これが「呼吸らくちんマスク」だ! 防毒マスクにしか見えないが……。

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■パッと見「防毒マスク」な花粉対策マスク

「う〜む、選べない」

ドラッグストアや生活雑貨を扱うチェーンストアに並んでいる花粉用マスクを見るたびに、いつもそう思う。品数が多すぎ、パッと見ではどれも似たり寄ったり。目を凝らして商品を比較しなければ、違いなんてわからない。その億劫さに苛立ち、次第に思考停止に陥っていく。そして、ありがちな白いマスクに落ち着く。

今年もそうなるはずだった。

ドラッグストアでマスクを物色し、いつものように選択に迷っていたときのことだ。過日の打ち合わせで、編集者が何気なく呟いたフレーズ――「サンコーレアモノショップって知っている? 珍品を数多く扱っていて、ときにはハズレの品もあるけど、『意外と使える』ってアイテムも多い。宝探しをしている気分を味わえるよ」――が、まるでフラッシュバックのようにアタマに浮かび、どうしても脳裏から離れなくなってしまった。そこで帰宅そうそう、PCを立ち上げてサイトをチェックしてみたところ、ある商品に目が留まった。

いや、むしろ目が点になったというほうが正しい。

「呼吸らくちんマスク」。いちおう、花粉対策用マスクとして販売しているらしい。だが、どこから見ても、防毒マスクにしか見えない。まあ、花粉を「毒」と解釈できなくもないが。

サッと商品説明に目を移す。ファンが内蔵されており、絶えずマスク内に新鮮な空気が流れ込んで、呼吸の息苦しさを解消してくれるようだ。また、ファンには5層重ねの高性能フィルターが装着され、「花粉はもちろんのこと、PM2.5対策としても使えるPM0.3(0.3µm)の極小微粒子サイズの侵入を防ぎ、きれいな空気のみをマスクの中へ入れます」とも書いてある 。

たしかに、よくあるマスクは繊維の目を細かくしていることもあって、早歩きをしたりすると、途端に呼吸がツラくなったりする。呼吸が楽かどうかは、花粉症患者からすれば死活問題。ファンをマスクに取り付けることで、その問題を解消するというアイデアは面白い。

説明を読むかぎり、商品自体は魅力的である。あとは、見た目の斬新さ――防毒マスクに似たデザイン――に心が折れないか。装着する勇気を持ち合わせているか。ここが最大の難所と言えそうだ。

■電動ファンがもたらす清涼感に感激

翌日、「サンコーレアモノショップ」を運営するサンコーに問い合わせてみた。

「お客さまからは『自宅にいる間、ずっと着用しています。手放せません』といった声を頂戴しています。すでに在庫の7割以上が売れていますよ」と、広報部の漾覆┐)晋介氏。そんなにスゴイ商品なら試してみるしかない! と、さっそく商品を取り寄せてみることに。

2日後、商品が自宅に届く。箱の裏には中国語で説明が書かれていて、解読できた数少ない文字のなかに「98%」という文言を発見。きっと微粒子を98%カットする、ということなのだろう。

ただ、開封してみたところ、ネットで見たときに感じたほどのインパクトはなかった。それどころか、「これなら普段使いとしてイケるかも」とさえ思ってしまう。到着するまでにさんざん商品写真を眺めていたので、早くも見慣れてしまったのかもしれない。果たして周囲の人々はどう感じるだろう。そこで、「呼吸らくちんマスク」を装着して新宿駅周辺を歩いてみることにした。

とある平日。快晴。散歩日和である。

新宿駅西口前にある喫煙所付近で実際にマスクを装着してみる。製品自体の重量は88グラムと、一般的な繊維マスクに比べれば重さを感じるが、それも慣れが解消するレベルで負担を感じることはなかった。シリコンゴムが顔に密着し、隙間から外気が入ってくる気配もない。このままだと、ちょっと息苦しい。やはりファンを回さないとダメなのだろう。

風量調整は3段階。効果を確かめるため、徐々にファンの回転数を上げていく。まずは1段目。おぉ、浄化された外気がかすかに流れ込んできて、呼吸が楽になった。

続いて2段目。若干、ファンの回転音が上がったが、別にうるさくはないし、とくに違和感も覚えない。外気の流入量も増えて、階段をのぼったりしても息苦しくはない。

そして最大の3段目。外気がどんどんマスク内に供給されてくる。気のせいかもしれないが、マスク内に清浄な空気が充満しているような感覚だ。あぁ……これは清々しい。これまでに感じたことのないマスクの装着感だ。

音や震動は1段目と比べたら強くなっているのを感じるが、不快なものではない。デスクで仕事をしているときは1段目、外を歩くときは2段目、それでも息苦しさを感じたり、清涼感を味わったりしたいときには3段目、といった選択がハマるのではないだろうか。

それでは、周囲の反応はどうだろう。着用する姿が“マスク怪人”のためなのか、そもそもまったく気にならないのか、こちらが歩行者に目を配っても、誰も目を合わせてはくれず、スルーされることが多い。喫煙所周辺で人待ち風に立ち尽くし、“かまってちゃん”を演じたりもしてみたが、誰も意に介していない感じだった。イジられることはなくても、凝視くらいはと期待したが、ほぼ無反応。微かな孤独感に襲われた。まあ、こちらが想像するほど、周囲は他人のマスクなど気にしていない、ということなのかもしれない。

ちなみにこの「呼吸らくちんマスク」、バッテリーを内蔵しておりUSBケーブル経由で充電を行う。2時間で満充電になり、最大4〜5時間の連続運転が可能だ。価格は4980円(税込)。交換可能なフィルターはサイト上の説明によると「フィルターが汚れてきたり、空気が吸い込まれにくくなったなど感じたら、交換をおすすめします」なんて、わりとアバウト。こちらは680円(税込)だ。

 

■鼻の穴に挿入するマスクも

「呼吸らくちんマスク」はだいぶユニークなので、外で着用するには気が引ける、という人もいるだろう。そんな御仁におすすめなのが、バイオインターナショナルが開発・販売している「鼻マスク(ノーズマスク)」シリーズだ。

このマスクの特徴は、鼻の穴に直接、器具を挿入して花粉から身を守ることにある。2001年から開発がスタートし、2008年には現行モデルが完成。その後、改良を重ね、2017年1月に新モデル「ハナラック」を発表した。高性能フィルターが花粉だけではなく、PM2.5、黄砂、粉塵、飛沫ウィルスといった微粒子の侵入も防ぐという。同社のサイトでは「シリーズ累計販売数1000万個突破! 中国・台湾・ロシアでも大人気」と謳われている。

だが、鼻の形や穴の大きさは十人十色。フリーアナウンサーの高橋真麻のような“鼻フック型”もあれば、女優の蒼井優のような“団子型”もある。一体、どのようにしてハナラックの形状を標準化したのだろうか。バイオインターナショナルの東原松秀社長は開発当時をこう振り返る。

「まずは、鼻の穴の大きさと形の平均値を算出することから始めました。歯科技師が使用している型取りを利用して、協力者十数名の鼻の形を計測し、試作型を作成。その後、試着と微調整を数十回繰り返しながら、平均値を割り出して一定の基準を設けたのです。素材の柔らかさも同様の手順で導き出しました。使用感、柔軟性、機能性、コスト……これらのバランスをどう図るかに苦心しましたね」

その他にも、鼻の穴ほどの小さな空間に収まる器具に、さまざまな創意工夫が凝らされている。

「ハナラックは唯一、左右の器具をつなぐ細い帯だけ鼻の穴の外に露出してしまいます。ここをいかに目立たなくするか。また、高性能フィルターを搭載することで、どうしても通気性が劣ってしまうというデメリットが生じてしまうので、これをどう補助するか。そうしたネガティブ要素にも頭を悩ませましたね。左右をつなぐ帯のサイズや調色にこだわったり、通気性確保のために5つの穴を設けたりしたことも、この商品に快適さをもたらしています」

記者が「ハナラック」を装着して歩いてみたところ、挿入時は鼻の穴に違和感を覚えたものの、すぐに慣れてしまった。呼吸も苦しくはなく、普段と変わらずおこなえた。歩行者からの視線を感じることもなかったが、1メートル程度の近距離になると鼻の中に何かを挿入しているのがバレてしまうことが判明。相手が異物に気づいたときの「えっ?」という表情に、若干、気後れしてしまったのも事実である。

利用法としては、オフィスでデスクに向かっているときや外回りの移動中には装着し、会議や商談といった他人の目が集まる場面などでは外しておくのが無難だろう。ただ、取り外す際、鼻水など鼻のなかの汚れが付着していることがままあるので、保管ケースとティッシュを忘れないように注意したい。あと、小マメに水洗いして清潔に保つのも重要だと思われる。

毎年、各メーカーがしのぎを削り、新商品のマスクが世に送り出されている。だが、商品数があまりにも多く、他メーカーとの差別化を図るのはそう簡単ではない。そうしたなか、「呼吸らくちんマスク」や「ハナラック」のような、ユニークで斬新な商品は、消費者にまず“驚き”を与え、探究心や好奇心を刺激してくれる。ニッチを攻めるには、そうした思い切りのよさも必要なのかもしれない。

(谷口キンゾー=文)