日本の音楽市場、アメリカ・世界とはどう違う? 海外配信大手も苦労するガラパゴス市場

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 アメリカレコード協会によると、2016年の米国の音楽市場の売上は、前年比11.4%増の77億ドル(約8,404億円)に達した。米国の同市場はCDの売上がピークだった1998年を最大とし、以後減少を続けてきたが、CDからダウンロードへの購入形態の変化によるところも大きい。それが2010年前後に底を打ち、以後再び成長の動きを見せつつある。CDの売上は引き続き下降しているが、けん引役となっているのは音楽ストリーミングサービスだ。日本の音源ビジネスの現状と合わせてリポートしたい。

◆世界はストリーミング一色
 アメリカレコード協会の報告書によると、2016年の音楽ストリーミングサービスは売上構成比で51.4%、2011年は9%だったのが5年間で急激な成長を見せたことになる。一方、ダウンロード販売は構成比24.1%、CDなどでの販売は21.8%で、同じデジタルでもダウンロード販売は減少しており、ストリーミングの一人勝ちのような状態だ。ストリーミングのなかでも料金を支払うサブスクリプションタイプが2014年の7億7,900万ドルから2016年は3倍の24億7,900万ドルにまで拡大した。一方、広告を受け取る無料配信サービスタイプの売上の伸びは緩やかで、2016年は4億6,900万ドルとサブスクリプションの5分の1程度にとどまる。

◆広告収入モデルの新たな課題も
 国際レコード・ビデオ製作者連盟のレポートによると、世界市場でも音楽メディアの売上は下降を続けてきたが、2010年を境に微減に回復、再び売上を成長させる途上にあるようにも見える。

 2015年の世界市場は150億ドル(約1.6兆円)、ダウンロードやストリーミングサービスなどデジタルの売上は45%の構成比になる。なかでもストリーミングサービスは、世界34の国に4,000万曲が配信され、350万人の有料サービス利用者がおり、ストリーミング配信の売上成長率は毎年ほぼ40%以上を達成している。

 ただしストリーミングサービスの問題点も浮かび上がってきている。料金を支払うサブスクリプションサービスが6,800万人の利用者で推定20億ドル(約2,183億円)の売上なのに対し、広告を受け入れる無料配信サービスはサブスクリプションの10倍の9億人の利用者がいるにもかかわらず、その広告収入は6億3,400万ドル(約692億円)とサブスクリプション売上の半分以下にとどまることだ。これは楽曲を提供するレーベルやアーティスト、投資家への還元の際に格差を生み、音楽の健全な発達に支障を来すという見方がされている。事実を把握した欧州委員会でも、このギャップの是正に取り組む姿勢を見せている。

◆どちらに動くか日本の市場
 日本レコード協会の資料によると、2016年の音楽ソフト(オーディオレコード+音楽ビデオ)の総生産は、数量で前年比-5%の2億1,298万枚/巻で、金額は前年比-3%の2,457億円。一方で有料音楽配信の金額は529億円で12%の増加となり、3年連続の成長を果たした。なかでも、サブスクリプションサービスは伸長を続けており、金額で200億円(前年比61%増)、有料音楽配信売上金額 の38%(前年26%)を占めるまでになった。有料音楽配信が音楽ソフトと合わせた全体の金額に占める割合は18%と、海外に比べるとかなり低く、依然CD等のメディアによる売上が大きい。有料音楽配信が、市場全体を引き上げるまでには構成比を高めていないという見方もできる。

 昨年の9月に日本市場に参入し、大いに注目を集めたのは配信サービス最大手のSpotifyだ。準備期間も長くとり、日本の市場に充分配慮したと発表時はその自信のほどをうかがわせた。日本のレコード会社やアーティストへのアピールのひとつに、「世界に配信されることでワールドワイドに活躍できるチャンスがある」というものがある。参入直後のForbesの記事が興味深い。日本市場の難しさを次の3つに集約し、Spotifyは苦戦すると予測したのだ。‘本の音楽業界は日本マーケットを中心に考えているので、Spotifyとの契約は限定的。日本の無料利用から有料利用への切り替えは40%ほど、他の配信サービスがすでに参入済みでSpotifyの980円は差別化できる価格ではなく収益化に苦労する。F本はガラパゴスでありCDセールスが8割以上を占める主要な収入源であるため、業界関係者の配信化への移行は容易ではない。国内中心の音楽産業では、Spotifyのメリットが見出しづらいといったところか。

◆世界でも巨大な日本の音楽市場
 日本の音楽ソフトの市場規模は世界で第2位とされている。海外の大物アーティストが、礼儀正しいファンが多いということだけで、日本を大切にしているわけではなさそうだ。しかし日本のマーケットは邦楽優勢でしかもアイドル歌手やグループの売上が大きく、関連するレーベルや音楽事務所はCD以外の配信を好まない傾向がある。日本の音楽が海外でファンを増やすケースも、アニメソングや日本独特のカルチャーを感じさせるアーティストであるなど、世界の主流のポップシーンで競い合うまでには至っていない。国内流通のCD中心のほうが収益も見込みやすいのだろう。

 しかし人々の関心は音楽以外にも広がり、さらに日本では若い世代の減少が予測されている。配信サービスに頼り切れるかどうかの問題もあるが、Spotifyの主張する「世界への配信によるビジネス拡大のチャンス」があるならば、アメリカやイギリス以外のアジアの国などから世界に羽ばたくアーティストが登場することになる。日本は先を越されてしまうのか。音楽産業の拡大のためには、海外市場も含めCDと有料配信、広告モデル配信の3つをうまく使い分けることも考えなければならないのではないだろうか。