中村憲剛も舌を巻く世界レベル ”セレソンの重戦車”パウリーニョが川崎相手に垣間見せた無類の武器

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川崎は広州とスコアレスドロー 中村は45分間、パウリーニョは先発フル出場

 試合後のミックスゾーン。

 取材を受けている川崎フロンターレMF中村憲剛の肩をポンと叩いてユニフォームを手渡したのは、広州恒大のブラジル代表MFパウリーニョだった。「おおっ」と驚いた中村はそれを受け取り礼を言うと、記者陣に向かって笑顔で戦利品を掲げてみせた。

 川崎はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)グループステージ第4節で広州恒大と対戦し、ホームで0-0と引き分けた。後半頭から途中投入された中村はポジションの都合上、先発フル出場のパウリーニョと対峙する時間が長かった。

「なんか結構向こうからコミュニケーション取ってきてくれて。代表で戦った時のことは覚えてないと思うけどなー。フレンドリーだったね。ユニフォーム交換はちょっと自分から言ってみた。なかなか戦える機会もないし、現役のブラジル代表だからね」

 パウリーニョはプレミア屈指の強豪クラブであるトットナムに所属していたが、2015年にチャイナマネーで広州恒大に”爆買い”されることとなった。現在、巨額の年俸に見合う活躍で中国王者の中心選手として確固たる地位を築いている。

 また、新天地をアジアに移しながらも、ブラジル代表としての活躍も輝かしい。先月23日に行われたワールドカップ南米予選ウルグアイ戦ではハットトリックを達成し、強豪のライバル国を粉砕した。

 一方で、中村にカナリア軍団で大車輪だったパウリーニョとのインパクトについて尋ねると「そのような勢いは感じなかった」と即答。その理由について、パウリーニョの取り巻く環境の違いを指摘した。

ブラジルのパウリーニョと広州のパウリーニョ

「同じパウリーニョだけど、ハットトリックしたのはブラジル代表のパウリーニョだから。広州では周りも違うし、タスクも違う。ブラジル代表のパウリーニョはもっとずっと半端ないと思うよ」

 ブラジル代表では中盤にも関わらずストライカーさながらの得点力を見せる一方、広州では比較的、攻守を司るレジスタの役割を担っている。もちろんパフォーマンスとしては一級品であるが、パウリーニョ自身の最大値を引き出しているかと言われると、決してそうではない。

「パスしてどうこうするタイプじゃなくて、周りにお膳立てしてもらって点を決める選手だから。このチームだとお膳立てする方に回るから、良さはなかなか出しにくいんじゃないかな」

 それでも、ワールドクラスの貫禄は随所に見せつけていた。チャンスを見出すや否や、爆発的なスピードで前線のスペースに走り込み、強靭なフィジカルを活かす”重戦車”ばりの攻め込みには、これまで多くのブラジル人選手と同じピッチに立ってきた中村でも、舌を巻かずにはいられなかったようだ。

「やっぱりグッていうあのスピード感は、本当に速いよね。パワーもあるし、後半1本ピンチになった時にも、置いてかれたもんね。速いし、嗅覚が凄まじい。FWみたいだもん」

”穴“に入る立場と”穴”を創る立場

 特に現在のブラジル代表には、相手DFを剥がし、スペースを創出させることに長けたテクニカルな選手が多い。パウリーニョの持つ瞬発力とフィジカルは、そのような環境でこそ本来の輝きを放つのだ。

「セレソンでもボールを持って何かすることを求められているわけではないと思う。それはネイマールやコウチーニョの仕事だから。パウリーニョはとにかく相手の”穴”を見つけて入っていくのが抜群に上手いんだよ。けど、だからこそ今の広州ではその良さを出すのは難しいんじゃないかな」

 ブラジル代表とは違い、広州ではその”穴”を作り出す側の立場にある分、パウリーニョの持つ本来の武器を発揮させるまでには至らないという見解を示した。

 だが、やはり欧州から引き抜かれてきたトッププレイヤーの存在感は圧倒的なものだ。中村は前日に行われた浦和レッズと上海上港の一戦を引き合いに出し、「昨日のオスカルだって、見たでしょ? やばいよねあれ! 一人でやってるのかと思ったよ。すごかったよ本当。めちゃくちゃ体力あるんだもんだって」と興奮気味に振り返った。

 パウリーニョやオスカルのようなワールドクラスのレベルを身近に触れるということは、百戦錬磨の中村でも大きな刺激となったようだ。

【了】

城福達也●文 text by Tatsuya Jofuku

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images