終了間際のFKのチャンス。狙いすました天野のシュートは、しかし磐田の壁に撥ね返され、J1初ゴールはならなかった。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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[J1リーグ6節]横浜2-1磐田/4月8日/日産ス
 
 本人からすれば、大きなお世話だ、と言いたかったかもしれない。それでも、アマジュンこと天野純は真摯に応じる。
 
 終了間際に得たペナルティエリア付近の直接FKについて質問する――あそこで決めれば、天野純という存在がまたひとつクローズアップされていたと思うけど、と。
 
「俊さんだったら、絶対に決めていた」
 
 そう答えた天野は、「あそこは決め切らないといけない。勝ったけど、僕自身は手放しで喜ぶことはできない」と悔しさを滲ませる。
 
 左足から放たれたシュートは、磐田の壁に撥ね返された。
 
 3節の鹿島戦でもそうだった。0-1で迎えた90分、同じようなシチュエーションでキッカーを務めた天野だったが、この時もネットを揺らせなかった。
 
 昨季までチームメイトだった中村俊輔は、こうした場面でよくゴールを決めてきた。同じレフティでテクニシャン、そしてセットプレーのキッカーも任されている天野に、どうしても中村の姿を重ねてしまう。
 
 そうした期待がかけられていることを、本人も重々承知しているはずだ。「次からまたFKの練習をして、早く1点、FKで決めたい」と言葉に力を込める。
 
 痛快なシーンもあった。流れの中での中村とのマッチアップ。フェイントをかけて抜きにかかろうとする相手を、天野はしっかりと止めてみせた。
 
「シザースしてきた瞬間、よく見る光景だと思って、ダブルタッチでかわしてくると予測して、そこに足を出したら上手く取れました」
 
 敵味方に分かれて対戦してみた中村の印象は「ボールが収まるし、やっぱり嫌な選手」だった。だからこそ、「俊さんを超えられるように頑張りたい」と意欲的だ。
 
 今季はボランチのレギュラーとして、開幕から奮闘を続けている。今のチームはリードを奪った後のゲーム運びに課題を抱え、「少し受け身になってしまって、もう1点取りに行く姿勢を見せないといけなかったのに、上手くいかなかった」と反省を口にする。
 
 中心選手としての自覚を強くしているのだろう。1点取って、引き気味に構えてしまうチームに喝を入れようと、周囲に声をかけたが、「全員に浸透しなかった」という。責任は自分にあったと考えていたのかもしれない。「僕はボランチで真ん中にいるので、発信していきたい」と、天野はその表情を引き締めた。

【横浜 2-1 磐田 PHOTO】横浜の新10番・齋藤の2アシストで磐田を撃破!
 コンダクターとしての仕事はもちろん、FK以外でもフィニッシュに絡むプレーが求められている。
 
 天野が「うちの武器になりつつある」と語るのが、ボランチの天野、左サイドの齋藤学、左SBの金井貢史によるトライアングルだ。
 
 ユース時代にもともにプレーしていた3人だけに「フィーリングはすごく合っている」。テンポ良くボールを動かしながら、局面を前に進めていくなかで、天野は出し手にもなるし、受け手にも回る。
 
「左で作って右で仕留めるとか、左でそのまま崩し切ってゴールまで向かうとか。左サイドからなら、ある程度、崩せる自信はある。あとは、個々の精度の部分だけ」
 
 磐田戦の43分、左サイドで金井が前を走る齋藤に縦パスを通す。そのままドリブルで持ち運んだ齋藤のラストパスを受けたのは、中央から猛然とダッシュしてエリア内に侵入していた天野だった。左足で放ったシュートは惜しくも枠を捉えられなかったが、3人の呼吸がピタリと合った見事なコンビプレーだった。
 
「ボランチの僕が(相手の)ディフェンスラインの裏に抜ける形は、練習からずっとやっているし、監督からも求められている動きです。ボランチの位置からスプリントして、スプリントしたなかでも正確なプレーができれば、もっと怖い選手になれると思う」
 
 今季の横浜のキーマンであるのは間違いない。ゲームを作り、ゴールも奪う。欲張りなボランチのさらなる飛躍が、チームを上位に押し上げるだろう。
 
 プロ4年目、まだJ1でのゴールはない。記念すべき一発は、やはりFKで決めたい。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)