NBAプレーオフ2017・ファーストラウンド展望@イースタン編

 ついに開幕した今年のNBAプレーオフ。イースタン・カンファレンスでは戦前予想を覆し、ボストン・セルティックスが昨季の覇者クリーブランド・キャバリアーズを抑えて第1シードを獲得した。波乱の起きそうなファーストラウンド、その見どころは?

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レブロン・ジェームズは因縁の悪童相手に冷静さを保てるかボストン・セルティックス(1位/53勝29敗)
vs.
シカゴ・ブルズ(8位/41勝41敗)

 レギュラーシーズン最終戦で勝利を挙げ、イースタンの第1シードを手に入れた名門セルティックス。今季のチームを牽引しているのは、175cmの小兵アイザイア・トーマス(PG)だ。「史上最小身長の得点王」の栄冠は逃したものの、平均28.9得点という数字は立派。アル・ホーフォード(C)やエイブリー・ブラッドリー(SG)など脇を固める面々も充実しており、カンファレンス・ファイナルまで駆け上がる可能性を十分に秘めている。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 しかし、セルティックスへの思わぬギフトに第8シードのブルズは頬を緩めたのではないだろうか。今季のキャブスは調子が下降気味だとはいえ、世界最高のバスケ選手レブロン・ジェームズ(SF)を擁する以上、キャブスとセルティックス、対戦相手を選べるなら後者を選ぶチームが多いはずだ。


design by Unno Satoru しかもブルズは、単なる第8シードではない。シーズン中、レイジョン・ロンド(PG)はドウェイン・ウェイド(SG)やジミー・バトラー(SF)との不仲を取り沙汰されて先発から外された。さらにチームは低迷を続け、3月中旬にはウェイドが右ひじを骨折。残りシーズン全休と報じられていた。しかし、4月8日のウェイド復帰後は雨降って地固まったのか、チームから不協和音は聞こえてこない。

 彼ら”ビッグ3”が一丸となったのなら、同時にコートに立ったときの破壊力はリーグ屈指。過去10シーズンを振り返ると、ファーストラウンドで第8シードが第1シードを破ったのは実に3度もある。このカード、ブルズが勝ち抜いても不思議ではない。

クリーブランド・キャバリアーズ(2位/51勝31敗)
vs.
インディアナ・ペイサーズ(7位/42勝40敗)

 何かがおかしい――。昨季NBAチャンピオンとなった勢いそのままに、キャブスは今季もレギュラーシーズンのほぼ全期間でイースタンの首位をひた走っていた。

 優勝時の主力メンバーは変わらず、シーズン中の補強にも余念がなく、シューターのカイル・コーバー(SG)、元オールスターガードのデロン・ウィリアムス(PG)、昨年ゴールデンステート・ウォリアーズでプレーしたアンドリュー・ボーガット(C)らを続々と獲得。連覇に向けて視界は良好だった。しかし、ボーガットが移籍初戦の出場わずか58秒で骨折。今季絶望となったのがケチのつき始めか……。

 3月中旬にはケガで離脱していたJ・R・スミス(SG)とケビン・ラブ(PF)が復帰。いよいよエンジン全開かと思われたが、加速どころか大失速してしまう。レブロン・ジェームズ(SF)、カイリー・アービング(PG)というリーグを代表するスター選手を擁しながら、3月以降のキャブスは10勝14敗と負け越し。4連敗という最悪の形でレギュラーシーズンを終えている。結果、セルティックスに第1シードの座を奪われてしまった。

 しかも、キャブスがファーストラウンドで対戦するペイサーズには、レブロンにとって天敵ともいえる「悪童」ランス・スティーブンソン(SG)がいる。2014年のカンファレンス・ファイナルで当時マイアミ・ヒートの一員だったレブロンの耳に、試合中にもかかわらず息を吹きかけた男といえば、覚えている人も多いのではないだろうか。

 スティーブンソンは2014年を最後にペイサーズを離れると、悪童ぶりが敬遠されてチームを転々とし、FAとなっていた。そこへ3月29日、古巣ペイサーズから声がかかる。すると、スティーブンソンはまたもいきなり問題を起こしたのだ。

 4月4日のトロント・ラプターズ戦、ペイサーズ大量リードで試合は残り8秒。勝敗が決したこの状況でリードする側がボールを保持すれば、プレーを止めて試合終了まで時間を使い切るのがアンリトゥンルール(不文律)となっている。しかし、スティーブンソンはノーマークなのをいいことに、平然とレイアップを決めた。このプレーにラプターズの選手たちは大激怒。乱闘寸前の騒ぎとなってしまった。

 しかし、そんな問題児スティーブンソンがチームに合流して以降、ペイサーズは5勝1敗の好成績を残している。敗れた1戦も、キャブスのホームで延長までもつれての惜敗だ。スティーブンソンのエネルギッシュなプレーがチームにパワーを与えているのは間違いなく、スティーブンソン自身もハマればオールスタークラスのパフォーマンスを発揮する。

 だが同時にスティーブンソンという存在は、我の強さからチームを内部から崩壊に導く危険性も秘めた諸刃の剣だ。吉と出るか凶と出るかは未知数だが、不調のキャブス相手ならジャイアントキリングが起きてもおかしくない。

トロント・ラプターズ(3位/51勝31敗)
vs.
ミルウォーキー・バックス(6位/42勝40敗)

 この対戦も、どちらが勝つか予想の難しいカードだ。昨年、カンファレンス・ファイナルまで進出しているラプターズは、2月にサージ・イバカ(PF)を獲得してウィークポイントだった先発インサイドの補強に成功した。

 また、オールスターブレイク後に手首の手術を受け、復帰時期は不明だったカイル・ロウリー(PG)が、4月5日のデトロイト・ピストンズ戦でようやく復帰。いきなり27得点・10アシストのハイパフォーマンスを披露した。チームもレギュラーシーズンを4連勝で終え、上昇気流に乗った状態でプレーオフに突入している。

 一方のバックスは、平均20.1得点と好調だったジャバリ・パーカー(PF)が2月に前十字じん帯断裂で離脱したのが痛い。しかし、同時期にクリス・ミドルトン(SG)がハムストリングの負傷から復帰し、パーカー不在の穴を最小限にとどめることができた。

 何よりもバックスの強みは、リーグ4年目のヤニス・アデトクンボ(SF)の成長が止まらないことだろう。ポイントガードからセンターまでこなす211cmのアデトクンボは、レギュラーシーズンで1832得点(14位)、700リバウンド(15位)、434アシスト(18位)、151ブロックショット(5位)、131スティール(9位)と、主要5部門すべてトップ20入りするというNBA史上初の記録を樹立している。「ミスタートリプルダブル」ことラッセル・ウェストブルック(オクラホマシティ・サンダー/PG)と並び、現在リーグでもっともアンストッパブルな選手のひとりだ。

 昨季、ウォリアーズの開幕連勝記録を24で止めたのがバックス。今季もサンアントニオ・スパーズのホーム連勝記録を9で止めている。大物食いはバックスの十八番だ。このカードも番狂わせの可能性は十分にある。

ワシントン・ウィザーズ(4位/49勝33敗)
vs.
アトランタ・ホークス(5位/43勝39敗)

 ウィザーズの得点源は、ジョン・ウォール(PG)とブラッドリー・ビール(SG)の強力バックコートコンビだ。2月にはブルックリン・ネッツからシューターのボヤン・ボグダノビッチ(SG)を獲得してチーム力を向上させ、3月中旬にはイースタン2位まで順位を上げている。しかしそこで息切れを起こしたのか、終わってみれば第4シードまで後退してしまった。

 一方のホークスは、シーズン中に契約最終年だったシューターのカイル・コーバー(SG)をキャブスにトレード。また、成立しなかったもののエースのポール・ミルサップ(PF)の放出の噂も絶えなかった。どうやら首脳陣は、今季の上位進出よりも再建モードに突入しているようだ。

 今季の直接対決は3勝1敗でウィザーズが優勢。ホークスファンとしては「キラークロスオーバー」で記憶に残るティム・ハーダウェイの息子、平均14.5得点と才能を開花させつつあるティム・ハーダウェイ・ジュニア(SG)の爆発に期待したいところだろう。

 今年のイースタンのファーストラウンドは、例年にも増して下位チームが勝ってもおかしくない組み合わせとなった。果たして、カンファレンス・セミファイナルに進む4チームはどこだ?

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