FRのような素直なハンドリングが最高の心地よさ

ワインディングが気持ちいい! 旋回中のアクセルのオンオフがハンドリングに与える影響がFRのように素直で、コントロール性に優れ、気持ち良く豪快にスポーティドライブを楽しめる。


思い返せば2011年。ルノーがドイツのニュルブルクリンクを開発拠点に定めながら本気で仕上げたメガーヌR.S.に初めて試乗したときに驚いたのもこれだ。FFモデルでありながら、旋回中に加減速をしても、グリップ感などのハンドルからの手応えや旋回力などに及ぼす影響がとても少ない。

言うなれば、FFでのスポーティドライブは、通称トルクステアとも呼ばれるようなそれら特有の“癖”とも言える症状とうまく付き合いながら走るのが常とされていた。


今回、熟成を重ねて自然と顔がにやけるほどの気持ち良さを体験できた最新のメガーヌR.S.273に試乗しても、やはりその癖が一切なかった。


手になじむ太めのハンドルから伝わるのは、ドシッとフロントタイヤが絶えず路面を捉え続ける絶大なる安心感だけ。やもすると、これはFRでも得られないレベルのどっしり感や安心感だ。フロントタイヤの上に重量物のエンジンが乗り、フロントタイヤを上から押さえつけることでガッチリとグリップさせられるのがFFモデルの強み。

しかし弱みは、先ほど述べたとおり、そのフロントタイヤで旋回力を生み出しながら加減速もしないといけないので、複合要求により運動特性に癖が生まれる。その癖がメガーヌR.S.にはほとんどないので、結果として残るのは、エンジン重量で強く押さえられた絶大なるグリップ力が絶えず得られるという世界。


なぜ癖をなくせるのか? メカ好きの方に改めて伝えておくと、その答えは、フロントサスペンションがダブルアクスル式であることによるものだ。

サスペンション形状そのものはノーマルメガーヌと同様のストラット型。しかしタイヤを装着するハブへの連結部の形状が特殊。タイヤの方向に対してカサ上げされている形状で、効果はハンドルを切ったときのサスペンション上の回転中心と、タイヤの中心が理想的な位置に配置できることだ。

通常のFFはフロントタイヤを駆動させるための駆動系配置を踏まえると、このサスペンション上の回転中心とタイヤの中心に大きなズレが生じる。なので、加減速だけとか、旋回だけならどちらかの中心軸で運動が作用するから良いが、旋回しながらの加減速など複合操作になると、操作に応じて作用点の場所が変化していく。

これがトルクステアと呼ばれる癖の原因だ。この癖に、コストを掛けて配置を工夫し、ダブルアクスル式の特殊形状を実現させて対処したわけだ。FFモデルでスポーティドライブを楽しんだことがある方なら、あのハンドルが取られるような動きがない世界を思い浮かべて貰えば、効果は即座にイメージできるはず。

メガーヌR.S.は、これがある限り唯我独尊的な魅力を今後も持ち続けるだろう。そう表現したいほど価値があるので詳しく述べたが、何度もいうが今回の試乗も改めて気持ちよかった!

ファイナルエディションの名にふさわしい熟成度

その背景には、熟成を重ねたメガーヌR.S.の実力が関係する。

言葉では熟成のひと言になるし、どのモデルでも熟成はすると言われそうだが、その熟成の濃さが並ではない。なぜならビックマイナーチェンジなども行いつつ、注目はニュルブルクリンクそして鈴鹿サーキットを舞台に、そのときどきのFF最速ラップを求めながらクルマを鍛え上げてきたからだ。

これが意味するのは、今のメガーヌはそろそろモデルサイクルとして有終の美を迎えるので、今がもっとも熟成され、旨みが凝縮された買いの時期でもあるということ。

メーカーもそれがわかっているので、最後に熟成エディションを限定で出してきた。それがメガーヌRS273ファイナルエディション。当時のニュルブルクリンクでのFF最速タイムを出した、273馬力仕様のエンジン搭載にちなんでのネーミングだ。

このエンジンがまた良い。2700回転程度から本格的にターボ加速をするが、それ以下でも十分に力強いので、6速MTでの街なかドライブもシフト変則回数少なく苦にならない。しかもFF最速ラップタイムを出せるエンジンでいながら、アクセル操作に対する過敏な特徴がなく扱いやすい。

しかし、RSボタンをおしてスポーツモードにするとすべてが変わる。ターボの最大加給圧も、ノーマル時の950mbarから1050mbarになり、5000回転以上の伸びが鋭くなる! しかも、野太さと抜けの良い音が調和した絶妙の排気音に、大量の空気の移動を感じさせる吸気音まで混ざり、とても刺激的なのだ。この音を楽しみたいがゆえに、アクセルを積極的に踏みたなる。

しかも、前述した癖のないハンドリングがあるので、アクセルを踏めてしまうからタチが悪い。一般道では強い自制心で走行ペースを抑えることが大切であり、アクセルを踏んだ際の気持ち良さを知っていると、逆にストレスを感じるケースがあるかもしれない。


また、それだけ積極的にアクセルを踏める背景には、シャーシ性能もの高さがある。いや、今まで述べたのはメガーヌの飛び道具的な魅力であり、本質はここなのだろう。フロントで発生した曲がる力を瞬時にリヤにも伝えて、クルマ全体が一体感を持って不安感なく曲がる動きを作り出す卓越したボディ剛性。この破綻しないという安心感があるから、豪快にクルマを振り回せるし、アクセルを踏んでいける。

しかも、激しいアップダウンがあるなかで、路面まで荒れているニュル最速でイメージできる方もいるだろうが、足まわりがとてもしなやかであり、加えて開発コントロールタイヤであるミシュランのパイロットスポーツとの相性が絶妙。グリップするのは当然として、サスペンションに加えてタイヤが第2のサスペンションであるかのように柔軟かつ剛性を備えた粘り具合を持ち、荒れた路面や跳ねそうな場面でも路面を離さないのだ。


その激しい走りでも、手足を自由に操作できるセミバケットタイプのシート。ハードな走りでも、繊細なコントロールを可能にするブレーキタッチ。そもそも論で、フロントが左右20mm近くもノーマルのモデルよりも広くなった見た目の迫力など、述べたい魅力は多数ある。


最後に、思い返すだけでちょっと興奮してきた気持ち良さがあったこの世界を濃密に堪能したい方は、20万円高くなるが20台限定で設定されているメガーヌRS273パックスポールがオススメ。

ファイナルエディションに対し軽量を極めたモデルで、ホイールにはロベルトマルケージニデザインの軽量鍛造を用い、マフラーはニュルアタックモデルが絶えず採用してきたアクラポビッチ製の軽量チタンマフラーになる。

最初は見た目と排気音が刺激的になる程度だろうと軽視していたが、乗り比べるとホイール軽量の効果か、体感できるレベルで加減速レスポンスが異なり、加えてレッドゾーン直前まで鋭く吹き上がる高回転のひと伸びが違う。

実際の購入を考えたとき、ナビが装着しづらい点が気になるが、スポーティドライブにおける走りの質を価値として見いだせる本質追究の方にとっても、コストパフォーマンスがとても良いモデルだ。

(写真:増田貴広)

※ボディカラー赤:ルノー メガーヌR.S.273ファイナルエディション
ボディカラー黄:ルノー メガーヌR.S.273パックスポール

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