お金に苦労せず、幸せに生きていくことを目指す【脱貧困診断】。今回の相談は、近道夕子さん(仮名・IT関連会社勤務・33歳)からの質問です。

「30歳を過ぎたころから体力がめっきり落ちたこともあり、将来の健康のことも気になるようになってきました。民間の医療保険にも入ったほうがいいのかなと思って調べたのですが、掛け捨ての保険でも、月に数千円はかかります。また、女性特有のガンを保証する特約ってつけたほうがいいのでしょうか?そうすると、また金額があがってしまうし……」

年齢が上がると「万が一の場合」が気になってくるもの。でも、日々の生活さえギリギリなのに、保険にお金を払いすぎるのも……。森井じゅんさんに聞いてみましょう。

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公的な医療補助をベースに考える

相談者さんは、掛け捨て型の医療保険の加入を検討しているようですね。病気やけが心配、そのために備えておきたい。よく分かります。

医療保険の加入を考える前に、大きな病気をして入院となってしまった場合に、どういったお金が必要になるか考えてみましょう。

まず、病気の治療や入院・薬といった医療費です。これは、病気の種類や治療方法により大きく変わってきます。脳出血やくも膜下出血などの治療費は100万円を超えると言われていますし、公的な保険の対象外となる先進治療を受ける場合には治療にかかる金額が大幅に増加します。

そういった医療費のうち、一般的な健康保険に加入している場合、保険適用となる医療費については、3割負担です。では、保険適用100万円の治療を行なった場合には、30万円の個人負担となるのでしょうか。いえ、健康保険には、高額療養費制度というものがあり、年収により1か月の医療費自己負担の上限が決まっているんです。

目安として年収が370万円未満であれば、ひと月5万7600円を超える部分は高額療養費として支給をうけることができます。

たとえば、ひと月に100万円の治療を受けた場合でも、150万円の治療を受けた場合でも、5万7600円の自己負担で済みます。さらに、直近12か月に、すでに3回以上の高額療養費の支給を受けている場合には、自己負担が軽減され、ひと月4万4400円となります。

通常、高額療養費は申請から支給までに数か月の時間を要します。だから、「すぐ給付してくれる民間の保険に入ったほうがいい」と思う人もいるかもしれません。
しかし、入院する前に、加入の医療保険から「限度額適用認定証」などの交付をうけて窓口で提出することで、窓口での支払いを負担額までに抑える事もできるんです。

また、入院前にそのような書類の準備ができなかった場合でも、支払いが困難な場合には無利息で高額医療費貸付を受ける事もできます。

加入の保険により異なるので、詳しくは加入している保険に問い合わせをしてみてください。

このように、病気や入院となった場合でも、公的な医療補助があるので、過度に心配しなくても大丈夫です。

それでも掛け捨て型保険に入ったほうがいい場合もある!?

自分にとって、保険適用外に対する保証は必要?

一方、保険外の先進医療などを選択した場合には、全額自己負担となり、その費用は高額になりがち。万が一の場合、先進医療を希望する場合には、医療保険の加入や先進医療特約も検討価値があるでしょう。

また、入院した場合、医療費の他に食事代、パジャマや日用品、消耗品、お見舞いに来てくれた方へのお礼やお返しのほか、差額ベッド代などが必要となる場合があります。差額ベッド代とは、1部屋4ベッド以下の一定の広さと設備のそろった部屋に入院する場合にかかる費用です。1日あたりの差額ベッド代は数百円から数十万円と幅広いものですが、平均的には6000円程度、3〜4人部屋であれば2000円から3000円程度と言われています。差額ベッド代は原則的に保険適用外で、高額療養費制度の適用もないので、すべて自己負担となります。

基本的には、希望した場合に差額ベッド室への入院となり、どの病院でも差額ベッド代不要の保険診療の範囲内で入院できるベッドがあります。原則的には、差額ベッド代は希望しなければ払わなくていいもの。ただ、ベッドの空き状況などもありますので、入院の前に相談できるのであれば相談してみることをお勧めします。

特約の契約は慎重に

相談者さんは、がん保険の加入を検討されているようですね。

がんは、日本人の死因のトップ。そして、がんの治療は、手術や抗がん剤治療、放射線治療といった治療などを組み合わせて行なわれ、保険適用外のものも。保険適用外の治療を受ける場合には百万円単位の治療費になることもあり、負担は莫大です。
また、5年生存率と言われているように、治療後5年間は再発予防や検診などで通院をすることになります。

がん治療に幅広い選択肢を残すため、がんにかかる先進治療を保障する特約もありますし、現在では放射線治療と抗がん剤に特化した保険もあります。

相談者さんは、女性特有のがん特約についても加入を検討されているようですね。女性特有の特約や、女性疾病特約など、女性の身体にだけ起こりうる子宮や卵巣などの病気について、入院給付金や手術給付金が上乗せされる特約です。名前を聞くと女性だから入っておかなければ、と思ってしまいがちですが、必ずしも必要ではありません。上で説明したように、健康保険の適用や、高額医療費制度を利用することで、他の病気にかかった場合と同じように自己負担は一定額に抑える事ができるからです。

ただし、乳房再建手術を受けた時に上乗せ給付を受ける事のできる特約などもありますので、女性特有の病気に関しては、特に手厚い保障で備えたい場合には検討してみてください。

とはいえ、病気はがんだけではありません。心筋梗塞や骨折、関節症など、治療費が大きくなるものは様々です。
また、医療保険契約時には慎重に確認を行なってください。せっかく医療保険に入っていたのに、入院給付金や手術給付金の対象とならなかったーーというケースも。特に、がん保険では対象内・対象外が難しいことが多いので、自分がどんなリスクに備えたいのか、保険は何をカバーしてくれるのかをしっかり相談、見極めてから加入してください。

ふだんは全然平気なのに、たまに寝込むと急に心細くなって、将来への不安がズッシリきちゃうのです。



■賢人のまとめ
公的保険でカバーしきれない保証をどう備えたいかをまず考えて。女性特有のがん特約は、必ずしも必要ではありません。特に手厚い保証で備えたいという場合のみ検討を。

■プロフィール

女子マネーの達人 森井じゅん

1980年生まれ。高校を中退後、大検を取得。レイクランド大学ジャパンキャンパスを経てネバダ州立リノ大学に留学。留学中はカジノの経理部で日常経理を担当。

一女を出産し帰国後、シングルマザーとして子育てをしながら公認会計士資格を取得。平成26年に森井会計事務所を開設し、税務申告業務及びコンサル業務を行なっている。