中国で今、華人の海外移住を取り上げた書籍「越過重洋越過山」が注目を集めている。レコードチャイナ編集部は日本を訪れた著者にインタビューを行った。資料写真。

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中国で今、華人の海外移住を取り上げた書籍「越過重洋越過山」が注目を集めている。レコードチャイナ編集部は日本を訪れた著者の謝青桐(シエ・チントン)氏にインタビューを行った。

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この作品では中国全体で巻き起こっている出国熱が引き起こした文化の断裂、倫理的問題が取り上げられている。全体を通して描かれているのは精神面で祖国と異国とを行き来する移民たちの複雑で矛盾した心理状態だ。彼らは2つの国の間を揺れ動く中で絶えず自分を探そうとするが、逆に「迷路」に迷い込んでしまう。心の奥底に抱えているのは孤独と苦痛だ。

著者の謝氏は文化研究者でメディア事情に詳しい。海外で10年以上暮らした経験があり、これまでに米国、フランス、オーストラリア、日本で取材などを行った。移民問題や移民の思想が変化していく過程を熟知しており、「苦難に満ちたこの世界で成功より重要なことは故郷を思い起こすこと」と語る。今回の日本訪問は8世紀に当時の唐から日本に渡った鑑真、9世紀に遣唐使として日本から唐に赴いた円仁の研究が目的。同氏は取材に対し、次のような言葉を寄せた。

記者:謝先生はこれまで何度も日本を訪問されたと伺っています。日本の印象はどうですか?
謝氏:強烈な魅力を持つ民族だと思います。たぐいまれな匠の精神を持つと同時に、「しなやかで美しい」という側面と「勇敢」という側面を併せ持っている民族ではないでしょうか。ただ、私は日本文化の美意識の中にある悲哀、幽玄、風雅が好きです。

記者:大勢の中国人が海外に移住しています。最も大きな目的は何でしょうか?
謝氏:1つは、グローバル化がもたらした技術、資本、人材の広範囲におよぶ流動が人々を故郷から引き離しました。また、生きることや教育に対する欲求がさらに高まったことも挙げられるでしょう。

記者:海外に移住する華人が直面する最大の問題は何でしょうか?
謝氏:祖国と移住先との間で心が複雑に揺れ動くことだと考えます。彼らはアイデンティティーの確立を目指しますが、逆にその沼にとらわれてしまうのです。彼らの心の深い部分にあるのは強烈な孤独と苦しみです。

記者:華人の移民ブームをどう捉えますか?
謝氏:移民に「正しい」「間違い」という評価はふさわしくありません。どのような潮流もそれが生まれた社会、歴史の合理性を有しているのです。私はこの作品で、世界中の移民現象を同じ1つの歴史の中で融合させようとしました。何が正しくて何が過ちかという立場は示していません。ここにあるのは運命と歴史に無情に押し流された人生、苦難に満ちた人生だけです。こうすることでこの作品は民族、地域という狭い考え方から抜け出し、移動途中にある全ての生き物にヒューマニズムの温もりを伝えるようになるのです。(取材・編集/レコードチャイナ編集部)