(左から)映画評論家の松崎健夫氏、倉本美津留

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 「ゼロ・グラビティ」のオスカー監督アルフォンソ・キュアロンと、同作で共同脚本を務めた息子ホナス・キュアロンが再タッグを組んだ「ノー・エスケープ 自由への国境」のトークイベントが4月14日に都内で行われ、お笑いコンビ「ダウンタウン」とのタッグで知られる放送作家・倉本美津留と映画評論家の松崎健夫氏が対談を行った。

 ホナスが監督、アルフォンソが製作を手がけ、第89回アカデミー賞外国語映画賞メキシコ代表に選ばれたサバイバル劇。「天国の口、終りの楽園。」「バベル」のガエル・ガルシア・ベルナル演じる主人公モイセスと15人の移民が、メキシコとアメリカの国境で突如襲撃され、摂氏50度の砂漠で命の危機にさらされる。

 倉本は「1番驚いたのは『早っ!』ということ。ここまで短い88分はない。こんなに時間って短いんだと感じた。(ホナスは)初監督ですし、いろんな要素がないのに短く感じられるのは面白かった証拠。後でじわじわくる」とシンプルな構成ながら見る者をのめり込ませる作品力にうならされた様子。「犬が印象に残った。すげー演技で、あそこまでできますか?」と襲撃者(ジェフリー・ディーン・モーガン)の相棒としてモイセスたちを恐怖に陥れる犬の存在感に圧倒されたと語った。

 松崎氏は「今、壁や国境を描く映画が多い。『メイズ・ランナー』『ダイバージェント』『グレートウォール』『進撃の巨人』『ジュラシック・ワールド』……『Fences(原題)』という映画もありますが、このタイトルを聞いただけで“あのことだ”と思う」と2015年に製作された本作が、ドナルド・トランプ政権を予見したものでありつつ、映画界の潮流をも押さえたものだと指摘。倉本は松崎氏の言葉にうなずき「優れた表現は“予知る”んですよね。同時多発的にまだ起こっていないことを描いてしまう。遠い国の関係ない出来事ではない。(本作を見た)日本人がどう思うかが大事だと思う」と芸術が社会を予見するといい「実は今、絵本を作ってるんです。3年前くらいからなんですが、“壁”がテーマなんですよ」と明かし、松崎氏を驚かせていた。

 倉本は、松本人志の監督作「しんぼる」の撮影でメキシコを訪れたことがあるそうで「思い出して感慨深かったですね。メキシコの日本料理店に行ったんですが、ことごとく間違っていて。山菜うどんを頼んだら、南米の野菜が乗っていて、うどんをめっちゃ短く切ってた。日本の絵を逆さまに飾っていたり、何1つ正解がなかった(笑)」と明かして会場を笑いに包んだ。

 「ノー・エスケープ 自由への国境」は、5月5日から全国公開。