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■どんなクルマ?

インプレッサの派生モデルから、XV独自制御のシャシー・チューニングへ

XVの初代と言うべきモデルは3代目インプレッサの派生車種として誕生した。最低地上高はインプレッサと変わらず、SUVモチーフのデコレーション・モデルと言うべき性格だった。しかし、専用のサス・チューニングが施され、インプレッサのスポーティな運転感覚を残しながら日常域での穏やかな乗り心地を両立していた。

2代目、つまり先代では「インプレッサ」が車名から抜け、「スバルXV」に変更。独立したモデルとして展開。ハード面ではインプレッサと姉妹車の関係にあるものの、最低地上高の増加など悪路対応力を向上。走行性能面でもクロスオーバーSUVらしい設計となった。

3代目となるのが新型である。基本コンセプトに変更はないが、スバル新世代プラットフォームの採用など母型となるインプレッサが大幅に刷新され、それに伴いXVも大きな進化を遂げている。

要約すれば以上のようになるのだが、XVのための設計変更は従前モデルとは段違いである。最低地上高の増加とロール・センターの補正などハードそのものの設計変更もそうだが、ハードが同じでも制御をXV専用にするなど独自性にこだわったチューニングも見所だ。

■どんな感じ?

取り回しのしやすさとジャスト・サイズなボディ

車体骨格や室内寸法設定はインプレッサと共通。つまり、居住性や積載性などのキャビン機能に変化はない。最低地上高の増加に伴い座面地上高が増加しているが、ミニバンやハイト系2BOX、一般的SUVと比較すれば低く、小柄な女性でも車外から直接シートにアクセスしやすい。腰を上げたり下ろす動作では、インプレッサより楽なくらいだ。都市部での用途にも手頃なサイズと相まって日常用途の使いやすい設計である。

立体駐車場を利用するユーザーには気になる全高も、ルーフ・レール/シャーク・フィン・アンテナ(オプション)を装着すると1595mmだが、標準状態では1550mmに抑えられSUV系のサイズ面のハンデはない。

やや揚げ足取り的な見方をするなら、高いアイ・ポイントによる見晴らしのよさ等をSUVに求めるユーザーにすれば、普通の乗用車と大差ない視界では無意味だ。

そう考えればXVは走行性能面のクロスオーバーSUVらしさを求める実践派のためのモデルなるが、そこは新型車の訴求点のひとつであもる。

200mmの最低地上高も踏破性のポイントだが、フォレスターに採用されているXモードの新規導入はXVのSUV要素を増加させている。

Xモードも大きな武器

Xモードは各輪の接地荷重や摩擦係数のアンバランスによる空転防止を目的とした電子制御システム。具体的には空転を検知すると空転輪にブレーキを掛けてグリップしている側の駆動トルクを増加させ、同時にトルク過剰ならエンジン出力を絞るというもの。トラクション・コントロールとLSDを融合させたような機能を発揮する。

その威力を体験すべく泥濘&積雪の特設コースに赴く。泥濘登坂でスタックした状態からXモードをオンにしてみたが脱出不可。空転で出来た窪みと大抵抗、低μの3悪条件を乗り越えられるほどの効果はないようだ。

Xモードが最大限に威力を発揮したのは片輪をコース・サイドに積もった雪に入れた登坂。Xモード・オフでは空転ばかりで進まない。しかも方向コントロールを失い、ズルズルと滑りながらコースサイド方向へと鼻先を向けてしまう。Xモード・オンで再トライすると、ぐりぐり押し進めるように動き出す。もちろん、意図する方向へとだ。実のところ、最も感心したのは方向コントロールの維持であり、あらぬ方向へと動き出しては動けないよりも質が悪い。抜け出そうとして深みにはまるのは雪路走行ではよくあるパターンである。

空転防止の制御も妙味。ポンピング・ブレーキならぬポンピング駆動で上手に駆動力を路面に伝える。このような制御を行う理由の一つは後輪駆動系の負荷低減。本格クロカン車のように1輪に全駆動力を賄わせるほどの容量が駆動系に与えられていない乗用車型4WDで耐久性を高めるための配慮である。しかし、結果的には踏破性と方向安定を高めることにも繋がり、ドライバーにしてみれば「いい感じ」で脱出してくれるわけだ。

オンロードでも快適なドライブ・フィール

低μ路面と悪路での踏破性向上はクロスオーバーSUVとしてのXVの魅力を高めるが、オンロードでの走りのよさも欠かせない進化点のひとつである。

パワートレインのハードはインプレッサと共通だが、試乗してみると加速フィールが伸びやかみになっていた。加速時のエンジン回転域がちょっと高めに設定され、速度のノリのよさを感じさせる。インプレッサは回転を抑えてトルクで走らせる力感と燃費を重視しているが、XVはスムーズな加速への移行と加速感の連続性を優先している。このドライブ・フィールの違いは変速比とスロットル開度特性を変更によるもので、全開近くなればインプレッサと大差なくなってしまうが、中庸域ではパワーアップした印象さえ覚える。



カタログ燃費を捨ててドライバビリティを向上させた1.6ℓ

この改良は2ℓ車よりも1.6ℓ車のほうが効果的である。インプレッサはスロットルの大開でエンジン回転上昇を極力抑え省燃費ゾーン維持を図るが、維持しきれなくなるとダウンシフトすると跳ね上がるように回転上昇。XVは早めのダウンシフトで回転上昇を少なく、なおかつ速度上昇と一致感のある回転変化で制御される。ちょっと回し気味の心地よい加速感である。そのため、インプレッサよりも非力感が減少していた。

カタログ燃費を稼ぐには適さない制御だが、中庸域の加減速制御しやすい特性は状況や運転スタイルによる燃費の振れ幅減少に有効であり、実燃費ではカタログほどの差が出ないと思われる。要は実践的制御なのだ。

フットワークも「インプレッサ超え」

重量増に重心高アップという物理的ハンデが出やすいフットワークも「インプレッサ超え」。XVで新旧乗り比べると新型は骨格関節がっしり筋力増強という感じ。硬柔のモノサシなら旧型から硬められた印象があるが、硬いけどしなやかで走りの質感は大幅アップ。

この「しなやか」の部分はインプレッサからの進化の要点だ。リアサス・ロア・ブッシュの低フリクション化等々の改良がもたらした結果だが、大ストローク時の往なしの巧みさと車軸を揺するような振動も抑えられているのが印象的。とくに18インチ仕様で顕著であり、インプレッサではロー・ハイト大径ホイール特有の車軸周りの振動が感じられたが、XVはほとんど感じられなかった。もっとも、全モデルともタイヤの扁平率はインプレッサよりも大きく、タイヤによる振動吸収で有利さも大きく影響している。ちなみに18インチ車のタイヤ・ハイトはインプレッサの90mmに対してXVは124mmであり、最低地上高増と乗り心地改善の両面に寄与している。

ハンドリングの特性は「素直」の一言に尽きる。インプレッサも穏やかさと安心を軸に仕立てられているが、XVはさらに切れ味を抑え気味にして挙動の連続感を高めた設計。操舵に素直かつ路面のうねりや加減速による方向性の乱れが抑えられているのでワインディングのハイアベ走行も苦にならない。高性能志向のSUVにありがちなケレン味もなく、懐深さを実感させてくれる。身に馴染みやすい操縦感覚と言い換えてもいいだろう。



■「買い」か?

このXVこそスバル車のあるべき姿だ

限られた時間と条件での試乗だったが、試乗を終える頃には「ひょっとして、これがスバル車のあるべき姿なのでは?」と思えた。一昔前にアルシオーネSVXが謳った全天候ツアラーにラフロード性能を加えて、オールロード・ツアラーとして再構築。いつでもどこにでも快適に安心して出掛けられるツーリングカーである。

たぶん、XVに採用された改良点のいくつかはインプレッサにもフィードバックされるだろうが、少なくとも現時点でインプレッサ対比10万円高の価格差は「たった」のレベル。このアドバンテージは2ℓ級乗用車全般に対しても同様である。

とは言え、ハード・クロカンには適さない、高アイポイントの見晴らし効果もほどほど、スペシャリティ色も薄味、SUVの醍醐味を軸に評価すると中途半端な印象も強い。もっとも、ベスト・バランスと言うのは中庸に存在するもので、生活を共にするクルマならなおさらだ。

生活を共にするクルマのバランスを崩さず、今まで行けなかった所へも出掛けられる新たな楽しみを付加。「特別な趣味」のクルマではなく、一般的なユーザーがクルマの楽しさをさらに深く感じ取れるモデルである。

スバルXV 2.0i-S EyeSight

■価格 2,678,400円 
■全長×全幅×全高 4465×1800×1550mm 
■ホイールベース 2670mm 
■乾燥重量 1440kg 
■エンジン 水平対向4気筒1995ccガソリン 
■最高出力 154ps/6000rpm 
■最大トルク 20.0kg-m/4000rpm 
■ギアボックス リニアトロニック 
■サスペンション ストラット/ダブル・ウィッシュボーン 
■ブレーキ 4輪ベンチレーテッド・ディスク 
■タイヤ 225/55R18 
■燃費(JC08モード) 16.0km/ℓ 

スバルXV 1.6i-L EyeSight

■価格 2,246,000円 
■全長×全幅×全高 4465×1800×1550mm 
■ホイールベース 2670mm 
■乾燥重量 1410kg 
■エンジン 水平対向4気筒1599ccガソリン 
■最高出力 115ps/6200rpm 
■最大トルク 15.1kg-m/3600rpm 
■ギアボックス リニアトロニック 
■サスペンション ストラット/ダブル・ウィッシュボーン 
■ブレーキ 4輪ベンチレーテッド・ディスク 
■ホイール+タイヤ 225/60R17 
■燃費(JC08モード) 16.2km/ℓ