NHK『ニュースウオッチ9』より

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●NHK『ニュースウオッチ9』に自民・有村治子議員、岸信夫副外相が......

 昨日の参院内閣委員会で、安倍政権がまたも常軌を逸した極右ぶりを見せつけた。自民党の有村治子議員がNHKのニュース番組の一場面を取り上げ、「中国国旗が日の丸の上に配置されていた!」と激憤。岸信夫外務副大臣も同調するように「ありえないこと」と述べたのだ。

 まずは有村議員の質問を振り返ろう。有村議員はまず最初に「国旗を扱うマナーとして、複数の独立国家の国旗を上下に掲揚・位置させることはあるか」と質問し、答弁に立った岸外務副大臣は「外交儀礼上、適切ではなくあってはならないこと」と回答。さらに有村議員は「上下に掲揚・表示すると何を意味するか」と尋ねると、岸外務副大臣は「下に掲揚された国旗は下位、服従、あるいは敵への降参等と受け止められる」とした。

 すると有村議員は1本のポールに、上に中国旗、下に日の丸が掲げられた絵を取り出し、「国際マナーに照らし合わせると、これは適切か」と質問し、岸外務副大臣は「国際儀礼上、適切ではない」と回答。有村議員は岸外務副大臣の回答を繰り返すように「国際儀礼のマナーからすると、独立国の国旗を下に位置させることは隷属、属国、服従を意味する大変失礼なマナー違反にあたる」と言い、本題を切り出したのだ。

「この絵は、じつは先週の全国で放送されましたNHK『ニュースウオッチ9』での一コマをもとにした図案です」

 そうして有村議員は、今月3日放送の『ニュースウオッチ9』の画面を撮影した画像を掲げたのだ。

 その画像にはたしかに中国の五星紅旗と日の丸が映っているが、しかし、別にそれは1本のポールに掲揚されたものでも、壁面に配置されたものでもない。ただ上下に区切って国旗の映像をレイアウトしたものに過ぎず、実際、国旗は全体を映しているわけではなく見切れている。

●実際の放送内容は、中国の脅威を煽り自衛隊を喧伝する、ただの安倍政権PR

 本サイトは同番組を確認したが、この画像は「スクランブル過去最多 強まる中国の"脅威"」と題した特集内で登場したもの。特集では昨年のスクランブル回数が過去最多を記録、なかでも中国機が約7割を占めると指摘。これは2013年から中国と日本の防空識別圏が被っていることが原因なのだが、それはさておき、有村議員が槍玉にあげた画像は、昨年12月に中国が自衛隊機によるスクランブル発進において近距離で妨害を受けたと発表したことに対して日本政府が事実と異なると抗議した、と紹介する場面で使われていた。上部に五星紅旗、下部に日の丸が風ではためく映像が配置されており、双方の国旗の上には中国機と日本の自衛隊機の絵が被せられている。
 
 経緯の真相は置いておくとして、番組としては「中国機に対して自衛隊機がスクランブル発進した」という説明を行うために"先行する中国機とそれを追いかける自衛隊機"の絵を用意したと思われる。そして、双方政府の言い分が対立していることから、その絵の下に国旗を配置したのだろう。

 ようするに、これは視聴者に状況を説明するためにデザインされた画像でしかなく、「国際儀礼のマナー」に含まれるようなものではまったくないのだ。

 そもそも、国旗の掲揚の仕方などを記載している外務省HPの「国際儀礼のマナー」にも〈外国からのお客様を迎える際など,自国の旗と外国旗のどちらをどこに掲げればよいかが問題となります。そのため,国旗の掲揚についてもプロトコールが存在します〉と書かれているように、国旗の上下などのルールは海外から要人を招く際などのものだ。報道において国旗の並べ方を取り決めたものでは決してないのである。

 にもかかわらず、有村議員はあたかも国際ルール違反とばかりに非難し、国会でこうわめき倒したのだ。

「まさにこの映像のような状況にならないよう、すなわち外国の属国とならず、日本の主権と国民の命を守るためにこそ自衛官は心身の危険や負荷を顧みず、日夜、過酷な訓練を重ねて練度を上げているのでは」
「日本にまったく非がないという文脈において、中国の戦闘機が日本に向かって猛スピードでくる。それを日本の自衛隊が日本の領空を守るために、主権を守るためにやっていることで、まったく非のない日本がなぜ海外の国旗の下に置かれなきゃいけないのか」
「この写真はまさに主権が奪われた状況の属国、隷属した状況のポジションに日の丸を置いている」

●ネトウヨ脳全開!有村治子「NHKはどこの国の放送か」「中国ファーストだ」

 さらに有村議員は「NHKはどこの国の公共放送でしょうか?」と言い出し、挙げ句、「中国大使館もこの番組をマークしている」と断言。以下のようにがなり立てたのだ。

「中国共産党が日本に編集員を潜り込ませずとも、日本の公共放送が自らの意思で中国の国旗の下に日本の国旗を配し、日本全国に配信する。中国の方から見れば、中華思想、チャイナファーストを日本の報道が自らやってくれていると見えるのでは。これがNHKの意図なのか」

 言っておくが、『ニュースウオッチ9』のこの特集は、中国の脅威を煽る一方で"自衛隊は命がけで日本を守っている"と喧伝する、安倍政権の意向を反映しまくった内容だった。しかし、たんに中国の国旗が日の丸より上にレイアウトされていたというだけで、有村議員は国会でNHKを攻撃したのである。その姿は、被害妄想に駆られたネトウヨとまったく同じものだ。

 いや、ネトウヨ脳という意味では岸外務副大臣も同様だ。岸外務副大臣は有村議員がNHKのこの問題を取り上げることは確認済みだったはずで、その上で国旗の上下配置について「適切ではなくあってはならないこと」と述べたのである。

 ちなみに、岸外務副大臣は安倍首相の実弟であり、有村議員とふたりそろって日本会議国会議員懇談会のメンバーだ。しかも、有村議員は2013年の参院選で「日本会議推薦候補」に選ばれるなど、とくに日本会議と関係が深い議員である。

 そして、今回のこの極右議員による国会での"茶番劇"は、あきらかにテレビ局に対する圧力だ。事実、有村議員の攻撃に、内閣府の井内正敏総括審議官は「ふたつの国旗を並べる場合には左右に同じ高さで表記する方法があろうかと思う」などと答弁。今後、NHKのみならず民放も国旗の配置に神経を尖らせることになるのは必至だろう。

 安倍政権は2018年度からの保育所保育指針の改定案として、3歳以上の幼児にさえ国旗と国歌に「親しむ」ようにするとまとめた。また、最近では森友問題のどさくさに紛れて教育勅語を肯定さえして見せたばかりだ。

 こうして教育現場を「森友化」し、メディアに対しては日の丸の扱いひとつで圧力をかける──。頭がイカれているとしか言いようがないが、これこそが2017年の日本の現実なのである。
(編集部)