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人工衛星といってもいろいろな種類があるが、いずれも何らかの形でアンテナを必要としている。通信衛星はいうに及ばず、偵察衛星でも撮影したデータを送るためにデータ通信機能を使うので、やはりアンテナが必要だ。いや、どんな衛星でも地上の管制局との間で指令やデータをやりとりする必要があるから、やはりアンテナは必要である。

○通信用のアンテナ

衛星通信に使用する電波は周波数が高く、最も低い領域でも極超短波(UHF : Ultra High Frequency, 300MHz〜3GHz)である。高い周波数の電波を使用しないと、電離層を突破できないからだ。

そして、通信衛星として多用される静止衛星は赤道上空3万6000kmという高い軌道に位置するので、高い利得を備えたアンテナを使用しないと、通信が成り立たなくなる可能性が懸念される。単純に送信出力を上げる方法を使用すると、特に衛星の側では電力供給が難しくなるので、力業での解決は避けたいところ。

そのためなのか、衛星通信の地上局ではパラボラ・アンテナを多用している。地上局の場合、衛星という「点」を狙い撃ちする必要があるので、ビームは細く、さらにアンテナを可動式にして衛星の方に指向できるようにしている。

一方、衛星の側はというと、通信相手となる地上局は広い範囲に散在している。だから、受信にしても送信にしても、むやみに指向性が強いと通信できる範囲が限られてしまって好ましくない。もちろんビームは細いのだが、それなりに広い範囲をカバーできるようにしている。複数のアンテナを併用して使い分けるケースもあるようだ。

ただし最近、ボーイング社では通信衛星のアンテナにフェーズド・アレイ・アンテナを導入するための投資を進めているという。アンテナを可動式にするよりも、固定式で電気的に首を振れるアンテナのほうがメリットがある、との考え方には首肯できる。

といったところで、いろいろな軍用通信衛星の画像を拾い集めて比較してみよう。ここで紹介した衛星はいずれも、リフレクタ・アンテナを使用しているようだ。ただし、その形態はさまざまである。言葉であれこれ説明するよりも、画像を見ていただいたほうがわかりやすそうだ。

○測位衛星のアンテナ

測位衛星といえば、米軍のGPS(Global Positioning System)が有名だ。他国の同種システムがおしなべて「○○版GPS」と呼ばれてしまうぐらいだが、その話はともかく。

測位衛星は、地表に向けて電波を送信しながら地球の周囲を周回している。この時、電波が届く範囲はかなり広いが、その範囲内で場所によって電波の強度が大きく変動すると、測位の可否や測位精度に影響する可能性がある。そこで、カバー範囲内・全体に、できるだけ均等に電波が届くような仕掛けが必要になる。

それを実現しているのが、ヘリカル・アレイ・アンテナ。これもずっと同じものを使い続けているわけではなく、衛星の新型化に伴ってアンテナも改良されている。

例えば、GPSブロックIIR衛星で使用していたアンテナは、ヘリカル・アンテナを周囲に8個、中央に4個配置しており、前者と後者で外形が異なる。英語で申し訳ないが、以下のPDFが参考になりそうだ。

参考:The GPS Block IIR/IIR-M Antenna Panel Marquis August 2015 Revised (Lockheed Martin Corp.)

この文書の7ページ目に、GPSブロックIIR衛星の初期型で使用していた従来型アンテナと、GPSブロックIIR衛星の後期型やGPSブロックIIR-M衛星で使用していた改良型アンテナの外見がわかる写真が載っている。また、18ページ目には衛星のカバー範囲を示す図も載っている。

日本の準天頂衛星「みちびき」も同様に、ヘリカル・アレイ・アンテナを使用している。

参考 :「みちびきさんに聞いてみよう」〜みちびきFAQ〜(JAXA)

○リフレクタとヘリカル・アレイの合わせ技?

ちょっと変わったアンテナを装備しているのが、米海軍でUFOの後継として打ち上げたUHF通信衛星・MUOS(Mobile User Objective System)。

普通、リフレクタ・アンテナを使用する衛星というと、衛星本体の側面(地球を向いた側)にアンテナを取り付けているものだが、MUOS衛星は傘を差すようにして、離れた場所にリフレクタを展開している。

そして、そのリフレクタに向けて電波を放射するために衛星本体側に付いているアンテナは、画像を見る限り、ヘリカル・アレイ・アンテナのように見える。

ちなみにこの衛星、多元接続を行う手段として、携帯電話でもおなじみのW-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)を使っているそうである。

(井上孝司)