルマで、このコースでは置き去りにされても仕方ないと思えた。

ところが、実際にはちょっと忘れがたいような走りっぷりで、カーペットのようにソフトな脚回りは、必ずしも重たげに感じられるものではなかった。

エア・サスペンションは横方向のボディ・コントロールを担い、無気力な印象は影を潜める。そこから生まれるフラットさは、ハイテンポで走る能力への信頼を高めてくれるものだ。

グリップ・レベルが思いのほかみごとだったのも、ここに来ての発見だ。残念なのは、欠点というより不可抗力とでも呼ぶべきものだが、常に悠然としていて、活発さを試す術が、メルセデスには備わっていないことである。

よりハードな走行モードを選べば、たしかに眠っていた筋肉を目覚めさせるように力強さは増すが、無味乾燥なステアリングに血が通うことも、シャシーに勢力が漲るような感覚も、いっこうに伝わってこないのだ。

XFはというと、高速道路を淡々と走ることも、Pゼロを路面に押しつけるような走りも難なくこなす。1750kgの重量を、電子制御デバイスで包み隠そうとするようなことはしない。

むしろ、それをうまく利用して、まるで目に見えない軸でも立てているかのように、たとえるならばスピード・スケートのごとくコーナーを駆け抜けていく。

530d、XFを物ともしない

XFのチューニングの最大の成果は、荷重移動の連続を苦もなく行っているように見せることだ。その間もシャシーは、絶え間ない路面不整と戦い続けているにもかかわらずだ。

ここに反応の鋭い魅力的なステアリングが加わって、XFは比類ないクルマとなっている。

とはいうものの、ここピーク・ディストリクトでは、不満も残る。雨は無情にもみぞれに変わり、ジャガーのコーナリング性能をアピールできなくなってしまったのだ。

この舞台で本領を発揮したのが、4WDの530dだ。BMW特有の偉業は、E350dの磨かれたドイツ車らしい信頼感に、XFの走りにフォーカスしたフィルターをかけたような走りを実現していることにある。

XFの心地よくフィーリングに満ちたアジリティに完全には及ばないものの、少なくともこのアダプティブ・ダンパー仕様はE350dを明らかに凌いでおり、極めてクイックなステアリングを通してドライバーに挑んでくる。

「スポーツ」ボタンの効き目もわかりやすい。ボディ・コントロールは落ちるが、エンジンはより力強いセッティングとなり、高速道路では残しておいたマージンを絞り出す。その変化は、パナマ運河の拡張前後くらいハッキリしている。

スロットル・レスポンスもより活発なものとなり、穏やかな走りへ誘っていたクルマが、よりハードでエンジンが回りたがるマシンへ豹変する。

加えて、その熱さを受け止めるのは一方のアクスルだけではない。ターン・インでは、ノーズに力強く自信を漲らせるが、これは駆動方式ゆえだ。

いよいよ順位を決めよう

4WDの530dは穏やかな旋回挙動に留まることはまずないが、それとわかるほどにリア寄りの駆動力配分は、BMWがプッシュするばかりでなく、気迫やバランス、身のこなしも重要視していることを示す、うれしい証拠だといえる。

XFの根底にあるように明らかな遊び心はなく、20インチ・ホイールは舗装のパッチが連続するような状況ではホイール・コントロールの支障になることもあるが、ドライブトレインとMスポーツ・サスペンションは、ライバルたちより速いペースを可能にし、このクルマがこの上ないオール・ラウンダーだと確信させてくれる。

振り返ってみるとその完璧さは、相対的にライバルたちの才能に感動を覚えることを難しくさせている。

E350dは装備が充実し、ロケットのごとく知性に富み、豪華さも実用性も快適性も完全だ。

しかしその確信を、530dは凝りすぎたものに感じさせ、寂れたカントリーロードでは、ちょっとばかり深みが足りないように思わせる。

いっぽうジャガーはクラスで唯一、Dセグメントのそれにしばしば見られるような、しっくり来るドライビングフィールを持つクルマである。

もし、サウス・ペナインのワインディング・ロードがもう少し広ければ、世界でも五指に入るような5ドア・ハッチバックに代わるものになったかもしれない。

しかし、現実世界に「もし」はない。

ピーク・ディストリクトを望む窓から遠く離れてみると、XFは、新型5シリーズを凌ぐ部分は随所にあるものの、総合的には同じ水準にはないと言わざるを得ない。

ルックスや順応性、効率、各部の仕上げや洗練性はジャガーの傑作にも備わっているが、BMWの小粋な力作に並ぶまでには達しなかったのだ。

せめてもの救いは、XFが求めれば最高の走りを与えてくれることと、530dが事前に予想したほど圧倒的なクラスのリーダーではなかったことくらいだろうか。

1位:BMW 530d Mスポーツ

■価格 £49,265(669万円) 
■最高速度 250km/h 
■0-100km/h加速 5.7秒 
■燃費 21.3km/ℓ 
■CO2排出量 138g/km 
■乾燥重量 1715kg 
■エンジン 直列6気筒2993ccディーゼル 
■最高出力 265ps/4000rpm 
■最大トルク 63.2kg-m/2000-2500rpm 
■ギアボックス 8速オートマティック 

2位:ジャガーXF 3.0 TDV6 S

■価格 £49,995(679万円) 
■最高速度 250km/h 
■0-100km/h加速 6.2秒 
■燃費 18.2km/ℓ 
■CO2排出量 144g/km 
■乾燥重量 1750kg 
■エンジン V型6気筒2993ccディーゼル 
■最高出力 300ps/4000rpm 
■最大トルク 71.3kg-m/2000rpm 
■ギアボックス 8速オートマティック 

メルセデス・ベンツE350d AMGライン

■価格 £48,075(653万円) 
■最高速度 250km/h 
■0-100km/h加速 5.9秒 
■燃費 18.2km/ℓ 
■CO2排出量 144g/km 
■乾燥重量 1800kg 
■エンジン V型6気筒2987ccディーゼル 
■最高出力 259ps/3400rpm 
■最大トルク 63.2kg-m/1600-2400rpm 
■ギアボックス 9速オートマティック