東芝の綱川智社長(長田洋平/アフロ)

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「東芝の再生の道筋が見えない」(メガバンクの担当者)――。

 東芝は4月11日、監査法人の適正意見を得られないまま2016年4-12月期決算を発表した。その最終損益は5325億円の赤字(前年同期は4794億円の赤字)となり、2256億円の債務超過に陥っている姿が露わになった。

 メガバンク担当者からは、「東芝への支援を続ける姿勢に変わりはない。しかし、再生の道筋が見えなければ、融資にも限界がある。もしも、資本参加などしようものなら、株主代表訴訟を起こされるリスクがある」と腰の引けた声も聞かれる。

 問題はいくつかある。今回の決算では、監査法人であるPwCあらた監査法人の適正意見を得られなかった。PwCあらたは、世界的な監査法人であるプライスウォーターハウスクーパース(PwC)のメンバーファームだ。東芝がそれまでの新日本有限責任監査法人からPwCあらたに変更したのは、東芝の粉飾決算問題が発覚してから。新日本では、この東芝事件の責任を取って当時の英(はなぶさ)公一理事長が引責辞任をした。

 実はPwCあらたも“脛に傷”を持っている。あらたの前身は旧中央青山監査法人で、これは00年に旧中央監査法人と旧青山監査法人が合併して発足した。この合併の契機になったのが、旧中央が担当していた、山一證券や足利銀行、ヤオハンといったバブル当時の損失を粉飾決算していた企業の監査だった。旧中央は単独での経営が難しくなり、旧青山との合併に追い込まれた。

 その旧中央青山も、05年に「カネボウの粉飾決算事件」を引き起こす。当時のカネボウ担当の公認会計士が、同社に対して粉飾を指南していた。さらに、翌06年には当時のライブドアマーケティングの粉飾決算時に監査を担当。度重なる問題を受け、金融庁は旧中央青山に対して2カ月の監査業務停止処分を出した。

 このとき、旧中央青山はPwCのメンバーファームだったが、旧中央青山の監査業務停止処分を契機に、そのPwCが旧中央青山の監査先企業の受入先として設立したのが、現在のPwCあらたなのだ。つまり、PwCあらたは粉飾決算事件の後始末のようなかたちで誕生した監査法人だ。

●カギ握る政府の姿勢

「今回の東芝問題で、“火中の栗を拾う”かたちで監査法人を引き受けたPwCあらたにとって、絶対に監査上の問題が発生することは許されない」(監査法人幹部)

 その上、ロンドンとニューヨークを中核とするPwCにとって、東芝問題の根源は米原発子会社ウエスチングハウス(WH/3月29日に米連邦破産法11条の適用申請)だ。当然のことながら、米国サイドの思惑が絡み合ってくる。

 今回の16年第3四半期報告書では、PwCあらたが監査意見を不表明とした理由について「実施した調査の評価を継続中」「評価が終了していない調査事項がある」という説明がそこかしこに見られた。

「PwCあらたでは、監査は終了しないのではないか。東芝とPwCが折り合いを付けるのは難しいだろう。監査法人を変更して、再度一から監査をし直すのもひとつの方法ではないか」(メガバンク担当者)

 メガバンクが東芝の問題について懸念を持っているのが、政府の姿勢だ。

「これまで日本を代表するような企業の経営危機には、必ず政府が介入してきた。ダイエーの経営危機の時には、ほとんど首相官邸主導で再建策がつくられたといってもいい。しかし、東芝問題ではほとんど政府の介入はない」(同)

 政府の介入は、経営危機にある企業を支援することに対する“お墨付き”のようなもの。東芝の再生に政府も本気で取り組まないと、「民間だけではリスクを取りきれなくなり、支援を投げ出す可能性すらある」(同)。

 果たして、東芝に再生の道は残されているのか。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)