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BMW 5シリーズは疲れ知らず

BMW 5シリーズ。たしかに、販売台数なら3シリーズ、利益率ならX5の方が上だろうが、それでも5シリーズが業界内での立場的にも、高品質なクルマを求める富裕層相手のビジネス面でも、失敗できない重要な車種であることに変わりはない。

コードネームG30こと新型5シリーズ・セダンは、1月にAUTOCARの姉妹誌であるWhat Car? が実施したカー・オブ・ザ・イヤーで大賞を獲得している。

それが正しい評価だったことは、コブハムのM25沿いにあるガソリン・スタンドで落ちあったマット・プライアーを見れば明らかだった。

スペインはカサレスからはるばるこのサリー州まで、2700km以上の長旅だったにもかかわらず、いつもの大きな体に疲れは感じられず、笑顔さえ浮かべていたのだから。

しかし、宇宙を思わせる青いボディに、巨大なホイールを履いたこの530dが、ベストかどうかはわからない。対戦相手は強敵だ。

メルセデス、そしてジャガーから刺客

まずはW213ことメルセデス・ベンツの現行Eクラス。雨雲を思わせるグレーのE350dは、古風なテイストの典型のようでありながら、クラス水準を超えるほど多くの電子制御デバイスを備えたクルマだ。

次は第2世代のジャガーXF。プラム・レッドのこのクルマは、AUTOCARの長期テストのために買ったクルマであり、素朴ながら滋味あふれる甘美な走りが味わえる英国自慢のスポーツ・セダンである。

今回、BMWが用意したxDrive仕様の車両がベストだと断言できるのは、この強力な2台を打ち倒してからでなくはならない。

しかも天候は雨で、たださえ舗装の悪い英国の道路に悪条件が重なっている。そしてこれから向かう400km近い先は、雪の降るヨークシャーだ。

外界の不快さを忘れるには、この素晴らしいインテリアを眺めて現実逃避を決め込むに限る。

インテリアにみる3台の「良し悪し」

£775(11万円)相当の白いナッパ・レザーで覆われた7シリーズ由来のキャビンは、これから悪天候の中を4時間も走る気の重さを和らげてくれた。

広さはあるがだだっ広いというわけではなく、ほかより洗練度に欠けるがハンサムで、計器盤こそデジタルだが、あるべきところはアナログなまま残されている。

ほかの2台と異なり、室温とボリュームはノブをひねって調整でき、おなじみの位置に屹立したレバーで変速できるのだ。

E350dには、£3,895(53万円)のプレミアム・パックが備わり、深みのある光沢と創造的なビジュアルが楽しめる。

しかし、走行モードの選択スイッチが、センター・コンソールのドライバーから遠い側にあるというのも愚の骨頂だ。

一方のジャガーは、すべてをタッチパネルで行う主義に固執している。おかげで、ロータリー式ATセレクターという興味深いギミックを設置するスペースが生まれたわけだが、とっさにおこなうような操作はしづらく、必要なメニューを呼び出すためには十分な学習が求められる。

インテリアからエンジンの話へ

BMWで気になった点を挙げると、まずはステアリング・ホイールのリムが、肥えすぎたフェレットかというほど太いこと。次に、£2,170(30万円)のプレミアム・パックに含まれるヒーター付き電動フロント・シートが、ライバルたちに比べると綿菓子かというほどフワフワなこと。

iDriveと名付けられるおなじみのインフォテインメントはいつもながら直感的で、しかもエアコン操作が別系統となって使いやすさを増した。

またヘッドアップ・ディスプレイは、£1,495(20万円)のテクノロジー・パックを選択しなければならないものの、これ以上ない出来栄えだ。

この530dはオプションが満載され、当然ながら価格も跳ね上がるが、その追加料金を支払わなくても手に入るのが、3.0ℓ直6ツイン・ターボ・ディーゼルだ。

メルセデスとジャガーのV6ディーゼルもそうだが、これは4気筒に対する6気筒の優位性をつくづく実感させてくれるエンジンである。

欧州でもディーゼル人気に翳りが見え始めているが、このユニットの力強さと惜しみない加速感は、流行遅れなどと後ろ指をさされることはないだろう。

むろん、ほか2台のエンジンも負けてはいない。

光るメルセデスとジャガーの完熟っぷり

メルセデス・ベンツE350dのOM642型V6は登場から10年以上が過ぎても現役で、ジャガーのAJD-V6などいまだにかつての親会社であるフォードから供給を受ける古株だが、ベテランらしい熟練度が感じられる。

メルセデスは、800rpmの幅しかないトルクバンドを、9Gトロニックが懸命に探し当てることで、エンジンの古さをカバーしている。

一方のジャガーは、71.3kg-mもの大トルクをZF製8段ATが引き出し、4000rpmでは3台中最強の300psを発揮する。

530dは、カタログ・スペックではXFの後塵を拝し、トランスミッションの段数ではE350dにひとつ足りない。しかし、いずれもその不利を、走っていて体感することはない。

適切なギア比の設定はメルセデス並みに巧みな変速を可能にし、静かなクルージングから滑らかな唸りを上げて加速する一連の流れはジャガー以上だ。

その理由は多岐に渡る。

まず、内製8段ATは、XFのそれよりIQが高そうな変速マナーで、さらにロック・アップを早めに使う傾向がある。

また、このクルマは四輪駆動仕様だ。そして、直6エンジンは昨年導入されたばかりのB57型である。クラス・トップ・レベルの高効率を売りものにしているが、単なるエコ物件ではなく、活気と精密さも大きな魅力なのだ。

E350dには5つの走行モードが用意されているが、結局のところメルセデスは、なるべくコンフォート・モードで走ってほしいと思っているようだ。

マルチ・チャンバーのエア・サスペンションは、緩やかな波長の長い上下動で、轍などを勘案しないような軽快なレスポンスを、スタビリティ志向の電動ステアリング越しに感じることはない。