パナヒ監督の手法を称えた松江哲明と森達也

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 イラン政府への反体制的な活動を理由に、2010年から“20年間の映画監督禁止令”を受けているジャファル・パナヒ監督の最新作「人生タクシー」の公開記念トークイベントが4月15日、東京・新宿武蔵野館で行われ、映画監督の森達也、ドキュメンタリー監督の松江哲明が同作を絶賛した。

 パナヒ監督自身がタクシー運転者に扮し、厳しい情報統制下にあるイラン・テヘランで暮らす人々の人生模様をドキュメンタリータッチで描き出し、第65回ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞した。ダッシュボードに置かれたカメラが、強盗と教師、交通事故にあった夫婦、映画監督志望の学生、政府から停職処分を受けた弁護士といった乗客たちの悲喜をとらえ、イラン社会の核心へ迫っていく。

 森監督はアッバス・キアロスタミ、モフセン・マフマルバフらの名前を挙げ、「実はイランは映画大国。最近、僕らが試みているフェイクドキュメンタリーの手法をずっと以前がやっていて、そこは筋金入り」と語り、パナヒ監督の挑戦を「映画を撮るなと言われれば、そこは逆手にとるんでしょうね」と称賛した。

 ハンディカム1台での撮影や、タクシーの車内から一切出ない演出について、松江監督は「ミニマルな手法そのものが、批評になっている。パナヒ監督が(イラン国内で)置かれている状況も含めて、制約があるからこそ、逆に自由が見えてくる」と分析。この発言に、森監督は「多少の制約や程よいバイアスがあった方が、作り手がそれを乗り越えようとするから、面白いドキュメンタリーが生まれる。例えば中国やミャンマー。それに、これから日本のドキュメンタリーは面白くなりますよ」と予測していた。

 「人生タクシー」は東京・新宿武蔵野館で公開中。全国で順次公開。