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●高橋一生のインスタはキリンの戦略
「カルテット」(TBS系)、NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」への出演など、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの俳優、高橋一生。そんな彼が3月7日に公式Instagramを始めた! というニュースが流れた。その瞬間からフォロワーが急増。約1ヵ月経った4月10日現在のフォロワー数は57万人を突破している。

実はこれ、彼がCMのイメージキャラクターを務めるキリンの新商品「旅する氷結」のプロモーションにちなんだ期間限定のInstagram(@issey_tabisuru)。CMの撮影風景をおさめたオフショットや貴重な“自撮り”を公開するなど、ファンにはたまらない内容になっている。なぜこのような手法をとったのか? 今回のPRの仕掛人となった、キリンビールマーケティング本部マーケティング部の小嶋梨沙さんとデジタルマーケティング部の高柳裕行さんに話を聞いた。

○若年層の開拓が狙い

キリンビールの調べによると、缶チューハイなど、栓を開けてそのまま飲める低アルコール飲料を、自宅で飲む頻度が各年代で上昇している。特に20代の飲料人口は多く、ビール類に次ぐ2番目に好きなお酒として定着しつつある。さらに興味深いのは、低価格で気軽に飲める“家飲み”需要が年々増加傾向にあるという。

そんな中、キリンの缶チューハイ「氷結」の新シリーズとして発売されたのが「旅する氷結」。第1弾はバルセロナスタイルの「アップルオレンジサングリア」、シチリアスタイルの「マンマレモンチーノ」、ハバナスタイルの「カリビアンモヒート」の3種類。お酒を通して、旅をしているかのような開放感や高揚感を感じてもらうのが「旅する氷結」のコンセプトであり、各地の美しい景色が描かれたパッケージデザインも特徴のひとつだ。

元々「氷結」シリーズは、ほかのチューハイブランドよりも若年層に支持されていたが、それをさらに強化する狙いがある。

●若者層をいかにとりこむか
「若年層をターゲットにしているので、従来の氷結の果汁感を担保しながらも飲み口を甘くしました。若年層は新しいものにチャレンジすることにやや抵抗があり、消費に関しても新商品よりも“慣れ親しんだ商品”を選択する人が多い傾向にあります。ただし新しいものに興味がないわけではない。ですので、なじみのあるダイヤ柄の氷結ロゴはそのままに、その土地の空気感も入れたパッケージに大胆アレンジしました」(小嶋さん)

若年層を開拓すること---そんなねらいにみごと合致したのが、高橋一生さんの公式Instagramだったのだ。3月21日のTVCM放送開始前に公式アカウントが開設されると、533ものWEBメディアでニュースとして取り上げられたという。当時はCM放送前ということもあり、高橋さんのInstagramが何の商品のPRなのか? と様々な憶測が飛び交い話題になっていたが、商品名を隠して話題化させることは、プロモーションチームの戦略だったのだ。

「今の若い人たちはテレビ視聴時間よりもケータイやスマートフォンへの接触時間が長いので、CMとデジタルを連動させるコミュニケーションを考えました。533という数は、私たちの経験からしても異例の数。また、(アルコール飲料のため)フォロワーは“20歳以上限定”。その意味深な文言にさまざまな想像力をかきたてられたお客様もいらっしゃったようですね(笑)」(小嶋さん)

「過去に飲料品の公式アカウントを作り、プロモーションしたことはあるのですが、CMタレントのアカウントを作ったのは今回が初めて。本来Instagramというのは、Twitterに比べ拡散しないツールですが、たくさんのメディアが取り上げてくださったことで、CM放送前から注目が集まりました」(高柳さん)

●常にざわつかせる
○メディアやユーザーを巻き込んだデジタル施策

その後、高橋さんのアカウントが「旅する氷結」のプロモーション用と判明してからもフォロワー数はうなぎのぼり。13万もの“いいね”がついたり、「自撮りをあげた!」「ついにメガネ姿を公開!」などコメントも1000件超えの連続。

この反響に対し「最初のショットを自撮りでお願いしたのですが、なかなか見られない高橋さんの自撮りショットがファンの方に刺さったのかも知れません。」と小嶋さん。どんな写真を撮って載せるかは、プロモーションチームと代理店、そして高橋さんご本人の意見も取り入れながら決めているのだそう。

そんな高橋一生効果もあり、「旅する氷結」そのものに対する注目度もあがってきた。

「TwitterやInstagramを見ていても、従来の氷結シリーズへの“いいね!”は数百件程度でした。ただ今回『#旅する氷結』で検索すると、ご自宅やお花見で『旅する氷結』の写真が1000件以上アップされています。フォトジェニックな商品だと思っていただけているのは嬉しいですね」(高柳さん)

そして高橋さんが地元メシを調理するWEBムービー「高橋一生のTaste the World! by 旅する氷結」も公開中。料理が得意という高橋さんが、パスタを使ったスペインのパエリア「フィデウア」や同じくスペインの伝統料理である「プルポ・ア・ラ・ガジェガ」などを手際よく調理。……かと思えば、玉ねぎを切って涙を流したり、腕にタコを乗せたりと、コミカルな一面ものぞかせる高橋さん。

○“自分で情報を取りに行きたい”常にざわつかせる!

「『氷結』シリーズは、いかにたくさんの口コミを生めるかを意識しています。特にデジタルは情報がどんどん流れていきますから、まずは見てもらうことが大事」(高柳さん)

「15秒のTVCMを見せるだけでは訴求力として弱い。情報が氾濫する今の時代、お客様に『自分から情報を取りにいかなければ』と思ってもらわないと意味がありません。短い間で様々な仕掛けをうち、常にタイムラインをざわつかせるよう心がけています」(小嶋さん)

こういった戦略が効を奏して「旅する氷結」シリーズは、発売開始した3月21日から2週間余りで年間目標の半分となる35万ケースを超えた。4、5月の行楽シーズンに向けては当初予定の5割を増産する予定だという。さらには、5月9日には、シリーズの新商品「ロコロコパイン」を発売する。

これ以外にも、2016年には、『氷結』CMキャラクターの東京スカパラダイスオーケストラとさかなクンがコラボした期間限定動画を公開し、YouTubeの閲覧数が数日間で100万回を超えるなど、デジタル施策が話題性に大きく貢献。このように、広告を見せるだけのPRではなく、SNSや料理動画といったデジタル施策との連動プロモーションに大きく舵を切ったキリン。メディアやユーザーを巻き込んだ認知拡大への取組みに今後も注目していきたい。

(平井万里子)