鹿島アントラーズは現在リーグ戦第6節を終えて4勝2敗の3位。並行して戦っているACLでも今週12日にブリスベン・ロアー(オーストラリア)に敗れたものの、2勝2敗でグループEの2位をキープしている。まずまずのスタートを切ったといえる鹿島ではあるが、小笠原満男は「もっと勝てると思っていた」と渋面を浮かべる。


J1通算500試合出場の記録達成が目前に迫った小笠原満男
「シーズンは始まったばかりですけど、もっとできるポテンシャルがあるチームなんでね。結果についてもだし、内容についてもまだまだですよ。今年は1試合あたり得点が1点とか2点しかない。もっと多くのゴールを決められるようにしないといけないし、ビルドアップやプレスでももっと高いレベルでやれると思っているので」

 昨シーズンは1stステージで優勝し、チャンピオンシップのファイナルで浦和レッズを倒してJリーグ王者になった鹿島は、今シーズンを迎えるにあたり積極的な補強を展開した。とりわけ、センターラインにはFWに昨季はヴィッセル神戸で11得点とリーグトップのアシストを記録したペドロ・ジュニオール、守備的MFに昨季までの4シーズンを新潟で活躍したレオ・シルバ、GKに韓国代表でKリーグ3年連続ベストイレブンのクォン・スンテと、個の能力が高い選手を獲得したことで選手層は厚みを増した。しかし、小笠原の評価は「まだそれだけ」と厳しい。


「戦力的に上積みしているように見えるけど、実際にやっているサッカーはまだ去年のレベルに達してない。能力の高い選手が加わればチームとして強化されるかと言ったら、そうとは限らないのがサッカーなんでね。それを組み合わせて、チームとしてひとつにまとまらないといけないけれど、いまの状況は、選手は揃っているけれどチームにはなっていない。その割には勝っているとも言えるけれど、目指しているのはそこではないから」

 小笠原がもどかしさを覚える理由は、昨シーズン終盤の鹿島がチャンピオンシップ、クラブワールドカップと立て続けに試合が続くなか、メンバーを固定しながらチームとして成熟していき、世界を驚かせるサッカーを実現できたことにもある。

「去年の終盤は連戦、連戦で疲労もあったけど、チームとしてすごく良いサッカーができた。あの内容をベースにして、そこから上積みできて初めて強化と言えると思うんですよ。でも、今年はまだ去年のベースにも達していない。新しい選手が入ってきたことでのズレがまだある。例えばプレッシャーをかけるにしても、1人目が寄せて、2人目がいって、3人目がいく。一人ひとりの一歩や二歩の遅れが、全体になると大きなズレになっている。だから、去年はできていた高い位置でボールを奪う守備にしても、今シーズンは高い位置で奪う回数がまだ少ない。こうしたズレは守備だけではなく、攻撃でもバリエーションは足りないし、ゴールに迫るチャンスの数を増やせるようにしないと。そのためにはコミュニケーションをもっと高める必要があると考えています」
 
 コミュニケーションと言葉にするのは容易いが、チームの根幹を担うセンターラインが新たな外国人選手であることで、言葉の壁もあって意思の疎通はなかなか難しい。しかも、優勝を争うチームにとって、コミュニケーションを深めるための時間は限られている。


「優勝を狙っていなければ時間はあるけど、3敗も4敗もしたら優勝争いから置いていかれてシーズンは終わっちゃうんで。だからこそ、日々の練習を大事にして、細かなことでも気づいたらすぐに話し合う。お互いが何を求めているのかをすり合わせる地道な作業を繰り返して作り上げていくしかない」

 プロになってから小笠原が手にしてきたタイトルは、リーグ優勝6回、天皇杯3回、リーグカップ5回。これほど優勝経験を持つ選手はJリーグには、ほかにはいない。それだけに今シーズンのチームにタイトル獲得への手応えを掴んでいるからこそ、高いレベルでの内容を求めているのだ。

「補強はJリーグとACLの両方を獲りに行くというクラブのメッセージだと思っているし、それを目指せるだけのメンバーがいる。どんな内容でも勝ち点を稼ぐことは重要だけど、内容がともなっていないまま放っておいたら、今後は積み重ねることができなくなるので」

 JリーグとACLの両タイトルを追い求めるには、5月上旬まで週末はJリーグ、週半ばにはACLのグループステージを戦う。しかも海外への移動もある。37歳の小笠原でなくても、肉体的なタフさを求められることになるが、小笠原は「大歓迎!」と言い切る。


「ヨーロッパのクラブはリーグ戦とチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグを戦い、そのうえでカップ戦や代表戦もある。トップレベルの選手になれば、週にほぼ2試合やるのが当たり前。その環境でパフォーマンスを維持して、ポジションを取り続けるタフさがないと、世界では戦えないということ。日本サッカーが本気で世界トップレベルに追いつこうとするなら、個人的には週1試合というスケジュールはどうかなという思いがある。だから、ACLとリーグ戦は両方ともフル出場したいですよね。チーム方針もあってなかなかフル出場はできないけれど、いつでも行ける準備はできていますよ」

 小笠原は16日の試合に出場すると、J1通算500試合出場という節目を迎える。個人記録には興味をあまり示さないが、37歳になったいまもタフな戦いを欲している。それには心強いサポートがあることも大きい。契約するニューバランス社のスパイクが、その理由だと打ち明ける。

「スパイクは裸足に近い感覚が一番いいと思っているんだけど、いまのスパイクはそれを実現してくれている。疲労が残らないから、週2試合は余裕ですよ」

 さらに小笠原は続ける。

「疲労の心配をされるけど、サッカーは走り回ればいいというほど単純なものじゃない。効果的にサッカーをする方法はいくらでもある。たとえば、守備をするにしても、相手を追いかけ回して潰すだけではなく、パスが通されたら危険なスペースに立って消すという守備のやり方もある。経験を積むことで手にした賢いやり方があるんで、試合があれば何試合でも出られますよ」


 1998年のプロ入りから、毎シーズン1得点以上は記録してきた小笠原は、昨年初めてゴールを記録しないままシーズンを終えた。20年目のシーズンをタイトル獲得の大きな目標に向かってチームを牽引する小笠原に、最後にゴールへの意欲を訊いた。

「そりゃあ攻撃したいですよ。声を大にして言わないだけで。前に行きたがるタイプの選手が多いので攻守のバランスを見ていますけど、チャンスがあればゴールは決めたい。だから、今シーズンはチャンスがあれば、フリーキックは蹴ろうと思っていますよ。永木亮太や遠藤康など上手い選手が揃っているので、全部が全部というわけにはいかないけど、調子を見ながら、”ここぞ”という試合の重要な場面で決めたい。ただ、ゴールにしろ、チームをまとめるにしろ、すべては試合に勝って優勝するためにやることなので。そこを徹底して求めていきますよ」

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