金正恩氏

写真拡大

朝鮮半島を巡る軍事的緊張が高まる中、中国や韓国のネット上で、様々な怪情報が拡散している。

韓国の聯合ニュースによると、中国東北地方を中心に、「緊急通知:中朝間でまもなく戦争が起きる可能性あり、人民解放軍北部戦区医療部隊が、国境を超えてやって来た難民の救護にあたるため中朝国境に集結している」とのウワサが、中国版ツイッターの微博(ウェイボー)を通じて拡散している。

しかし、これは中朝国境地帯の現状について少しでも情報を持っている向きには、一見してデマであるとわかるものだ。中国政府は、北朝鮮当局に協力し、本国でひどい虐待に遭うのを承知で脱北者を強制送還している。

つまりは北朝鮮の人権侵害に間接的に加担しているわけで、それがここへ来て、「難民救護」を最優先するとはちょっと考えられないからだ。

さらにデイリーNKジャパンが調べたところ、14日午後の時点で、ここから医療部隊や難民という部分が抜け落ち、「軍の兵力、中朝国境に15万人増派」となっているデマツイートが散見された。

金正恩氏のヘンな写真も

中国政府は、デマの打ち消しに乗り出している。

中国国防省新聞局は、「朝鮮で発生した緊急事態に対応するために、15万人の兵力を中朝国境に増派したと外信が報じているが、確認してほしい」という記者からの問いに「このような報道は全くの捏造だ」と回答したと微博に投稿した。

また、外務省の華春瑩報道官も10日、「このような報道について了解していない。以前に聯合ニュースが似たようなことを報じたことがあったが、すべて間違いだと判明した。今回の報道も出処はわからない」などと述べ、デマであることを強調した。

一方、韓国でも「4月27日に米軍が北朝鮮を空爆する」というデマがSNSを中心に拡散し、韓国政府が打ち消しに追われる事態となった。このデマは、日本のニュースブログサイトの「煽り記事」が元になっていると、韓国のJTBCが報じている。

このブログの管理者は、JTBCのTwitterでの質問に「日本のほとんどのテレビがそういう論調で連日報道している。4月27日としたのは、この日が新月で、米軍が湾岸戦争で攻撃を開始した日だから」と述べた上で、「日本のメディアに直接取材してください。これ以上対処できません」としている。

その後、韓国の極右サイトが、このブログの内容を一部改変した上で、拡散させたとJTBCは結論づけている。さらに、前述の「兵力15万が中朝国境に集結」についても、このサイトの関連を指摘している。

いずれにしても、このようなデマの拡散は、結果的に金正恩体制を利する可能性をはらんでいる。韓国の世論は対決よりも情勢の安定を求める風潮が強くなる傾向を見せており、軍事危機の高まりはむしろ、来月の大統領選で北朝鮮との対話派を有利にするかもしれないからだ。

忘れてならないのは、独裁者である金正恩党委員長は自国メディアの論調を工夫することで、こうした心理戦を積極的に仕掛けることが出来るということだ。現に、正恩氏は北朝鮮メディアの報道内容について直接、指示を下している可能性が高い。そうでなければ、北朝鮮メディアが正恩氏のヘンな写真を次々に公開することなどできないだろう。

(参考記事:金正恩氏が自分の“ヘンな写真”をせっせと公開するのはナゼなのか

独裁国家は、民主主義国家とはまったく違う感覚と方法で攻勢をかけてくるものだ。また民主主義は、正確な情報と冷静かつ公正な議論に基づいてこそ機能する。我々はそのことを肝に銘じて置かねばならない。